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「手のひらに安心を」産婦人科・小児科オンラインから始まる「つながる医療」

橋本:他のサービスを比べて最も違う点は、「明確な実績がある」ことですね。

編集部:詳しく教えていただけますか?

橋本:サービスを展開するにあたって、横浜市、東京大学、弊社の産学官連携で検証を行いました。2年間に渡りランダムに選んだ約750名の方を対象に「遠隔健康医療相談サービス(産婦人科・小児科オンライン)を妊娠期から提供することで、産後うつ病の高リスクとなる人を減らせるか」という検証をしたんです。その結果、産後うつ病高リスク者が相対的に33.5%減少したという結果が出ました。弊社はデータには一切触れず、結果の評価は、第三者である東京大学が客観的に行いました。

実際の検証で産後鬱のリスクが軽減

編集部:しっかりとしたエビデンスがあるのですね!2年にも渡って、ここまでの検証をした背景には、何か特別な思いがあるのでしょうか?

橋本:医療テックやヘルスケアのサービスは、「効果があるかもしれない」というサービスや商品が多い気がするんです。しかし、人にとってもっとも重要と言える健康や命に関わる業界で、そういった証拠のないサービスを提供するのは、ユーザーに対して真摯じゃない、という思いがありました。「産婦人科・小児科オンライン」をそういったもので終わらせたくないという思いのもと、検証を行っていました。

「病院で待っているだけでは届かない不安や孤立」をなくしたい

編集部:そんな理念が背景にあったのですね。よろしければ、「産婦人科オンライン」と「小児科オンライン」を生み出すまでの経緯についても教えていただけますでしょうか?

橋本:もちろんです。10年ほど前になりますが、小児科医として勤務をしていた病院で、あるお子さんに出会ったんです。その子は、母親の虐待によって救急車で運ばれて来ました。慌てて連れてきた母親もまた、社会的な孤立を深めていました。以前から病院で施す医療の限界について考えることはあったのですが、この出来事を経て、「待っているだけでは届かない不安や孤立がある」ということを痛感されられました。

編集部:悲しい出来事ですね…。医療現場では、似たようなケースも多いのでしょうか?

橋本:多いですね。虐待相談の対応数を見ても、過去10年に比べその数が、約20万7000件と約3倍になっているというデータがあります。以前に比べて、報告されやすい環境が整ったという面もあるかとは思いますが、それでもとても大きな数字です。

編集部:そういった背景にはどんな問題があると思われますか?

橋本:児童虐待は、単に「親が悪い」で片付けられる問題ではありません。虐待に至るまでに、大きな不安や頼れる人がいなかった状態が続き、どうしようもなく子どもにあたってしまうということが多いのです。核家族化や孤独化、いまだ根強く残る男性優位の社会構造、貧困などたくさんの要因が複雑に絡まっていると思います。