BTA2023受賞商品発表!

産婦人科病院が不足する地域に朗報!「分娩監視装置iCTG」&周産期遠隔医療プラットフォーム「Melodyi」

産婦人科の 「遠隔診療」を支えるテクノロジーとしての歩み

編集部: この装置は一般の方も購入できるのでしょうか?

河野: これらは医療用機器のため、医師や医療機関にのみ販売しています。実はこの装置は今から十数年以上前、現皇后の雅子様が愛子様を出産する際に使われています。当時、国内では医師法20条(医師は対面で診療しなければならない)の制限が厳しく、本来この装置は使用できなかったのですが、天皇家の方々は一般の法律が適用されないため、使うことが可能でした。

しかし、当時この装置を作っていたメーカーは、医師法20条の制限があるかぎり国内での販売は見込めないと判断し、製造をやめてしまいました。そこで当社が製造を引き継ぎ、海外での販売をスタートさせたのです。国内の風向きが変わったのは、2011年の東日本大震災からです。あの災害を受けて、日本の法制度は「遠隔診療」を認める方向に大きく変わり、「iCTG」も許認可を受けられるようになりました。

編集部: 御社の長年の努力が認められたわけですね。

河野: 装置についても、さまざまな改良を加えてきました。たとえば当初の装置は心拍音を離れた場所のデータ受信側でしか聞くことができず、センサー側では聞くことができませんでした。そうすると胎児の位置を探してセンサーを適切な場所に移動させるのが、とても難しくなります。だから当社ではセンサーにもスピーカーを取り付け、妊婦さんが心音を聞けるように改良しました。

妊婦さんの状態を知るために必要なデータを遠隔で測定できるメリットは、ほかにもあります。妊婦さんは赤ちゃんにも血液を送りこむため、恒常的に高血圧になってしまうのですが、病院などの慣れない環境で血圧などを測定すると、通常よりもさらに高血圧となり、使用できない異常なデータが取れてしまいます。そこでこの装置を使って、自宅などの慣れた環境で測定してもらえば、より正しいデータが取れるというメリットもあります。現在は日本産婦人科学会とも協力して、この装置の利用に関するルール作りを進めています。

病院側と妊婦側、双方に多大なメリットをもたらす「フルワイヤレス」

編集部: 利用されている方の感想はどのようなものがありますか?

河野: まず、医師の方たちには、従来型の分娩監視装置と本装置の基本的な操作方法・測定されるデータが同じなので、違和感なく使っていただいています。また、従来型の分娩監視装置は測定結果が「紙」でしかアウトプットされないのですが、本装置はスマホやタブレットがあれば、外出先や自宅などでもデータを見ることができます。このように医師が病院から離れた場所にいても、すぐに指示を出せるという点も、メリットとして感じていただいています。