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赤ちゃんの水分量を監視し脱水症状を警告。スマートおしゃぶり「YourPacifier(ユア パシファイア)」

編集部: 「ユア パシファイア」全体の構成について教えてください。

山蔦:「ユア パシファイア」は「おしゃぶり(センサー)」と「保護者が使うスマホにインストールするアプリ」、「地域の病院や国・自治体の医療部門に設置されるダッシュボード」の3つから構成されています。このうち「ダッシュボード」は、その地域で「ユア パシファイア」を使うユーザーのスマホから位置情報などを収集してデータベース化し、可視化することができます。どのエリアの赤ちゃんに、どのような傾向が見られるか……つまり、ある地域における「嘔吐・下痢を引き起こす病気が流行っている場所・状況」が把握できるわけです。これを利用すればウイルス性感染症の流行を探知し、予防の啓発を行うことも可能になるでしょう。

編集部: 「スマホアプリ」はどのようなものですか?

山蔦: まず、スマホアプリでは「おしゃぶり(センサー)」で測定した水分量の結果が表示されます。これは体温計で測られる「体温」のようなものです。次に、その測定された水分量に応じて「問診モード」に入ります。これは小児科学会などが公表している「赤ちゃんの脱水症状のレベルを判断する設問」がベースになっており、「泣き声はどうか」、「身体の動きはどうか」などの質問に答えてもらう形式になっています。これらの結果により「今すぐ病院に連れて行くべきか」、「様子を見るべきか」をアプリが判定する仕組みになっています。

 

保護者の要望を受け、さらに発展したデバイスへ

編集部:現在の開発状況と今後の展開について教えてください。

山蔦: チームRota++の他のメンバーは学業が忙しくなったり、就職または医師として働き始めたので、現在は私とデザイナーの2名体制で開発しています。また、保護者の方にアンケートを取ってみると、おしゃぶりを水分センサーとして使う現行のシステムには、「くわえさせた時しか、水分量を測定できない」「赤ちゃんが嫌がって、おしゃぶりを吐き出してしまう」「おしゃぶりを使うと、歯の形が悪くなるのが心配」などの声が出てきました。さらに赤ちゃんは下痢や嘔吐だけでなく、「夏の暑さ」で脱水症状になることがニュースで取り上げられたことから、より継続的に水分量を測定できるシステムへの改良を進めています。こちらのセンサーの形状としては、リストバンド型などを検討しているところです。

 

<取材を終えて>

山蔦さんによれば、現在の技術に特許化の目処がついた段階で投資を募り、普及させていきたいとのこと。また、最初に途上国にポイントを絞ってしまうと資金面で行き詰まってしまうため、まずは欧米先進国での普及を目指したいということでした。ちなみに国内展開については、「日本では『親の愛情が一番!』という価値観が強く、ベビーテックへの抵抗感がありますから……」ということでした。しかし、国内でも若い世代を中心に、確実にベビーテックへの期待感が高まっていることを感じます。ぜひ、国内での商品化も期待したいと思いました。