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「保育園」が自ら開発した「現場のニーズ」に応える保育支援システム「CCS+Pro」

本サービスのポイント
  • 「保育園」運営企業が開発した「現場が本当に欲しい機能」がある保育支援システム
  • 「保育ロボットVEVO(ビーボ)」が子どもや保護者、保育士のコミュニケーションを活性化
  • 「VEVOのセンサー」により、子どもの「午睡」や「検知温」を見守る機能もシステムに統合

最近は保育園のIT化が進み、さまざまなメーカーが「園児の登降園」「保育士の勤怠」などを管理する「保育支援システム」を提供しています。今回ご紹介する「CCS+Pro(Child Care System+Proの略)」もその一つ。このシステムは「保育園」を運営する企業が開発し、さらに「保育ロボット」や「午睡見守りセンサー」とも連携するなど、ますます機能が向上しています。今回、BabyTech.jp編集部はそんな「CCS+Pro」を開発・運営する株式会社social solutionsの研究開発部 田中直樹さん(以下、敬称略)に取材を行い、システムの概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)
株式会社social solutions 研究開発部 担当マネージャー
田中 直樹 さん

 

たった一園の保育園から始まった「システム開発」

編集部:さっそくですが、「CCS+Pro」という保育支援システムが開発された経緯について伺わせてください。

田中:もともと弊社は「グローバルブリッヂ」という社名で、2007年に「あい・あい保育園 幕張園」という1園の無認可保育園からスタートしました。そこから多くの保育園を運営していくなかで、保育園の業務を効率化する必要性に迫られたのです。そのために、自前で「保育支援システム」を作り始めました。それがあるとき、NTT東日本様に注目していただいたことで、2014年からシステムの外販をスタートしました。

編集部:NTT東日本とコラボとは、すごいですね。

田中:NTT東日本様のロゴを使わせていただいたことで、大きく信用度が高まりました(笑)。普通はなかなか使わせていただけないそうなのですが、弊社の「保育事業を通じて日本の人口問題を解決する」というミッションに共感していただけたようです。NTT東日本様側では、保育支援システムの料金徴収や利用者に対応するサポートセンターの運営をしていただいています。このサポートセンターは土日祝日を含めて朝9時から夜9時まで対応しています。

編集部:保育支援システムの使い方がわからないときは、しっかり電話サポートが受けられるのですね。

田中: 弊社としてもこのような体制が整わなければ、なかなかシステムの外販は難しかったでしょう。NTT東日本様は、インターネットを新たに導入する法人が少なくなってきているなかで、まだまだ保育園はネットの導入が進んでいないのではないか……という考えから、保育業界への参入を考えられたようです。もともと弊社は保育園の開設支援もやっており(編集部注:現在は行っていない)、全国で200園くらいの開業を支援させていただいた実績があります。そのなかで株式会社ソーシャルソリューションズは、よりICT事業に特化した企業として2015年に誕生しました。

 

多彩な機能を統合する「CCS+Pro」という保育支援システム

編集部:それでは「CCS+Pro」の内容について伺えますか?

田中: 当初に開発された保育支援システムは「CCS」と言います。これまでに開発した追加機能を統合して2017年にリリースしたのが、現在販売している「CCS+Pro」になります。さらに、この「CCS+Pro」に加えて「保育支援ロボVEVO」や2019年10月1日発売の「VEVOのセンサー」という午睡チェック支援システムもあります。

編集部:それらがすべて「CCS+Pro」と連携しているのですか?

田中:その通りです。それぞれの機能ですが、まず「CCS+Pro」で一番力を入れているのが「ワークスケジューリング機能」です。これは園児の登園予定から、自治体ごとの基準を満たす「必要配置保育者数」を自動計算するものです。保育園側では、このシステムで計算された数値に沿って保育士のシフトを作成すればよく、いわばシフト作成支援機能と言えます。この技術について弊社は特許を取得しています。このほか、園児の登園・降園管理、延長保育料金の計算、保育園スタッフの出退勤管理も行えます。また保育園から自治体に提出する書類の作成支援機能もあります。

編集部:保育園を運営する上で必要な機能が、ひととおり揃っているわけですね。

田中:また、「CCS+Pro」には「MEMORU(メモル)」という写真・動画の共有ツールもあります。保育園で過ごす園児の様子を知りたいという保護者のニーズは大きいのですが、それは保育士の負担になっていました。これをより簡単に、保護者が園児の様子を知ることができるサービスとして提供しています。

写真・動画の販売ツール「MEMORU(メモル)」

「VEVOのセンサー」による午睡チェックも「CCS+Pro」の機能の一つです。保育園における死亡事故の中で一番多い「午睡中の事故」です。その多くはうつぶせ寝で起こるので、子どもたちのうつぶせ寝をいち早く検知して保育士に伝え、保育士とITのダブルチェックを支援する機能です。弊社の直営保育園ではすでに導入され、十分なテストをした上での今回の販売開始になります。

「れんらくノート」というアプリは保護者の方のさまざまな保育園への連絡、たとえば「お迎えが30分遅くなります」といった連絡は「電話」で行われていると思うのですが、その役目を代わるものです。「れんらくノート」に入力すると、保育園に連絡が行き、それを保育士さんが確認すると「CCS+Pro」に反映され、お迎え時間が調整できるようになっています。もちろん、通常の保育園と保護者の「連絡帳」としての役割も果たします。これまでは主に紙の連絡帳が使われていたと思うのですが、それでは半年か1年で使い切ってしまい、過去の様子が見直せません。さらに過去の連絡帳は保護者の手元に置かれ、保育士が過去の連絡帳を確認することもできません。「連絡ノート」は、そんな紙の連絡帳の弱点を補うためのサービスでもあります。

編集部:「CCS+Pro」の特徴はなんでしょうか?

田中: 「CCS+Pro」に弊社のさまざまなサービスが統合されているのが特徴だと思います。これによりすべてのサービスの操作感が統一され、利用する側に違和感なく使っていただけます。また、機能の多さも特長です。弊社は直営保育園があるため、非常に保育の現場の声が届きやすい環境です。そこからの要望をどんどん取り入れた結果、現在のように多機能になりました。

編集部:たしかに「登降園システム」はA社製、「スタッフの勤怠システム」はB社製、「保護者との連絡システム」はC社製では混乱してしまいそうですね。特に珍しい機能はありますか?

田中:あまり他社のシステムにはない珍しい機能としては、「キャビネット機能」があります。これはいわゆる「ファイル共有サーバー」で、保育園側・本部側の双方で作成したファイルを保存すると、どちらでも利用できるようになるサービスです。例えば弊社の直営保育園は全国に56園(2019年12月1日現在)ありますが、このように園の数が増えてくると各保育園だけでは事務業務を完結させることは難しく、本部からの支援が欠かせません。そのコミュニケーションを円滑にするために、「キャビネット機能」は必要不可欠な機能です。それからセキュリティ面の特長として、ID管理で利用者がデータを閲覧・操作できる範囲を制限することができます。園長先生はこの範囲まで、主任さんはこの範囲まで、保育士はここまで、パートさんはここまで、というようなイメージです。大きな組織でもセキュリティをしっかり守りつつ、業務分担ができるようになっています。

多彩な機能を持つ「CCS+Pro」

「CCS+Pro」の機能一覧

 

子どもの夢を育み、保護者の貴重な情報源の「保育ロボットVEVO」

編集部:御社の「保育ロボットVEVO」は非常にユニークな取り組みですね。

田中:VEVOにはセンサーがついており、正面に立つと子どもたちを認識します。そして登降園を管理するICチップが入ったキーホルダーをVEVOの胸にあてると、その子どもに合わせたセリフを喋ります。「おはよう」「ばいばい」といった挨拶の他、「〇〇くん誕生日おめでとう、ハッピーバースデー」とか「〇〇くん、XXcm背が伸びたね。VEVOより高いね」といった内容です。

保育ロボットVEVOと田中さん

編集部:VEVOを導入した結果はいかがですか?

田中:2019年4月〜5月の調査では、VEVOを導入している保育園は導入していない保育園よりも、保育士と保護者の会話が有意に増えるという結果が出ました。通常、保育士と保護者は5秒も会話していないことも珍しくありません。これはVEVOの一言により、保護者と保育士の間で話題が生まれたり、VEVOが話した内容以外の情報を保育士が話すためだと考えています。通常、保護者は連絡帳でしか子どもの様子を知ることができません。保育士との会話が増えれば、より詳しく子どもたちのことを知ることができるでしょう。ちなみにVEVOのセリフで特に喜ばれているのが「お昼の献立」です。お迎えにきた時に「今日は○○を食べたよ」とVEVOが言うと、それじゃ今日の晩御飯は違うものにしようか、となるようです。


VEVOとコミュニケーションを取るためのキーホルダー

 

子どもたちの体調の変化を予測する「VEVOのセンサー」

編集部:午睡チェック機能を持つ「VEVOのセンサー」は、センサーを子どもに取り付けるタイプですね。子どもたちをそこに寝かせるシート型ではなく、センサー型にされた狙いはどこにあるのでしょう?

田中:弊社の狙いとしては、センサー型にすることによって午睡中の子どもたちの「皮膚温度」を測定し、その検知温の変動を数値化し分析していくことによって、体調に注意した方が良い園児を相対的に把握したり、子どもへの注意喚起などにも生かしていければと考えています。また、このセンサーで記録した「午睡時間」をVEVOが保護者に報告してくれる機能もあります。保護者は言葉が話せない子どもの体調管理について、「食事」と「睡眠」から推測するしかありません。ですから、VEVOが伝えるお昼寝時間も貴重な情報源になるわけです。

VEVOセンサーの外観

VEVOセンサーの取り付けイメージ

 

VEVOがきっかけで「ロボット技術者」が誕生する可能性も!?

編集部:御社のサービスを使われている方からは、どのような感想がありますか?

田中:まず、「CCS+Pro」は「ワークスケジュール機能」が喜ばれていますね。今まで自分でエクセルを使って「必要保育者数」を計算していた……というような声もあり、これが自動化されたのはとても嬉しいという声をたくさん頂いています。また、最近の「企業主導型保育園」など、保育業界を未経験の方が保育園事業に参入されるケースでは、保育園を運営する上でやるべきことが「CCS+Pro」を見るとよく分かるので助かる、という声もあります。VEVOに関しては、「子どもが喜んで保育園に行くようになった」という感想のほか、「将来はVEVOの友達を作りたい」と言ったお子さんの話も聞きました。身近にロボットがいる環境は、昔はアニメくらいしかなかったわけですが、実際のロボットが身近にいて、その子たちが小学校に行ってプログラミングの授業を受けるようになるわけですから、将来に良い影響があるのではないか……と思っています。さらに「自治体ごとに異なる書式への対応」など、また新たな機能が欲しいという声もいただいていますので、さらに改良していきたいと考えています。

顧客の声を語る田中さん

 

<取材を終えて>

保育園を運営する企業が開発したシステムならではの使い勝手の良さと、保護者の安心と子どもたちの夢を育む取り組みにとても感銘を受けました。特に保育ロボットVEVOと午睡チェックセンサーの連携は、さまざまな可能性を秘めているのではないでしょうか? まさにベビーテックの最前線とも言える同社の動向から、今後も目が離せません。

株式会社social solutions 公式ホームページ
https://socialsolutions.jp/