BTA2023受賞商品発表!

考えて伝える力を伸ばす、絵本読み書かせアプリ「KIKASETE(きかせて)」

本サービスのポイント
  • KIKASETEはオリジナル絵本の読み聞かせを通して、子どもの考える力や伝える力を伸ばすアプリ
  • 独自のカリキュラムで子どもの幸せを願う親の「願い」と、親が子育ての中で抱える時間・体力・お金の3つの「不安」をサポートするためのアプリ
  • 今秋から更にバージョンアップ!有名絵画を見て発想力を伸ばすコンテンツが追加された

集中力、読解力、言語力、他者への共感力…。読書体験を通して子どもたちは、社会生活に必要な能力を身に付けていきます。何より物語を通して様々な世界に触れることは、子どもの人生経験をより豊かなものにすることでしょう。その読書の効果を最大限に引き出せるアプリが、今回ご紹介する「KIKASETE(きかせて)」です。

BabyTech® Award Japan 2021学びと遊び部門」で優秀賞を受賞したKIKASETEは、考えて伝える力を伸ばす絵本アプリ。オリジナル絵本を読みながら、関連する質問に答えていくことで、子どもの考える力や自分の気持ちを相手に伝える力を高めていくことができます。今回は、KIKASETEの生みの親である株式会社AvirityInformationの代表取締役・奧野友美さんに、その魅力や開発の経緯、今後の展開についてお話をうかがいました。

(お話を伺ったのは)

株式会社AvirityInformation
代表取締役
奧野友美(おくの・ゆみ)さん

オリジナル絵本と考え抜かれた「問い」で子どもの力を伸ばす

編集部:本日はお忙しいところ、ありがとうございます!まずは、絵本アプリKIKASETEの特徴について教えてください。

奥野:こちらこそ、よろしくお願いします。KIKASETEは「考えて伝える力を伸ばすアプリ」です。オリジナル絵本を読むなかで、内容に関連するクイズや特定のものについて掘り下げる質問、絵本について子どもたちがどう感じたのか、その理由について尋ねる問いが出てきてくる仕組みになっています。

編集部:本を読んで終わりではなく、本の内容をもとに知識を広げ、子ども自身の考える力をつける仕組みがたくさんあるのですね!

奥野:はい。流れとしまして、アプリを開くと絵本が出てくるので、その中から自分が気になるものを選びます。反転学習から着想を得て、予習復習をワンセットとしたカリキュラムとなっており、翌日も同じ絵本が出現するようになっています。読書の後には、絵本の内容に即したクイズや、問いかけなどの独自カリキュラムが展開されます。最後は、親子で、絵本の内容について話ができると、更によい読書体験になると考えています。

4つのステップで、子どもの「考えて伝える力」を伸ばす

編集部:いろいろな種類の質問があるのですね!

奥野:はい、例えば、絵本の文脈を問う「シンク問題」、絵本の内容に即して、子どもの考えを深堀する「スピーチ問題」、知識問題の「クイズ」があります。特に「スピーチ問題」については、どうしてそう思ったかを聞きつつも、子どもの意見を否定しないことを重要視しています。

編集部:そこにはどのような意図があるのでしょうか?

奥野:理由は2つありまして、一つは心で思ったことを言葉で伝える力を養うため、もう一つは子どもが「自分を知る」きっかけになればと考えています。例えば、映画を観た時に「映画面白かった?」という質問なら簡単に答えられますが、「どうしてそう思ったの?」という問いに答えるのは少し難しいですよね?

編集部:たしかに、大人でも「なぜだろう…?」と考えてしまいますね。

奥野:子ども自身で「なんで自分はそう思ったのか?」と考えることは、自分の考え方や性格を知る練習にもなるのです。「自分はこういうところに面白さを感じるんだな」という気付きが、自分を知ること、ひいては自己肯定感につながるのではないでしょうか?

編集部:とても興味深いですね!

答えのない問題に対して、自分なりの考えを出す力を養う
https://kikasete.mariaproject.com/message/

奥野:自己肯定感というと、「自分は大丈夫。出来る!頑張れる!」というふうに考えることと捉えられがちですが、実際は「自分がこの地球で生きている事はとても尊い事で、自分の存在は地球の未来、可能性の一助となっている。と自分の可能性や価値を理解する心」なのだと私たちは考えています。それは突き詰めれば、自分にしかない考えや感性持っていることなのではないでしょうか?アプリではそのような考えをもとに、子どもたちが小さいうちから自分自身の考えや、自分の心が感じていること気づく設計をしています。

編集部:深い…!とてもよく考えてアプリが作られていることが分かります。それでは「クイズ」ついても教えてください。

奥野:「クイズ」では、子どもたちが本から知識や興味を広げるための問いかけになっています。例えば、『桃太郎』の絵本で桃が出てきますが、「日本で一番桃がとれる都道府県はどこ?」といった感じの質問となります。

編集部:ある単語を元に、知識の紐づけができる仕組みになっているのですね!ここからは絵本についても教えてください。完全にオリジナルの絵本というのもKIKASETEの特徴の一つかと思います。どんなお話があるのでしょうか?

奥野:様々な分野のものが網羅されています。例えば、思いやりの大切さに関する本、SGDsについて学べるもの、食べ物にまつわる絵本などですね。全部で250冊ほどになり、内容は児童書を専門で勉強し絵本大賞の審査員まで務めた経験のある社員が監修しながら作っています。

安心安全なコンテンツを提供

編集部:絵本の内容や読み聞かせに関して、大切にしているポイントはありますか?

奥野:楽しさや読みやすさといったものもありますが、一番大切にしたのは「多様性」です。人の数だけ、価値観や考え方、正義があるのだということを絵本を通じて知ってほしいと考えています。また、いろんな考え方やものの見方について知っているということは、他者理解や自分の中での選択肢の幅が増えることだと考えています。読み聞かせに関しては、最近、音声を合成音声からナレーターさんのものに一新しました。

編集部:それは大きな変更ですね。

奥野:これがかなり好評でして、うちの子は毎日家でKIKASETEをやっているのですが、プロのナレーターさんになってから、本に対する興味がさらに増したように思います。私も聴いていて癒やされると言いますか、本当に心に沁みる良いナレーションなんですよ。

編集部:いいですね!音声を変更することになった経緯についてもうかがえますか?

奥野:音声については、前々から合成音声にするかナレーター音声にするか社内でも悩んでいたんです。しかし、2021年のベビーテックアワードに参加した際、審査員の方から「没入感を増すためにナレーションにしてみては?」と言われて決心がつきました。全てを変更するということで、大変な作業でしたが、よりアプリのクオリティが高くなったと自負しております。
利用者の方からは、「子どもの寝かしつけに使っている」というお声もいただいていますね。

編集部:ベビーテックアワードがきっかけになったとのこと嬉しいです。KIKASETEでは、アプリ内にアシスタントとなるキャラクターがいるそうですが、そちらについても教えていただけますか?

奥野:はい、今後増える予定ですが、現在はララちゃんとテルくんという、2人のキャラクターがいます。アプリ制作の際には、様々な論文を読み込んだのですが、その際、子どもの学習効果が高まる方法の一つとして「自分が誰かに教える立場にいること」というものがあり、キャラクターをつくることにしたんです。デザインは、愛着が湧いて、友達のような感覚で見られるものにしました。

編集部:本当に、たくさんの工夫が盛り込まれたアプリなのですね!ありがとうございます。

多くの研究結果や学習メソッドを元にアプリを制作

編集部:ここからは、KIKASETEの制作についてお話をうかがえたらと思います。アプリを作ろうと思ったのは、どんなきっかけからだったのでしょうか?

奥野:私自身、子どもに読み聞かせをするのがとても苦手だったんです。でも、本を通して子どもとコミュニケーションをしたいという思いはありまして。似た悩みをもった親御さんも多いのではないかと思い、読み聞かせをしてくれるサービスを作れないかと考えたのがきっかけですね。

編集部:読み聞かせって、演技力が問われると言いますか、声での読み分けや表現力が大事になりますし、自分の声が苦手という人は結構多い気がします。開発にあたり、様々な研究データや教育法をベースにしているとうかがいましたが、そちらについても詳しくお伺いできますか?

奥野:開発にあたって、最初に、国内外の読み聞かせ手法や児童心理学、教育の分野での論文の調査や、様々な教育機関のカリキュラム設計理念の調査を行いました。また、専門家会議や教育現場の調査を行う中で、国際バカロレア(※1)やダイアロジック・リーディング(※2)の理論はとても参考になりました。例えば、国際バカロレアのプログラムを採用している学校を見た時の衝撃は凄かったです。授業で「3はこの宇宙でどんな存在ですか?」という質問に対して、「おやつを食べる時間の3です!」等、たくさんの子ども達が、自分が考える3という数字についての認識を答えていたり、掛け算の九九も、数字の原理原則を理解して身につけていったり、固定概念にとらわれない自由な発想や本質を大切にする授業がとても印象的でした。

(※1)国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)とは、ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する“国際的な教育プログラム”を指し、「子どもたちが世界の複雑さを理解し、それに対処できる」などを目的とし、国際的に通用する大学入学資格を得ることが出来る。
(※2)ハーバード大学など、アメリカの大学で長年研究されてきたリーディングの手法。子どもの思考力を伸ばすだけではなく、物語を分析する力や、自分の考えを発信する力を伸ばすことを大切にしている。

Cap:確かなデータに基づいたコンテンツ
https://kikasete.mariaproject.com/message/

編集部:日本の学校とは全然違うのですね。

奥野:他にも、一つのものをしっかり見つめる考え方も興味深かったです。例えば、桃を題材にする場合、「どんな漢字を書くのか?」「何グラムなのか?」「桃の産地は?」「どうやって出来るのか?花はあるのか?」といった感じで、科目横断的に物事を深く見ていくんですよ。

編集部:これが先程の質問内容に反映されているわけですね。

奥野:ダイアロジック・リーディングについては、いろんなリーディングの方法を調べていくうちに出会いました。問いかけのタイミング、親子でのやり取りの設計方針では大変参考になりました。

編集部:アプリにかける思いが伝わります。開発にはどれくらいかかったのですか?

奥野:一年半くらいの時間を掛けていますね。開発中は、利用者の方の反応をうかがいながら試行錯誤を繰り返していく日々でした。はじめは、いわゆる「スマホ育児」でネガティブな印象やプロトタイプということもあり、厳しいご指摘をいただきました。でも、親が子育てにおいて抱えている、時間、お金、体力という3つの課題に向き合って、親の子育てにおける「不安」を少しでも軽減したい。という思いで改良を重ねてきました。

そして、一つ一つ改良していき「良かったよ」とうお声をたくさんいただけるようになりました。子どもの幸せを願わない親はいないはずです。その「願い」に向けた「行動」を一緒に伴走できるような、サポートできるサービスを作って、親も子どもも、まるっと幸せになれる、笑顔の時間が増えるサービスを作りたいです。

編集部:いろいろ苦労があったのですね。現在のアプリがローンチされてからは、どんなお声が届いているのでしょうか?

奥野:「子どもの成長に感動した!」という声がとても多いです。日頃のコミュニケーションではなかなか聞くことができない、子ども自身の考えを聞いて、「うちの子はこんなことを考えていたんですね」「子どもに対する見え方が変わりました」といった話を伺います。

親子の時間を楽しめた、成長を感じたという声がたくさん

編集部:親が子どもの成長に驚き、子どもを褒めることで、更に良い循環が生まれそうですね!

アート分野も追加し、更に充実した内容に!

編集部:最後に、KIKASETEの今後のビジョンについて教えてください。

奥野:はい、今後は今までどおり利用者のお声をアプリの内容に反映していくと同時に、音楽とか絵画といった芸術分野でも子どもが自身の発想をアウトプットしていけるコンテンツを組み込んでいきたいですね!(※2022年10月現在、既に「絵画カリキュラム」としてアップデートされています)

2022年秋に追加されたコンテンツ

編集部:それは面白そうな内容ですね!

奥野:ただ絵画を見せるのでではなく、その作者や時代背景といった知識なども一緒に提供してもらうことで、絵を深く理解してもらえたらと考えています。

編集部:今後のアップデートも見逃せませんね!本日はありがとうございました。

取材を終えて

KIKASETEの取材を終えて感じたのは、ベビーテックの可能性です。奥野代表のお話にもあったように「スマホ育児」といったネガティブな印象を持たれることもあるベビーテックですが、開発者の「この課題を解決したい」という確かな思いと、利用者との密なコミュニケーションによる内容のアップデートがあれば、子育てや親子の時間をより豊かで楽しいものにしてくれるものなのではないかと感じました。

「KIKASETE(きかせて)」 公式ホームページ
https://kikasete.mariaproject.com/

取材・執筆:立岡美佐子(たておか・みさこ)

IT企業から、編集・出版業界に転職。現在は、フリーランスの編集者兼ライターとして旅やグルメ、ソーシャル系など幅広い分野で編集や執筆活動を行っております。
大事にしているのは「価値のある情報を、読者に面白く、わかりやすく伝えること」。
これまで『TRANSIT』『FRaU』『メトロミニッツ』など多数の雑誌制作に携わってきました。
ベビーテックは、「子どもの頃にこんなサービスや商品があれば!」と思うものとの出会いばかりで、毎回刺激をもらっています。趣味は、旅行と料理と合気道。