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時短勤務に特化した転職エージェント「リアルミーキャリア」

世の中に転職を支援するサービスはたくさんありますが、時短勤務に特化した転職エージェントは他に類を見ないのではないでしょうか。ワーキングマザーにとって時短勤務は譲れない条件です。しかし時短勤務という理由で「キャリアアップができなくなった」、「役職を外されてしまった」など能力があっても活躍の機会を奪われてしまうことも少なくありません。仕事と育児の両立を諦めずに柔軟な働き方ができる企業をマッチングする転職エージェント「リアルミーキャリア」を運営する株式会社リアルミーの代表取締役社長 増山(ましやま)祥紘さんと奥川隼彦さんにお話を伺いました。

(お話を伺ったのは)
株式会社リアルミー
代表取締役社長 増山祥紘さん
奥川隼彦さん


こだわったのはパートタイマーでも契約社員でもなく、正規雇用で時短勤務

編集部:「リアルミーキャリア」の特徴についてお聞かせください。

増山:弊社の転職支援サービス「リアルミーキャリア」とは、いわゆる転職エージェントのことです。ただし他の転職エージェントとは少々異なり、主な対象を正社員待遇で時短勤務を希望されるワーキングマザーに絞っています。そもそも時短勤務とは、午前9時から午後6時まで8時間勤務されている育児中の正社員の方が午後6時の保育園のお迎えに間に合うよう勤務時間を1~2時間ほど短縮するといった仕組みです。実は、この制度には就業規則で1年以上その会社で働いていないと使えないという縛りがある会社もあります。しかも時短正社員になってしまうと、会社でどんなにキャリアを積み重ねた方であっても役職が外されてしまうことや、仕事内容が変わってしまうことでやりがいを失ってしまうというケースも少なくありません。弊社ではパートタイマーや契約社員ではなく、あくまでも正規雇用で時短勤務にこだわった転職支援サービスを提供しています。

編集部:そもそも「時短勤務」という条件の求人自体は存在するのでしょうか?

増山:企業側はフルタイムで働ける人材を大前提に募集を行っているわけですから時短勤務を希望される方向けの求人案件というのは、世の中にまず存在しないと思います。しかし、企業側が求める成果を出すために必要な時間は8時間働くことなのか、6時間なのか、それは働く人の能力を採用担当者がその業務をどう定義するかで変動します。たとえ時短勤務でも能力次第でフルタイムの方よりも成果を出すことだって可能なはずです。近年フルタイムで人材を採用すること自体の難易度が上がっていますから、企業側には「時短勤務という新しい人材層にもしっかりと目を向けるべきではないですか」と、ご提案しています。

編集部:他の転職エージェントでも時短勤務を謳うことはないのでしょうか?

増山:既存の転職エージェントさんに登録した場合、時短という条件では求人を案内できないと、断られてしまうケースや時短という条件を伏せたまま転職活動をするよう指導されるケースが多いようです。

編集部:転職するうえで時短勤務がこんなにも厳しい条件だとは想像していませんでした。「リアルミーキャリア」ではどういった企業、職種の紹介が多いのでしょうか?

増山:ITなど成長産業の会社が多いです。職種は営業、マーケター、エンジニア、デザイナー、経理や人事、事務など幅広いですね。ベンチャー企業は成長力に対して採用力がまだ追いつかず、人材確保が難しいためフルタイム以外の人材が活躍しやすい構造になっています。

編集部:その一方で時短勤務での転職が厳しい業界などはありますか?

増山:大企業やメーカーなど伝統産業は保守的な面があり、まだまだハードルは高いです。

 

転職したくても時短では雇ってもらえない–––––ワーキングマザーが抱えるジレンマ

編集部:時短勤務に特化した転職エージェントを立ち上げるまでの経緯やきっかけを教えてください。

増山:共同創業者の女性が2人の子どもをもつワーキングマザーでして、彼女の普段の生活に密着させてもらう機会がありました。日中は仕事をして、夕方に保育園に子どもたちを迎えに行き、家に帰ってきたらご飯を作って、食べさせる。寝かしつけるまで息つく暇もありませんでした。こうした経験から最初はフレックスタイムで働ける仕事に転職できるコンセプトでサービスを始めたのですが、問い合わせてくださった方から「フレックスで働く以前に転職自体ができない」という悩みをお聞きし、そこではじめてワーキングマザーが転職時に直面する悩みを知ることになりました。共同創業者の女性はフレックス制度を使ってフルタイムで働いていたこともあり、転職が難しいという考えに至らなかったのです。こうした経験を踏まえ、時短勤務のまま転職できるということが大きな価値になると考え、サービスを立ち上げることになりました。

編集部: サービス立ち上げから現在に至るまで困難なことはありましたか?

増山: 比較的すぐにワーキングマザーの方から「転職ができなくて困っている」といった相談は寄せられたのですが、肝心のご案内する企業探しは困難を極めました。2017年10月からスタートし、しばらくは登録される方だけがどんどん増えるものの、紹介できる企業がわずかしかないという状況でした。求人サイトで掲載されている企業に営業をかけましたが、人手不足であっても「時短」という条件では受け付けてもらえないケースが多くありましたね。ITベンチャーを中心に取り扱う企業が増えてきたころからようやく回り始めるようになっていきました。

編集部: サービスを利用された方からはどんな声が寄せられていますか?

増山: 一般的には時短だと案件を紹介してもらえなかったり、選考を受けてから時短がダメであることを知ったり、条件調整が難しいという課題があるようです。弊社の場合ははじめから時短が受け入れ可能な案件に絞ってご案内していますし、時短の場合の待遇相場を理解しているため、スムーズに進められると思います。成約に至った方には満足していただいていると思いますが、その一方で企業ラインナップがまだまだ少ないため、ご満足いただける企業をご紹介できないケースもありますね。

 

紹介できる企業の充実を図り、時短人材の転職をメジャーにしたい

編集部: 今後の展開や理想像などについてもお聞かせください。

増山: 理想はフルタイムと時短で職業の選択に差がない状態にすることです。たとえば、ある程度の経験のある方が転職を思い立った時に5~10社程度の選択肢があって、そこから3社くらいをしっかり選べるようにしたいですね。そのためにもニッチでマイナーというラインから早く抜け出し、時短人材の転職自体がメジャーになり、上場企業が時短人材を採用してみようとなった時に「月間に何人くらい紹介できる」というパワーを蓄えていきたいと考えています。

編集部: 今後どんな業種、職種を増やしていきたいとお考えですか?

増山: 成長率が高い人材業界はひとつターゲットになっています。他には女性の方が活躍しやすい美容系の業界、小売店への法人営業などですね。

編集部: キャリアアドバイザーはやはり女性の方が多いのでしょうか?

増山: 弊社で働く社員25名の内、約8割がワーキングマザーです。キャリアアドバイザーと呼ばれる転職を支援するスタッフの多くは女性ですが、男性も数人在籍しています。子どもが何人いるのか、送り迎えに時間がどれくらいかかるのか、など配慮するポイントや勝手がわかったうえで相談に乗れることが他の転職エージェントとは異なる利点です。それと中途採用の案件に対して、どんな事案は時短がOKで、何がNGなのかを選別できることも大きな利点になると思います。中途採用の人材が欲しいというニーズに対して、企業側は時短を想定していないわけですから、その判断はできません。我々は企業側にその可否の色分けをして、伝達を行っています。また、何時間働けるか、どういう給与条件にするかなど企業と候補者、双方の間に入って調整することはもちろん、フルタイムに比べてこれぐらい給与が減ってしまうという時短勤務の相場感などを提示し、候補者のお悩みを解きほぐすことも重要な役割だと考えています。

ママだけでなくパパからの相談もOK!夫婦の働き方やキャリアを見直すきっかけに

編集部: ワーキングマザーの転職についてうかがってきましたが、男性からの問い合わせや相談も受け付けてもらえるのでしょうか?

増山: 奥さんがフルタイムで働き、夫である自分は時短で勤務したいという男性からの相談もごくまれにあります。事例はほとんどありませんが、パパからの相談ももちろん大歓迎です。「フルタイムでもいいから残業なしで午後7時には家に帰りたい」といった相談でもいいので来ていただけると、いろいろ対応もできるかと思います。世間的にはまだまだ男性がフルタイムで働くというイメージが根強く残っていますが、あと5年も経てばそういった風潮にも変化が表れてくるのではないでしょうか。

<取材を終えて>

女性の活躍や働き方改革といった言葉がさかんに叫ばれる昨今ですが、お話を伺うとまだまだワーキングマザーが育児とキャリアの両方を諦めずに自分らしい働き方を見つけることの難しさを痛感させられました。それでも「男性だろうと女性だろうと育児と仕事の両立は同じ課題。それを達成するために働き方に柔軟性をもたせるための選択肢のひとつになれれば」と同席された奥川さんの力を込めた言葉が頼もしく感じられました。「リアルミーキャリア」が時短という切り口で社会全体に風穴を開ける日もそう遠くないのかもしれません。

 

リアルミーキャリア 公式ホームページ
https://www.realme-career.com/