BTA2023受賞商品発表!

ブラシを歯に当てると音楽が聴こえる!?子ども向け仕上げ磨き専用歯ブラシ「Possi(ポッシ)」

稲垣:私は、圧電セラミック素子の他の用途での活用方法を模索する過程で、デジタル化・大出力化を実現した「振動アクチュエーター」を開発しました。これを骨伝導イヤホン向けの部品で他社に提供できないかと検討する一方で、何か面白い切り口がないかと考えていました。ある日、自宅で電動歯ブラシを使っていて、あまり使い心地がよくないことにふと、気づきました。ボディは重いし、振動で手がしびれるんですよね。そこで、ヘッドの部分に圧電素子を内蔵させて振動させればボディの部分の振動が抑えられるのではないかと思いつきました。ちょうどその頃に、SSAPに参加しないかと声を掛けられ、このポッシにつながるアイデアで勝負してみようと思いました。私自身3人の子どもを持つ父親で、子どもの仕上げ磨きにはかなり手を焼かされてきたので、父親として、エンジニアとして自分の持つ技術を毎日の育児に活かせればと意気込んでいましたね。

編集部:ポッシは電動歯ブラシではないものの、そもそもの発想は電動歯ブラシに対する不満がスタートだったんですね。先ほどから出てくる「SSAP」とはどういった活動なのでしょうか。

稲垣:SSAP とは「Sony Startup Acceleration Program」の略称で、スタートアップの創出と事業運営を支援するソニー株式会社(以下、ソニー)のプログラムのことです。京セラは部品事業がメインですから、ソニーのように一般ユーザー向けの商品を市場に多く送り出してきたわけではありません。これまでソニーが培ってきたノウハウを提供してもらいながら、ノウハウを学んでいく我々にとっては絶好の機会でした。

編集部:ポッシは京セラブランドの製品になるのでしょうか。

稲垣:はい。ポッシの製造、販売、最終的な責任は京セラが担います。製品化に向けて実際に作るのは京セラで、ソニーはあくまでもサポートする立場です。今回の商品は京セラとライオン株式会社(以下、ライオン)のコラボ商品という名目で、製造と販売を行うのが京セラという位置づけになります。ちなみに、SSAPには弊社以外にもさまざま企業が参加しており、ソニーからは「ポッシは最も良い事例の一つ」という評価をいただくことができました。革新的な商品を生み出してきたソニーにとっても、ポッシによる新しい音楽のある生活シーンの提案は画期的なものとして受け入れていただけたのだと思います。