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保育士がもっと働きやすい社会を。園児一人ひとりにあわせた保育をITの力でサポートする「ChiReaff Space®」

本サービスのポイント
  • 子どもと接する以外にも、保護者への報告や成長記録の作成など、保育士の方が抱える負担は大きい
  • ChiReaff Space®(チャイリーフスペース)は、日々の業務に追われる保育士の方をサポートするために生まれたサービス
  • 書類作成のサポート以外に、保育士になりたての方に嬉しい、4万人の子どものデータを元に、園児一人ひとりの個性・特徴を把握することをアシストする、園児カルテ・発達管理機能もついている

働く保護者のために、子どもと一緒に時間を過ごす保育士。子どもの成長に携われるやりがいがある職業ですが、一方でその激務が問題視されています。朝は子どもたちより早く来園して準備をはじめ、日中は子どもたちと一緒に過ごす、子どもたちを見送った後は、多くの書類作成業務が待っており、激務で辞職してしまう人や、家に仕事を持ち帰って無給で働く人も多くいます。

今回ご紹介する「ChiReaff Space®(チャイリーフスペース)」は、そんな多忙な保育士をサポートするサービス。「BabyTech® Award Japan 2021保育ICT」で見事、優秀賞を受賞したChiReaff Space®の魅力について、開発を行っているBIPROGY株式会社のサービスイノベーション事業部の河本あかりさんと、プロダクトサービス第二本部の関根奈央子さん(以下、敬称略)に取材を行い、ChiReaff Space®のコンセプトや開発の経緯、今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)

BIPROGY株式会社
サービスイノベーション事業部ビジネス四部第一営業所第3グループ
河本あかり(かわもと・あかり)様

BIPROGY株式会社
プロダクトサービス第二本部クリエイティブデザイン一部二室
関根奈央子(せきね・なおこ)様

業務サポートに加え、4万人の子どものデータから教育方針作成をサポート

編集部:本日は、よろしくお願い致します。さっそくですが「ChiReaff Space®」のコンセプトについて教えていただけますか?

河本:保育士の業務負担の軽減と、保育の質の向上の支援を目指した業務支援システムです。ChiReaff Space®という名前は、「Child Rearing with affection(愛情を持って子育てをする、という意味)」という言葉の各単語の頭文字を取ったものになります。愛情をもって子育てを行う「場所」、子どもがのびのびと成長する「場所」をサポートするサービスです。

ChiReaff Spaceのコンセプト

編集部:ありがとうございます。ChiReaff Space®の特徴についても教えていただけますか?

河本:三つの大きな特徴があります。一点目は、保育士さんの一日の業務をサポートする様々な機能ですね。代表的なものだと、登降園・出欠管理や、保護者連絡、指導計画書作成などといった機能になります。

二つ目は、子どもの成長がひと目で分かる発達チェック・園児カルテという機能。保育園では、子どもの成長に応じた、指導計画の作成という業務があるのですが、ChiReaff Space®のサービスでは、全国40,000人の成長データに基づいて、預かっている子どもたちの発達が視覚的に分かり、今後の計画等が作りやすい仕組みになっています。

最後は、上記の機能によって、保育園の業務が効率化されることによって、保育士が子どもに向き合う時間が増えるため、園として提供できる保育の質が向上し、保護者の方やお子さんにとって、より安全で安心な保育を提供できる点になります。

ChiReaff Space®の主要機能

編集部:煩雑な書類作成などの業務が簡略化できるのは、保育士の方にとっても魅力的ですね。

河本:そうですね。朝から晩まで大変な保育士さんのお仕事。書類作成などITでカバーできるところはカバーし、子どもとの時間など、割くべきところに時間を割けるようになればと考えています。また、IT化することで、データの一元管理ができるようになりますので、業務ミス自体も減らすことができると考えています。

簡略化できるところは簡略化し、子どもとの時間に力を入れることができる

編集部:なるほど、そういったメリットもあるのですね。二番目の、成長記録の部分については、類似サービスと比べても特徴的だと思うのですが、どういった経緯で、データを比較できるようにしたのでしょうか?

河本:新しく保育士になった方が直面する課題の一つが、保育の現場で経験がものをいうことが多いというもの。ベテラン保育士は、これまでの経験則から、指導計画を作成したり、保護者様とお話したりということができますが、新人の保育士さんの中には難しいと感じられる人も少なくないとうかがいました。
そこで、全国4万人の子どものデータを比較ができることで、その子の特性や、得意分野などを客観的に把握でき、より自信をもって保育をすることができるのではないかと考えました。

ひと目でその子の成長の様子が分かる園児カルテ

編集部:グラフでビジュアル的に見られるところも便利ですね。

河本:ひと目でその子の興味や発達がわかるため、一人一人の子どもに合った保育ができますし、他の先生への共有・引き継ぎなどもスムーズにできるといったお声をいただいています。

関根:実際に入力いただく際も、わかりやすさを心がけています。成長の段階について、文字だけで選ぶのではなく、葉っぱのアイコンの色づき具合で、色づいていない、半分色づいている、全部色づいてるの3段階をイメージで選べるようになっているんです。そうすることで選びやすくなり、入力時間の短縮を実現しています。

葉っぱの色づき具合で子どもの成長を確認

編集部:保育士さんのためを思って作られたシステムなのですね。他にもこだわりのポイントがあれば教えてください。

河本:保育士さんが書類作成をされる際にPDCAサイクル(※)を効率的に回しやすい仕組みにしています。
計画立案時に、先月自身が記載した振り返りや配慮の内容、その日の反省をする際にどのような計画を立てていたかなどを確認されると思いますが、紙ベースでの確認となると負荷がかかると聞きます。ChiReaffでは、該当の記録をボタン一つで参照・引用できますので、書類の質を落とさずに、負荷を軽減することができています。
(※)Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の頭文字をとったサイクル。計画に対し、実績と比較し、今後の行動方針を立てるため、課題を把握し解決することができる
   
編集部:そこが仕組み化されているところは、便利ですね。

関根:あと、システムのなかで、年間、月間、週日指導計画などを作成するのですが、そのうちの全体的な計画は、敢えてフォーマットを用意せず、自由なフォーマットやファイル形式で保存できる仕組みになっているんです。

編集部:それはどうしてですか?

関根:年間、月間、週日指導計画書は具体的な繋がりが大切なので、先ほど河本の話にもあったとおり、ChiReaffの計画書フォーマットには繋がる仕組みが備わっています。ですが、全体的な計画はそれらの基となる計画の大枠を作成するものなので、
仕組みを持ったフォーマットを用意するよりも、園の自由なスタイルで作ってもらった方が作りやすいですし、いいアイデアも浮かびやすいのではないかと考えました。一方で、記録としては残しておきたいため、どんなフォーマットでも取り込みができるようにしたんです。

編集部:ただIT化で業務を効率化するのではなく、子どもや保育士の方の成長をサポートする仕組み化ができているところがChiReaff Space®の魅力なのですね!

システムの完璧さより「状況に応じた使い勝手」に重きを置く

編集部:ここからは、ChiReaff Space®の開発の経緯についてお話をうかがっていけたらと思います。どういった経緯で、開発に至ったのでしょうか?

河本:サービス自体は、6、7年前からあるものです。当時は、保育士不足が問題になっており、少人数のなかで残業時間が長く、賃金に見合っていないという問題を解決すべくシステム開発しました。現在は、保育士不足は一部地域では解消されつつあるものの、仕事の大変さからくる、定着率の低さの解決、職員様の働き方の改善などのためにChiReaff Space®を導入する保育園さんが増えていますね。

きっかけは、弊社の社内スタートアップを促す取り組みで、チームを組んで社会貢献をしようという企画があったのですが、そちらでとある社員の奥様が保育士をしており、毎日に仕事を持ち帰って大変そうだというところから始まりました。立ち上げまで2年ほどかかり、2015年7月にサービスが完成したんです。

編集部:そんな経緯があったのですね。システムの開発面で、大切にしたことについて教えていただいてもよろしいでしょうか?

関根:弊社では、ChiReaff Space®以外のシステム開発も行っているのですが、こちらのシステムについては、他と大きく違う点が一つあります。 システムとして完璧さではなく、使いやすさを重視した点です。先程、お話した全体的な計画が、好きなフォーマットでアップロードできるといったお話など、柔軟性がありすぐに実用が可能なものを目指しました。

画面遷移やボタンの数をできる限り減らし、伝わりにくいところは、カーソルを合わせれば説明が出てくるなど、実際に保育士の方に触っていただき、お話をうかがいながら作りましたね。

登園管理も簡単なタッチ操作、またはQRコードを使って非接触でできる

編集部:なるほど。当初の目的である、保育士さんの負担を減らすといった軸がブレることなくシステムに反映されているといった訳ですね。実際に現場からの声など届いていたら教えてください。

河本:「これまで50分以上かかっていた書類の作成が、10分程度で終わります」といった喜びの声や、「請求手続きが便利になりました」「ミスが減りました」といったコメントも頂いています。

さらに便利なシステムを目指して機能拡充を進めていく

編集部:ありがとうございます。最後に、今後のChiReaff Space®の展開や目標について教えていただいてもよろしいでしょうか?

関根:保育士さんと保護者の方をつなぐ連絡帳機能の拡充ができたらと考えています。

河本:そうですね、ChiReaff Space®をより便利で使いやすくしていくとともに、まだ先の構想ですが、保育園を卒業した園児の情報を小学校の先生に繋げるまでに、壁があるといったお声もうかがいます。そういった情報連携の壁を、幼稚園や小学校だけでなく、中学、高校となくしていき、より子どもや先生、そして保護者の方がハッピーになる社会づくりができればと考えています。

編集部:本日は、どうもありがとうございました。今後の展開も楽しみにしています!

取材を終えて

これまでの取材のなかで、保育士の方が抱える負担について耳にする機会は多いですが、お話をうかがってその大変さについて理解が深まりました。同時に、ChiReaff Space®が本当に保育士やこれから保育士として頑張っていきたいという方のことを、心から思ってつくられたシステムなのだと感じました。特に、新米の保育士の方が直面し、これまでは経験から作成されていた発達記録を、4万人もの子どものデータと比較しながら作成できる点は、別業界からのアプローチだからこそ見えてきた解決策なのだと感じました。

「ChiReaff Space®」公式ホームページ
https://www.biprogy.com/solution/lob/education/chiReaffspace/index.html

(終わり)

取材・執筆:立岡美佐子(たておか・みさこ)

IT企業から、編集・出版業界に転職。現在は、フリーランスの編集者兼ライターとして旅やグルメ、ソーシャル系など幅広い分野で編集や執筆活動を行っております。
大事にしているのは「価値のある情報を、読者に面白く、わかりやすく伝えること」。
これまで『TRANSIT』『FRaU』『メトロミニッツ』など多数の雑誌制作に携わってきました。
ベビーテックは、「子どもの頃にこんなサービスや商品があれば!」と思うものとの出会いばかりで、毎回刺激をもらっています。趣味は、旅行と料理と合気道。