BTA2023受賞商品発表!

産婦人科病院が不足する地域に朗報!「分娩監視装置iCTG」&周産期遠隔医療プラットフォーム「Melodyi」

妊婦さんについて言えば、出産時に陣痛促進剤を打った場合など、分娩監視装置を常時つけていなければならなくなったとき、従来型の装置ではトイレなどのたびにナースコールをして、外してもらわなければなりませんでした。一方、当社の「iCTG」はフルワイヤレスなので、つけたままでトイレに行くことができます。この点は妊婦・看護師の双方の皆さんに非常に楽になった……と言っていただいています。

価格面でも大きく進歩しており、従来の分娩監視装置をワイヤレス化する際の約半分程度の価格で導入可能です。

東日本大震災で痛感した「遠隔医療」の必要性

編集部: この製品を世に出すきっかけは、なんだったのでしょうか?

河野: やはり「東日本大震災」です。メロディ・インターナショナルの社長と私は当時、産婦人科用の電子カルテを作る会社の社長と社員でした。震災当時の現地では、分娩監視装置が使えなくなっていたり、分娩監視装置でデータを計測しても、現地に産婦人科の医師がいない……という状況を目の当たりにしました。その経験から、私たちで「iCTG」や「Melody i」のような装置・システムを作ろうと考えたのです。

編集部: まさに「遠隔医療」が切実に必要とされる場面をご覧になったのですね。

河野: その通りです。ちなみに開発にご協力いただいた東大の先生方の、「この製品の開発は最後のご奉公なので妥協したくない」という要望を受け、当社のセンサーは他社の同種製品の2倍以上の個数のセンサーを搭載しています。これにより、胎児の心拍データを途切れることなく計測することができるようになりました。

出産を巡る「国内」と「海外」、それぞれの悲劇をなくすために

編集部: 今後の展開について伺えますか?

河野: まず国内については、日本の法制度が改正されれば、当社の製品・サービスを大きく広める機会が訪れると考えています。たとえば、行政機関が母子手帳を渡す際、同時に「iCTG」を妊婦の方たちに貸し出し、「かかりつけ医」がそのデータをチェックしてくれる体制を構築することもできるでしょう。「母子手帳」はどんな妊婦の方も必ず受け取るので、すべての妊婦さんに「iCTG」が行き渡ることになり、そのときには製品の金額を1〜2万円にまで下げられるかもしれません。

これが実現すれば、妊婦の方が出産直前に救急車で運ばれ、どこにも受けいれてもらえずたらい回しになる……という悲劇を防ぐことができます。実は、出産前に産婦人科の「かかりつけ医」を持たず、定期的な検診を受けていない方は意外と多いのですが、そのような方が救急車で運ばれると、一般の産婦人科病院は患者が到着して初めて、自分たちの病院では対応できない高度治療が必要な出産であることがわかる可能性があるわけです。そのためやむなく、「万一の事態を考え、より高度な対応ができる『高次病院』に行ってください」と回答せざるを得なくなり、たらい回しが起きてしまうのです。しかし「iCTG」のデータがあれば、一般の産婦人科病院でも対応可能か判断でき、「大丈夫です。当院に来てください」と救急車に回答してもらえるようになります。私たちは「たらい回し」をゼロにしたいと、本気で考えています。