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マットが午睡を見守りクラウドに蓄積。安全性、情報検索性をトータルで提供する「hugsafety(ハグセーフティ)」

本製品のポイント
  • 同社が提供するメインのサービスと連携することで、より一層の「効率化」が図られている
  • クラウド上に計測されたデータが蓄積され、「安全性」と「利便性」が高まっている
  • 従来の保育で大きな負担になっていた「事務作業」や「チェック作業」が省力化できる
日本国内で発売されているベビーテック製品は、海外に比べてそれほど出揃っていない状況ですが、ここ最近は次々と意欲的なアイテムが登場しています。今回ご紹介するのは、ソフトバンク株式会社の子会社である株式会社hugmoが開発した「hugsafety(ハグセーフティ)」。2018年10月にリリースされた本システムは、お昼寝する子供たちをマット状のセンサーで見守り、その状態を記録。さらに異変があれば、ただちに警告してくれるというものです。BabyTech編集部は株式会社hugmoの石井あかねさんに取材を行い、その概要や今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)
株式会社hugmo
社長室 新規戦略担当
石井あかね さん


石井さん(以下、敬称略)と「hugsafety」で利用するマット状のセンサー

子育てクラウド「hugmo」とは?

編集部:御社は「hugsafety」以外にも、さまざまなサービスを展開されていますね?

石井:当社のサービスをご利用いただいているのは、主として「保育園」や「幼稚園」になります。当社が展開している各種サービスは相互に連携しており、その全体を総称して「子育てクラウド『hugmo(ハグモー)』」と呼んでいます。そして、サービス全体の基盤になっているのは、「hugnote(ハグノート)」という「連絡帳サービス」です。従来、保護者と保育園を繋ぐのは紙ベースの「連絡帳」や「お便り」でしたが、このシステムはそれらを電子化したものになります。保育園児の情報が登録され、「保育士と保護者の相互連絡」や「保育園からのお知らせ」などを、すべてタブレットやスマホでやり取りできます。

編集部:それはとても便利ですね!

石井:日々の保育状況や給食の献立を写真付きでお知らせしたり、イベントなどのスケジュール管理もできます。保育状況を文章だけで伝えるのはとても大変なのですが、写真を添えることで非常に伝わりやすくなります。また、その日に食べた給食を写真付きで送り、子供たちが残したものをお伝えすることで、ご家庭で足りない栄養を補ったり、夕食の献立と被らないようにもできます。「保育園の給食がカレーで、家の夕飯もカレーだった!」ということが避けられるわけですね。他にも「既読チェック」機能が保育園の皆様に好評です。「各種のお知らせ」を保護者が読んだかどうか、保育園側で把握できるので、既読がつかなかった場合は再度お知らせしたり、直接お伝えすることができます。

編集部:共働きの家庭には、とてもありがたいですね。

石井: この「hugnote」を使いながら貯まっていく写真を、保育園側で管理・販売できるシステムが「hugphoto(ハグフォト)」です。これを利用することで、プリント写真を1枚単位で販売していただくことが可能です。さらに「hugphoto」ではプロカメラマンを派遣するサービスも行っており、そこで撮影された写真を販売することもできます。

編集部:他にはどんなサービスを提供されていますか?

石井: 「hugselection」は、主に「hugmo」のオリジナルアイテムの販売や、保育園・幼稚園内での物販に活用できるショッピングサイトです。現在販売しているオリジナルアイテムには、たとえば「hugnoteを印刷したブックレット」があります。これは主に「卒園時の記念品」として、ご利用いただいています。また、保育園・幼稚園内での物販としては「体操服の販売」などの事例があります。こちらは園内で金銭を保管する必要がなくなり、さらに保護者とのお釣りのやり取りの負担が軽減される点が喜ばれています。

編集部:たしかに現金を使って購入するのは、手間がかかりますね……。

石井: また、「huglocation」は、幼稚園バスの位置をスマートフォンで確認できるサービスです。このサービスはスマホに搭載されているGPSを利用しているため、特別な車載用GPS装置なしに、バスにスマホを持ち込むだけで簡単に導入できます。もともとはソフトバンクで開発された技術で、オフィスビル間をつなぐシャトルバスの位置を知るために使われていました。幼稚園バスは道路状況によっては遅延することもあるので、雨の中30分以上待っていた……という保護者もおられますし、1時間以上遅れたために問い合わせ電話が幼稚園に殺到した、というお話も伺っています。このシステムを導入すると、保護者のスマホでバスの位置が把握できるので、そういった問題が解決します。今後は「学童保育で使われているバス」にも展開していきたいと考えています。

 

IoTチャイルドケアサービス「hugsafety」とは?

編集部:それでは、「hugsafety」の概要について教えてください。

石井: IoTとの連携を重視したシステムで、主に保育園で利用されています。子供たちがお昼寝している間の状態をモニタリングし、データをクラウドで集計するサービスです。保育園では「午睡チェック」が義務付けられており、保育士さんが5分おきくらいにお昼寝をしている子供達の様子(呼吸と体動)を確認することになっているのですが、このサービスはそんな保育士さんを補助し、一緒に子供たちを見守るものになります。

編集部: 導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

石井: まず、「保育士さん」と「hugsafety」の二重チェックで見守りますから、お昼寝をしている子供たちの安全性が向上します。それから、これまで一般的な保育園の午睡チェックは「紙ベース」で行われていたのですが、このサービスを導入することにより、タブレット端末を使って帳票類を電子化することが可能です。なお、子供たちのデータは「hugsafety」と連携している「hugnote」に登録されているので、新たに設定する必要がありません。これは他の「hugmo」のサービスを利用するときも同様です。

編集部: 総合的なIoTサービスを提供する「hugmo」ならではの強みですね。

石井:タブレットを使うことで、書類に記入する手間を大幅に減らすことができます。たとえば15人くらい子供がいる大きな保育園であれば、確認済みのチェックを入れるのも手書きでは大変ですが、タブレットを使えば一括で入力が可能になります。またマット状のセンサーを子供たちが眠る布団の下に敷いてモニタリングするのですが、これは「呼吸の状態」と「体の動き」を継続的に記録しています。将来的にはデータを活用して「睡眠時間」の計測や、子供たちの「ストレス状況」のチェックに活用できるのではないかと思います。たとえば入園したばかりで、ストレスを感じている子供は「睡眠データ」の動きが他の子供と違いますから、そのような動きが見られた子供には特に注意を払い、事故を未然に防ぐ……という使い方もできるかもしれません。クラウド上に蓄積されたデータを分析することで、将来さらに新しいサービスが提供できるかもしれません。

編集部: 子供の呼吸に異変が見られた場合などは、どのようになるのでしょうか?

石井:「hugsafety」で異変が見られた場合は、保育園全体の「hugnote」に「どの教室の誰にどんな異変が起きたか」というアラートが表示されます。そして何らかのアクションを取るまではアラートは消えないので、たとえ担当の保育士さんが目を離したときに起きたことでも、他の保育士さんによるフォローが可能になります。

編集部: それは心強いですね。

 

連絡・事務作業を効率化し、本来の保育時間を確保できるように支援する

編集部:「hugsafety」では「安全性」だけでなく、「効率」の向上も期待できそうですね。

石井:「hugnote」には管理者用の画面もあり、そこで保育園全体の午睡データの確認・承認ができます。これらのデータはすべてクラウド上に保存されるので、子供たちが卒業するまで記録が残ります。紙ベースで保存すれば膨大な量となり、保育園内のスペースを取りますが、電子化されていれば省スペースかつ完全に整理整頓された状態で保存できます。自治体のチェックを受ける際にはデータを印刷することも可能ですし、検索機能が付いているので「何月何日の誰々さんのデータを出してください」という抜き打ち検査への対応も簡単です。

編集部: それは非常に便利ですね。

石井: ちなみに自治体によって定められた帳票類の記入方法が違うため、「hugsafety」では、それらに対応したカスタマイズも可能になっています。たとえば「子供たちの体の向き」を示す記号も、ある自治体では矢印だったり、他の自治体ではアルファベットだったりするので、保育園で自由に変えることができるようになっています。保育士の皆さんは大変お忙しいので、業務・システム上の効率化を進めていくことは、とても大切だと思います。

 

<取材を終えて>

石井さんによれば、導入した保育園の経営者の方から「このシステムは子供たちの安全を守るだけでなく、保育士さんのことも守ってくれるシステムだね」という感想をいただいたとのこと。きちんと対応をしたことを効率的にデータで残せる本システムは、保育士さんにとっても心強い存在のようです。また最近は保護者のIoTリテラシーが高く、「この保育園では『午睡チェック』にどんな機器を使っていますか?」と聞かれることがあり、「hugsafety」を導入していたおかげで納得していただけた……という保育園もあったとのこと。保育士不足が叫ばれる中、保育業務の効率化は避けて通れず、将来の少子化時代を見据えれば、「保育園が選ばれる」時代も必ずやってくるでしょう。そのような時代に先駆けた同社の取り組みは、非常に楽しみです。