BTA2023受賞商品発表!

ブラシを歯に当てると音楽が聴こえる!?子ども向け仕上げ磨き専用歯ブラシ「Possi(ポッシ)」

編集部:ポッシ誕生までの道のりは時間との闘いでもあったわけですね。

稲垣:そうですね。ソニーからはポッシはクラウドファンディング(CF)で支援を募るのに値する事業性がありそうだと、評価していただきました。そして、すぐさま2019年の7月に開催されるソニーの大規模なイベントでポッシを発表してほしいと打診されました。しかも発表会までに量産できる見通しを確実なものにしなければなりませんでした。試作品を作り上げることと、量産化することは同じモノづくりであってもまったく別ですから、そのハードルを3か月で越えるのは至難の業でした。これが第二の関門でしたね。

編集部:数々の試練を乗り越え、CFでは2か月間で目標額2000万円をみごと達成されました。

稲垣:2000万円という金額は京セラ、ライオン2社が事業化するにあたって最低限確保すべき売上目標として設定されました。ポッシ本体と替えのブラシ3本のセットで17,500円(税別)という破格とも言える歯ブラシです。私を含めた開発に携わったメンバーは絶対の自信がありましたが、本当に売れるのかという不安視する声もありました。結果として、約1300人の方に購入していただいたことでニーズを可視化することができたと思っています。

編集部:体験イベントなどは行いましたか。

稲垣:もちろん行いました。「子どもが嫌がる歯磨きを楽しい時間に変える」というコンセプトに共感はしていただけるんですが、本当に子どもがおとなしく歯磨きしてくれるのか、なかなか信じてもらえないことも多々ありました。それでも半信半疑だった保護者の方がポッシをお子さんの口に入れてみて、初めてその良さを実感してくださった瞬間はとてもうれしかったですね。体験イベントはたいへん有意義でしたし、私自身、歯磨きに手を焼かされていた子どもが、ポッシを使い始めてからは、おとなしく口を開けてくれるようになったことも、大きな自信につながっていたと思います。

 

育児に参加したくても参加できていない
パパたちにこそ手に取ってもらいたい

編集部:ご自宅での子どもたちとの歯磨きタイムがポッシに対しての批判的な声を跳ね返す、ゆるぎない自信を与えてくれたわけですね。

稲垣:歯磨きはお風呂に入るのと同じくらい濃密なコミュニケーションと言ってもいいのではないでしょうか。実を言うと、ポッシはお父さんに使ってもらうことを想定して開発しました。共働き率が増えている中、男性はごみ捨てだけやっていればいいというわけにもいきません。ポッシはお父さんが育児に参加しやすいアイテムだと思います。ポッシをきっかけにお父さんが育児や家事に参加する機運がより高まってくれればうれしいですね。