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保育士さんをサポートし、保護者の安心を増やす! 乳児午睡見守り支援システム「べびさぽ」

本サービスのポイント
  • 特別な準備や作業が必要なく、光と音で確実に午睡中の見守り行動をサポート
  • 「大きな寝がえり」など、子どもの「うつぶせ寝」につながる行動も通知してくれる
  • 子どもの様子や見守り行動を動画で記録。エビデンスや教育資料として活用できる

保育園で過ごす子どもたちにとって欠かせない、毎日の午睡タイム。この午睡中は原因不明とされているSIDS(乳幼児突然死症候群)を防ぐためなど、保育士さんによる見守りが欠かせません。そして、この午睡の見守りをサポートするために「子どもの状態を感知する特殊なマットの上に子どもたちを寝かせる(マット方式)」「子どもの状態を感知するセンサーを子どもの服に取り付ける(センサー方式)」など、さまざまなシステムが開発されています。そんななか、トライポッドワークス株式会社が提供している「べびさぽ」は「映像を使った見守りシステム」という方式を採用。BabyTech.jp編集部は「べびさぽ」を開発したトライポッドワークス株式会社の渋谷義博さん(以下、敬称略)に取材を行い、同サービスの概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。

 


「べびさぽ」について語ってくれた渋谷さん

(お話を伺ったのは)

トライポッドワークス株式会社 イメージソリューション部 部長
渋谷 義博(しぶや・よしひろ)さん

 

「よけいな作業」を増やさずに、「午睡の見守り」をしっかりサポート!

編集部:さっそくですが、「べびさぽ」の概要と特徴について伺えますか?

渋谷:「べびさぽ」は、午睡中の子どもたちを撮影する「カメラ」と映像や各種情報を表示する「タブレット」、そしてさまざまな通知を出すための「ランプ」から構成されています。その基本的な仕組みは次のようなものです。まず、午睡見守りモードをスタートさせてから子どもの動きが無く、保育士さんの見守り行動も見られない状態が4分30秒経過すると、通常は「緑色」のランプの光が「黄色」に変わります。そこで保育士さんが午睡中の子どもたちの寝ている姿勢をチェックすると、その行動をカメラが検知し、ランプの色は「緑色」に戻ります。もし保育士さんが30秒以内(前回の見守り行動から5分以内)に子どもたちの寝ている姿勢をチェックに来られなければ、ランプの光は「赤色」になり、さらに子どもが起きないレベルの音(鳥のさえずり)でお知らせします。これも保育士さんが子どもたちの寝ている姿勢をチェックすると、自動的に音は止まり、ランプも緑色に戻ります。そこからまた4分30秒が経過すると、ランプが黄色になり……という繰り返しになります。

編集部:つまり5分ごとの保育士さんによる午睡中の見守りのうっかり忘れなどがないように、お知らせしてくれるということですね。

渋谷:その通りです。もともと「べびさぽ」は、子どもたちの午睡を見守る保育士さんをサポートする目的で開発しました。その背景には、SIDS(乳幼児突然死症候群)対策として厚生労働省が通達した「5分ごとの見守り行動」があります。「べびさぽ」を開発するにあたり、私たちはこの「5分ごとの見守り行動」が漏れなく守られていれば、SIDSを防げる確率が上がるのではないかと考えました。


「べびさぽ」を構成するランプ、カメラ、タブレットのセット

編集部:御社のパンフレットによれば、「べびさぽ」は危険につながる子どもの「うつぶせ寝」もお知らせしてくれるということですが、これはどういう仕組みでしょうか?

渋谷:先ほどの5分ごとの見守り行動をサポートする機能は5〜6名の子どもに1台のカメラで対応していますが、「うつぶせ寝」を検知したい場合は子ども1名に1台のカメラを使用します。この寝返り見守りモードでは「うつぶせ寝につながる大きな寝返り」を検知すると、ランプが黄色く点灯し、30秒経過するとランプが赤色に変わってお知らせします。そして保育士さんが子どもの寝ている姿勢を整えると、またランプは緑色に戻ります。このセッティングを適用するのは、だいたい生後2、3ヵ月〜半年くらいまでの一人で寝返りが出来ないお子さんや、体調が悪いお子さんなど、特に注意して見守る必要がある場合などですね。

編集部:「べびさぽ」は「うつぶせ寝」そのものを検知するのではなく、「大きな寝返り」を検知するのですか?

渋谷:これにはちょっとした背景があります。「べびさぽ」を開発したきっかけは、仙台市の保育事業者様から「子どもたちのうつぶせ寝を検知するシステムを開発してほしい」という依頼を受けたことでした。しかし実際の現場で確認させていただくと、そもそも子どもたちの「うつぶせ寝」にはさまざまな姿勢がありました。これは映像解析を専門にする当社からすると、「うつぶせ寝に明確な定義がない」ということだったのです。当社にはAIを使ったさまざまな映像解析技術がありますが、そもそも「うつぶせ寝」がどういう状態か定義できないと検出しようがありません。

編集部:たしかに、人間と違って機械が「あいまいな状態」を判断するのは難しそうですね。


午睡する子どもたちを見守るカメラ

渋谷:ですから、根本的に発想を転換しました。保育の現場では、すでに保育士さんが5分に1回、子どもたちの寝姿勢を確認し、うつぶせ寝を修正しています。ですから当社はシンプルに、子どもがうつぶせ寝につながる大きな寝返りをしたら、それをすぐに保育士さんにお知らせして、寝ている姿勢を確認していただくシステムにしました。なお、この際にはモロー反射など、うつぶせ寝につながらない小さな動きは検知しないように調整しています。

編集部:たしかに保育士さんの目で確認していただくのが、一番確実な方法ですね。

渋谷:「べびさぽ」の使い方をまとめますと、ランプが黄色くなったり赤くなったりしたときに、保育士の皆さんがこれまで通り子どもたちの様子を確認するだけで、なんの操作も必要なくランプは元の緑色に戻ります。午睡に入る際にシステムのスタートボタンだけ押していただければ、あとはカメラが自動的に画像を認識して、必要なサポートを行ってくれるという仕組みですね。


保育園の室内で柔らかく光るランプ

編集部:導入が簡単といいますか、操作関係も手間がかからないですね。他の方式の午睡見守りシステムのように、子どもにセンサーを取り付けたり、外したり、マットを敷いたり、片付けたり……といった作業も発生しませんし。ちなみに、なぜランプでお知らせするという仕組みになったのですか?

渋谷:「べびさぽ」で使っているのは、インテリアにも使われる間接照明の柔らかい光を放つランプです。子どもたちを起こさないよう、できるだけ音は立てずにお知らせすることを目指しました。ランプを使っているもう一つの理由は、担当の保育士さんの手がふさがっていて動けないときに、他の先生がたがランプの色の変化に気づいて対応できるようにするためです。つまり、このシステムでは1人の保育士さんがすべてに対応したり責任を負わせられるのではなく、保育士さん同士がお互いに助け合えるようにすることを目指しています。

 

「生死に関わる職場の重圧」を少しでも軽減するために……

編集部:非常にユニークなシステムの「べびさぽ」ですが、これはどういった経緯で開発されたのですか?

渋谷:先ほども申し上げたように、開発のきっかけは仙台市の保育事業者様から「うつぶせ寝を検出してほしい」という依頼を受けたことでした。保育園に当社のカメラを置かせて頂いて保育の現場を分析し、さらに保育士のみなさんにヒアリングさせていただいた結果、問題の本質が見えてきたのです。それは「保育の現場は生死に関わる重要な場所であり、保育士の皆さんには重い責任がのしかかっている」ということでした。

編集部:それは具体的にはどういうことでしょう?

渋谷:保育士の皆さんがおっしゃったのは、「たしかに午睡の見守りを行なっているが、5分に1回必ずやれているかというと心もとない。ごく稀に間が空いてしまうこともある」ということだったのです。他の子がちょうどそのタイミングで泣いてしまったり、オムツを替えるなどの対応をしているうちに、気がつくと5分を過ぎてしまうこともある、ということでした。そして命を預かっている保育の現場で、自分しか子どもたちの午睡を見ている人がいないことも、精神的に大きな負担になっているということでした。当社のカメラで撮影した映像を見る限り、実際の保育の現場はうまく回っているようでしたが、保育士の皆さんがそのように感じておられるならば、保育士の皆さんを支援しなければならないのではないか……と私たちは考えたのです。

編集部:たしかに子どもたちの午睡中も保育士の先生は非常に多忙ですし、なんのサポートもなく確実に5分に1回の見守り行動を行うのは難しいかもしれませんね。


子どもたちを見守る保育士さんには、大きな重圧がのしかかっている

渋谷:そもそも、人間の脳は自然に他のことを考えてしまう性質がありますから、誰でも長時間完全に集中し続けるのは不可能でしょう。「べびさぽ」を利用いただいている保育園の方からは、「午睡中の子どもたちから目を離さないように!」という曖昧な指示ではなく、「ランプが黄色・赤色になったら子どもたちを見て回り、問題がないことを確認しなさい」という、明確な指示を出せることで喜ばれています。「病院」や「保育園」では人の生死に関わる業務が行われているわけですから、そのような職場ではヒューマンエラーを防ぐためのサポートツール、そして事故の再発を防止するために客観的な振り返りができる仕組みを導入することは不可欠だと思います。ですから「べびさぽ」は保育士さんのなり手が少ない現状で、こういうバックアップがあるなら保育士になろうかな、と思っていただけるようなツールを目指してきました。実際に、保育園事業者さんに保育士さんから「そちらの園に『べびさぽ』は入っていますか?」という問い合わせがあった、というお話も伺いましたが、このように少しでも保育士さんが働きやすい環境づくりをお手伝いできればいいと思っています。そしてそれはもちろん、子どもたちにとっても良い保育環境につながるでしょう。

編集部:保育士の皆さんが安心して働くための、「環境整備」にも繋がるわけですね。

渋谷:もう1つ、開発前に保育士さんに伺ったのは、ビデオカメラで撮影されることはイヤではありませんか、ということです。すると意外なことに、むしろ撮影して欲しいということでした。それは自分たちがしっかり保育に取り組んでいることを記録に残してほしいということと、記録として残されていないと万一の際の検証もできないということだったのです。こういったことから、「べびさぽ」は子どもたちの「うつぶせ寝」を検知するセンサー的なものではなく、保育士の皆さんの対応や保育園の運営をバックアップするシステムとして開発がスタートしました。ちょうど2016年頃のことです。

 

「保育現場の動画」は「保育の質」を向上させる!

編集部:「べびさぽ」で録画された映像は、どのように活用されているのでしょうか?

渋谷:「べびさぽ」の録画記録は録画中にどのようなイベントが発生したか、一目でわかるようになっています。録画時間全体を示す表示の中に「薄い黄色の帯」「濃い黄色の帯」「赤い帯」があり、それぞれ「4分30秒の間に動きがなかったためランプが黄色になった」「子どもがうつぶせ寝につながる大きな寝返りをした」「5分以内に保育士さんの見回りが無く、ランプが赤色になった」ことを示しています。それら色がついた時間帯を選択すると、そのときの赤ちゃんの様子や保育士さんがどういう動きをしていたのか、ということが映像で確認できます。たとえば映像からおしめを替えていて、確認に行くのが遅れたのだな……ということがわかれば、そのようなときは他の保育士さんと分担して確認をやりましょう、などと業務の改善ができるわけです。

編集部:「このとき何やってたの!?」と、保育士さんを問い詰める必要はなく、正確に状況を振り返ることができるのですね。

渋谷:人間はそれほど詳細に状況を覚えていないものです。あとで振り返って業務改善に繋げられる、というのが一番の特徴だと考えています。

編集部:これは「保育の質の向上」に繋がりそうですね。


タブレット端末に「べびさぽ」の動画が表示される

渋谷:はい。こういったツールを使っていただくことで、事故を未然に防止する対策も取れると考えています。また、保育士さんが他の保育士さんのやり方を映像で見ることにより、「あっ、この人はこういう風にやっているのか。私も見習おう」ということもあるわけです。つまり、映像には教育効果もあります。それこそ、保育士の方たちにとっての良い教材にもなるでしょう。

編集部:現在、「べびさぽ」の導入状況はいかがですか?

渋谷:おかげさまで多くの問い合わせや引き合いを頂いており、北は青森県から南は沖縄県の保育園まで導入させて頂きました。ただ、お声がけ頂いた多くの保育園には設備投資予算が無いという実態があり、「自治体に補助金制度があれば導入を検討するのだが……」と導入を見送られるケースも多いです。

編集部:東京都などは積極的にIT設備関係の補助金を出していますが、それ以外の地域は厳しいのですね……。実際に導入された保育園からは、どのような感想がありますか?

渋谷:午睡の様子をリアルタイムに映像で見ている園長先生と、現場にいる担当の保育士の方でダブルチェックできるのが良いですとか、人とシステムのダブルチェックで安心という声を頂いています。それから、「何かあったときに映像が残り、保育士がきちんと対応していた証拠が残るのはありがたい」というコメントも多いですね。また、このようなシステムを導入していることを保護者にお伝えすると、みなさんとても安心されるそうです。

編集部:私も1歳半の娘を保育園に預けているのですが、こういうシステムはぜひ導入してほしいと思います。

 

「映像の分析」から、病気の兆候を発見できるかも!?

編集部:最後に、今後の展開を伺えますか。

渋谷:たとえば映像記録を蓄積し、「子どもたちの様子」や「ランプの点灯状況」、「保育士さんの良い行動・悪い行動」を分析することによって、より高度な画像解析AIシステムができるかもしれません。それによって、事前に危険を察知したり、病気の兆候を発見できる可能性もあります。

編集部:子どもがこういう動きをしたら要注意、というような?

渋谷:そうですね。危険が発生する兆候があるとしたら、映像を分析するAIにそれを学習させ、事前に抑止することも可能になってくるでしょう。これまでの技術では「危険な瞬間を察知すること」しかできませんでしたが、より大切なのは「危険を事前に予知して回避すること」であり、いかにしてそれを実現するのかが、今後の私たちの課題だと思っています。


「べびさぽ」の将来像について語る渋谷さん

 

取材を終えて

「午睡見守りシステム」に取り組む各社は現在、子どもたちの「体温・体動・心拍」などのデータから病気の兆候を察知しようとしていますが、「べびさぽ」は「映像」からそこに取り組まれています。「映像」は非常に情報量の多いデータですから、蓄積されたデータの解析条件や精度によって今後も大きな可能性や発見があるのではないでしょうか。また、子どもたちの午睡見守りをサポートするシステムが普及して保育士さんの精神的な負担が軽くなれば、きっと保育士志望者も増えることでしょう。そのためには、やはり自治体による支援が欠かせません。ぜひ、全国の自治体でITシステム導入の補助金制度の充実を進めてほしいと思います。

トライポッドワークス株式会社 公式ホームページ
https://www.tripodworks.co.jp/

「べびさぽ」公式ホームページ
https://www.tripodworks.co.jp/products/babycaresupport/