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「人の目とITの目の安心感」でお昼寝を見守る「ルクミー午睡チェック」

本製品のポイント
  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐため、睡眠中の子供たちをモニタリング
  • タブレット端末での操作やデータチェックに使うアプリは定期的にアップデートされ、使い勝手が日々向上している
  • すでに全国300ヶ所以上の保育園に導入され、3,000人の子どもたちのお昼寝を見守っている
日本国内で発売されているベビーテック製品はまだそれほど数が出ていない状況ですが、その中でも代表的な製品と言えるのがユニファ株式会社の「ルクミー午睡チェック」です。同製品はセンサーとタブレット端末が連動して、お昼寝中の子供たちの状態をモニタリングし、自動的にからだの向きを記録。異常を感知すれば、ただちに警告してくれます。2018年4月1日の発売からおよそ4ヶ月が過ぎた2018年8月、BabyTech編集部は同製品を開発・発売されたユニファ株式会社を訪問し、本製品の特長や今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)
ユニファ株式会社
マーケティング課 今村慎様
広報担当 小林美穂様
写真左から小林様、今村様(以下、敬称略)

「子供たちの命」を守りつつ、さらに「保育の質」を高めるために

編集部:本日は大変お忙しいところ、誠にありがとうございます。「ルクミー午睡チェック」は睡眠中の子供たちの状態をモニタリングし、異常があれば警告を発するセンサー・・・という風に理解しているのですが、この製品を開発された経緯を教えていただけますか?

今村: 国内ではSIDS(乳幼児突然死症候群)、つまり睡眠中に子供達が亡くなる事例が年間100件前後起きており、本製品を開発する目的の一つとして、これを防ぎたいということがありました。そこでまず保育園で、保育のプロである保育士さんに使っていただきながら、知見を高めていこうとしたのが開発の発端です。

もう一つの開発の目的は保育園における保育士さん、特に0歳〜1歳を担当する方たちの「午睡(お昼寝)タイム」における業務負担を軽くしたいということでした。今の保育士さんの「午睡チェック」の業務は年々厳しくなっており、たとえば「5分ごとに寝ている時の体の向きを確認し、記録する」とか「SIDSのリスクが高い『うつ伏せ寝』の状態になっていたら、仰向けに直す」といった内容を監査記録として残すことが求められています。こういったモニタリング業務と記録業務を効率化し、ひいては保育士の皆さんの精神的な負荷を軽減して保育の質を上げることが、本製品開発のもう一つの発端でした。

 

保育の現場での「わかりやすさ」と「使いやすさ」を徹底的に追求

編集部:素晴しい取り組みですね。それでは、実際の製品を見せていただけますか?

今村:こちらがボタン式のセンサーです。ホームページなどの写真からはもっと大きいものを想像されていたかもしれませんが、大きさは4センチくらいです。子供が誤って飲み込まないよう、誤飲チェッカーを通らないサイズで設計されています

今村:水色の枠の部分を取り外し、子供達の衣服を挟み込むように取り付けます。試していただければわかる通り、子供たちがいくら寝返りをうったとしても、まず外れることはありません。

編集部:本当ですね。かなりしっかりと固定されています。

今村:このセンサーが、子供たちのからだの状態(仰向け・うつ伏せ・右向き・左向き)を検知して、タブレット端末のアプリ上に5分間隔(チェック間隔は設定により変更可能)で自動的に記録が残されていきます。現状、多くの保育園では、保育士さんがチェックシートに手書きでこの記録を付けています。

今村: ルクミー午睡チェックを使うと、まず保育士さんたちの記録作業という負担が減ります。また、体動停止やうつ伏せ寝状態を検知するとアラートで知らせてくれます。決して、機械に任せっきりになるのではなく、保育士さんの目で子どもたちのお昼寝を見守っていくことはこれまでもこれからも変わらないのですが、保育士さんの目と、ITの目のダブルチェックで午睡(お昼寝)における事故を防ごうというのがコンセプトです。

編集部:タブレット端末には、リアルタイムにからだの向きが表示されるのですね。警報もアラーム音と画像で知らせてくれるので、見逃す心配は無さそうです。

今村:うつ伏せ寝のアラートは保育士さんが子どもたちのところへ行き、仰向け寝に戻してあげれば、自動的に止まります。このように、午睡チェックセンサーと保育士さんが連携して対応する仕様になっています。

編集部:主に使われる年齢というのは?

今村:0~2歳までを対象としていますが、現状は圧倒的に0歳児クラスに導入している保育園さんが多いです。なお、記録したデータはプリントアウトでき、監査記録用に提出が可能です。

編集部:本製品はクラス1の医療機器として指定を受けていますが、それはどのような条件をクリアされているのでしょうか?

小林:子供の肌に触れることから、特に素材面での条件が厳しかったですね。

 

急速な普及は、保育の現場での高い評価を感じさせる

編集部:製品の普及の状況はいかがでしょうか?

今村:これまで午睡チェックのソリューションとしては、マット型の製品が主流だったのですが、ボタン式センサー型のルクミー午睡チェックの発売以降、非常に多くの問い合わせ・引き合いをいただいております。本製品の導入時にセンサー1つあたり3万円の補助金が出ている自治体もあり、それも普及の後押しになっています。2018年8月現在、全国で300の保育園で使っていただいており、およそ3000個のセンサーが子供たちのお昼寝を見守っています。

編集部:実際に使われた保育園からの反響はいかがですか?

今村:「うつ伏せ寝の検知」と「からだの向きの自動記録」は、特に高く評価されていますね。午睡(お昼寝)の際に担当の保育士さんが交代しても、継続して「うつ伏せ寝」をしっかりチェックでき、間違いなく同じやり方で記録できる点が喜ばれています。

また使用されている保育園の中には「このようなシステムも併用して、午睡時の子供たちの安全を守っています」と保護者会で説明されているところもあり、保護者の皆さんの安心感につながっているようです。

編集部:将来的には保育園の差別化にも、つながりそうですね。

今村:そうですね。現状の保育業界における課題は保育士さんの採用や離職防止だと思います。そこで保育園を運営されている方は、このようなシステムを導入することで業務の効率化を図るとともに、精神的な負担を下げることで、採用や離職防止に活用することを考えておられるようです。

小林:実際、ルクミー午睡チェックを導入していただいている保育園の中には、保育士さんの定着率が非常に高いところがありますね。その保育園はホームページで同製品を使用していることをアピールしてくださったり、当社へのリンクも貼っていただいております。

 

保育の現場にIT機器を導入するための工夫とは

編集部:実際に、本製品を導入する流れについて教えてください。

今村:「箱を開けたらすぐに使える」をコンセプトとし、出荷段階から当社のカスタマーセンターでサポートしています。タブレット端末は携帯電話と同様に通信simカードが入っているので、Wi-Fiによるネット接続設定は不要です。モニタリング用アプリもタブレット端末にインストール済みなだけでなく、アプリの入力用画面には導入する保育園に合わせて子供たちの名前が設定してあります。そしてセンサーにも子供たちの名前シールが貼られた状態になっています。

製品リリース後も、顧客の声を大事にし、細かい改善を繰り返しています。たとえば保育の現場からの要望で、モニタリング用アプリの文字入力方法を「ローマ字入力」ではなく、「日本語入力」に変えたり、自由に記入できるメモ欄を追加したりしました。それこそ文字が小さいところを大きくしたり、寝ている子供のからだの向きを表す矢印のデザインなども、ご意見をいただいてアプリのバージョンアップごとに改善しています。これはアプリを社内で開発しているからこそ、可能なことです。

編集部:どんどん使い勝手が良くなっているわけで、保育園側はとてもありがたいですね。

今村:IT機器に慣れている方、慣れていない方、いろいろな保育士さんがいらっしゃいますから、くわしくない方でも使えるように工夫しています。またそうでなければ、普及しませんので。

編集部:導入経費はどれくらいなのでしょうか?

今村:センサーは、1つ3万円で販売しています。あとは利用している園児数に連動して、月額利用料をいただいています。

 

「スマート保育園構想」の実現に向けて

小林:実は当社では社長からエンジニア、営業などの社員が年に1度、保育園で実習をさせていただいています。そこで現場の保育士さんの横について、さまざまな業務を間近に見つつ、ご意見を伺っています。

編集部:それは新たな開発のヒントになりそうですね。今後はどのような展開を考えておられるのでしょうか?

今村:ルクミーのシリーズとしては、2018年中に「ルクミー体温計」を発売する予定です。おでこに当てると、5秒ほどでタブレットに体温データが記録される製品です。さらにその次のルクミーシリーズも出したいと考えております。これは当社の製品で取れるさまざまなデータを、保護者にもお伝えしたい、というニーズがあるためですね。

小林:私たちの会社では、これを「スマート保育園構想」と呼んでいます。さまざまな当社のサービスをつなげて保育業務の負担軽減や保育の品質向上を目指し、家庭と保育園をもっと近づけていくという構想です。ルクミー午睡チェックやルクミー体温計、その他の製品・アプリ・サービスなども、この構想に沿って展開しています。

今村:またSIDSの9割は家庭で起きているので、ルクミー午睡チェックを一般家庭にも販売していかなければSIDSを防ぐことになりません。当社の使命として、将来的には家庭向けにも展開させていきたいと考えています。

 

<取材を終えて>

実物を見るまでは、どんなものなのか想像もつかなかった同製品。しかし、実際に使用するときの様子や保育の現場の悩みを伺い、まさに待望されていた製品だと思いました。類似の海外製品はあるものの、やはりマニュアルが英語だったり、信頼性に不安があることから、早く一般家庭にも普及させて欲しいものです。

また、社内にアプリ開発のできるエンジニア部門があり、さらに保育園での実習などを通じて現場の生の声を知ろうとする同社の姿勢に感銘を受けました。今後もすばらしい製品を発表してくれそうです。

最後に、実際に本製品を使用している保育園の保育士インタビューで寄せられたコメントをご紹介します。

  • 子供に機械を取り付ける不安はあったが、実物を見て、これなら大丈夫だと思った
  • 思ったよりも使い方が簡単だった
  • 機械に弱いので不安だったが、自分でも使えたので安心した
  • 保護者からも、「こういう製品があると安心ですね」と言われた
  • 人の目と機械により、子供の状態をチェックするので、二重の安心感がある
  • 連絡帳を書いている時などに一瞬、子供から目を離してしまうので、異常を音で知らせてくれるのは助かる
  • 記録の手間が省けるだけ、より子供に目が行き届くようになった

 

国産ベビーテック商品は今後も様々なメーカー様からどんどん登場してくると予想されます。楽しみですね!

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