- 顧客に対してベビーテック製品について伝えることを重視したコーナーづくり
- 主力ラインナップは子育て家庭のニーズが高い「寝かしつけ系」「時短系」アイテム
- 広い意味でのベビーテック製品を積極的に取り入れ、他店舗への拡大も視野に
2022年4月25日にオープンした「アカチャンホンポ ららぽーと福岡店」には、全国初となる常設のベビーテックコーナーがあります。そのコーナーでは、さまざまなベビーテック商品を体験できるだけでなく、実際に購入も可能です。そこで今回は、株式会社赤ちゃん本舗の商品本部バイヤー、山形祐也さん(以下、敬称略)に株式会社パパスマイル代表取締役の永田哲也がインタビューを行い、同店舗のベビーテックコーナーのコンセプトやお客さまの反応、今後の展開などについて伺いました。
株式会社赤ちゃん本舗
商品本部 バイヤー
山形 祐也(やまがた・ゆうや)さん
株式会社パパスマイル
代表取締役 永田哲也
「顧客にベビーテック製品について伝えること」を最優先に考えた常設コーナー
永田:本日はお忙しいところ、大変ありがとうございます。さっそくですが、アカチャンホンポららぽーと福岡店の概要について伺えますか?
山形:同店舗は2022年4月25日、福岡市博多区の商業施設「三井ショッピングパークららぽーと福岡」の3階にオープンしました。マタニティ期に必要な商品や出産準備品などをワンストップでお買い物ができる売場と、生後12ヵ月頃までのベビーの子育てに絞り込んだ品揃えで、選びやすく、わかりやすい売場の編成にしています。
永田:そんな同店舗にベビーテックコーナーが常設されているのですね。
山形:はい。子育ての課題をテクノロジーで解決する商品やサービスを、生活者の方に直接見て触れていただき、購入もできるベビーテックの展示コーナーを設けました。ここではテーマに応じてテクノロジーを活用したさまざまなアイテムを紹介し、育児を含む家族の生活がより便利に、より楽しく、より豊かになるよう提案していきたいと考えております。
永田:ありがとうございます。ベビーテックコーナーのコンセプトについて伺えますか?
山形:まず、これは当社として初めてベビーテック商品を実際に販売するコーナーになります。そこで、いかに商品の良さをお客さまにお伝えするか、それらを使うことでどんなメリットがあるかお伝えすることを一番に考えています。
同時に、ただ商品を並べるだけでは家電量販店と同じ売り方になってしまいます。ですから、「ベビーテックは子育てを変える」というポスターを掲示するなど、なぜアカチャンホンポとしてこれらの商品を取り扱っているのかを、お客さまにお伝えすることも強く意識しています。
永田:売場の写真を拝見すると、ベビーテックの取り組みを伝えるポスターが貼られていますね。
山形:通常の商品ポスターは一言で伝えるタイプが主流なのですが、ベビーテックコーナーのポスターは立ち止まって読んでいただくことを考え、写真と文章でしっかりと内容を伝えることを意識しています。
コーナーの主力は育児家庭に役立つ「寝かしつけ系」と「時短系」アイテム
永田:ベビーテックコーナーに置かれている商品について教えてください。
山形:大きく分けると、最も多いのが寝かしつけ関連の商品です。具体的には眠っている子どもたちを見守るモニターカメラ系の商品と体動センサー系の商品、それからファーストアセントのスマートベッドライト「あいねんね」などです。また、子育て家庭に役立つ「時短」をテーマにした商品として、調理家電や「分け洗い」に特化した洗濯機などをご用意しています。
永田:「あいねんね」のような最先端のベビーテック製品が一般の小売店で販売されるのは初めてのケースだと思いますので、ベビーテック業界として注目したいところですね! その一方で、ベビー用フードプロセッサーや分け洗い用のバケツ型洗濯機など、お客さまにとって身近で使うシーンのイメージが浮かびやすく、子育てに活かしやすい製品チョイスがベビーテックの入り口として素晴らしいと感じました。
山形:今回の製品選びは私自身の子育て経験や、周囲の子育て経験者にヒアリングした結果を踏まえています。やはり「寝かしつけ」が最も負担が大きく、ストレスがかかるところだということで、その分野のベビーテックを使うことでゆっくり子どもと過ごす時間をとっていただきたいという思いから主軸に置きました。
また、私自身の経験ですが一般的にご飯を作っているときや洗濯をしているとき、親は家にいることが多いでしょう。すると子どもたちは「遊んでもらえる!」と思うので、「これ見て!」とか「あれで遊ぼう!」と言ってきます。しかし、親としては「ちょっと待ってて!」と言わなくてはならず、それをいつも残念に思っていました。結局、家事によって子どもと過ごす時間がどんどん減ってしまっていたからです。このような思いをしなくてもよくなるベビーテックは本当に素晴らしいものだと思います。そこで、子育てにおいて「子どもを待たせている作業はなんだろう?」という観点から商品を選定しました。
永田:それは子育て経験者としては身につまされる話ですね。私もよく家事をしている時、話しかけてきた娘に「いま、お父さん手が離せないんだよ」と言ってしまい、あとで後悔しています。
ベビーテック製品は「分かりやすい」「使用シーンがイメージできる」で売れる!
永田:ベビーテックコーナーに対するお客さまの反応と、人気のあるベビーテック商品について伺えますか?
山形:注目度が高いのは、電動スイング(ゆりかご)です。ベビーテックコーナーの入り口付近に置いてあり、お客さまが足を止めて見入っていたり、よく見るためにベビーテックコーナーに入ってきていただいたりすることが多いです。やはりテクノロジーとしての分かりやすさ、外観が際立っているためではないでしょうか。1番人気の商品はパナソニックのベビーモニターです。アカチャンホンポ全店での販売実績では、1ヶ月に約250〜300台売れています。
永田:子どもを眠らせてくれる、または眠っている子どもを見守るなど、使うシーンのイメージがつきやすいベビーテックが注目されているようですね。
山形:現時点で、分かりやすいベビーテック商品が売れているのは明らかな傾向です。分かりにくい商品は、どうしても売場スタッフによる説明が必要になります。その面について当社の体制は、まだ完璧とは言えません。たとえば「あいねんね」のような商品説明にAIやビッグデータといった言葉が出てくるアイテムには、若干の抵抗感があるようです。
実はベビーテックコーナーで「あいねんね」を扱うにあたっては、ファーストアセントの担当役員の方から売場スタッフ全員が直接研修を受けました。しかし、それでも完全に理解するのは難しかったようです。このあたりのベビーテックに関するスタッフ教育は、当社の今後の課題だと感じています。
永田:御社がベビーテックを展示されていらっしゃるもう一つ店舗(アカチャンホンポ セブンタウン小豆沢店)では、私も商品説明についてのアドバイスを御社のスタッフ皆さんにさせていただきました。パパ・ママという利用者側の目線に立つことが多い私たちであれば、よりスタッフの方たちにとってハードルの低い説明ができるかもしれませんので、いつでもご協力させてください。
最も大きな課題は「ベビーテックとはなにか?」という疑問だった
永田:今回ベビーテックコーナーを設置されるにあたって、最もチャレンジングだったところを教えていただけますか。
山形:ベビーテックコーナーと言っても、まったく新しい商品ばかりを取り扱っているわけではありません。これまで当社で扱っていた商品が半分くらいあるなかで、それを「ベビーテック」と言って販売してよいのかという疑問が浮かぶこともありました。たとえば、これまで「育児家電」というカテゴリーで売っていた商品を「ベビーテック」という言葉で販売することについて、どのように取り組んでいくかが難しかったということです。また、「ベビーテックとは何か」という一貫した考え方を持つこと、この商品は「ベビーテック」だと自信を持って言えるのかということ、つまり「商品の選定」が難しかったです。
永田:ベビーテックをピラミッド型で考えると、育児家電は広い裾野の部分に当たるかもしれません。もっと言えば白物家電、たとえば食洗機やロボット掃除機なども子育て中の家庭にとっては非常に役に立ちますから、裾野のところに含まれるイメージと言ってもよいと考えています。そしてピラミッドの頂上に近づくと、ビッグデータやAIを活用したベビーテック製品があるということではないでしょうか。しかし、現状のままでは売る側も買う側も混乱してしまいますから、私達発信をする側もベビーテックとはどういうものであるかをきちんと定義づけして、世の中に示していきたいと思っています。山形さんのお話を伺って、改めてその必要性を感じました。
広い視野でベビーテックを捉え、さまざまな製品を通じて家族の幸せに貢献する
永田:今後のベビーテックコーナーの展開について伺えますでしょうか?
山形:先ほど話題に出た食洗機や自動掃除機も、ベビーテックコーナーに加えることを検討しているところです。しかし、他の小売店ではあまり売っていないような商品をアカチャンホンポとして売れるようになることを目指しているので、やはりAIやアプリと連動した製品を導入していかなければ……と考えています。
永田:ベビー向けのテック商品だけでなく、子育ての負担そのものを軽減し、家族の生活の質を高めるさまざまなテック商品を提案されていく、ということですね。
山形:はい。ビジネスとしても大きなチャンスがあると思います。ですから、先ほど永田さんがおっしゃられた「広い意味でのベビーテック」という考えに立って、さまざまな商品を見ています。
それこそ「衣類乾燥機」「ふとん乾燥機」などもチェックしているのですが、そうなると競合するのは家電量販店ということになります。競争力の高いそれらの店舗に勝つのは非常に難しいのですが、パナソニックのベビーモニターに関しては、家電量販店を上回り当社がより販売しており、「アカチャンホンポは育児で困っている方との接触回数が多い」「利用シーンを明確にイメージできる展示」といったところにヒントがあると考えています。
永田:ベビーテック製品の展示会で、ベビーベッドを設置して赤ちゃんの人形とモニターカメラを設置して初めて、「こういうふうに使うのね!」と来場された方に理解いただけたという経験があります。また、私たちとしてもベビーテック製品がどれほど「子どもと向き合う時間を増やすのに役立つか」をさらに伝える努力をしていきたいと思います。
山形:理想としては、ベビーテックという言葉をお客さまが見たときに「これで手間が省けて、子どもとゆっくり接することができる!」とすぐに連想していただけることですね。店舗でもそのような取り組みをしていこうと考えています。
永田:まさにそれは私たちの課題でもあります。ぜひ、ご一緒にそのようなイメージを確立していきたいです。ちなみに、「アカチャンホンポ ららぽーと福岡店」の反響次第では他店舗にもベビーテックコーナーは展開されるのでしょうか?
山形:今後オープンする新店などでも展開していければと考えています。まずはららぽーと福岡店でのお客さまの声や反応を確認し、よりイメージがしやすい売場づくりをしていきたいです。
永田:今回は色々お話を伺わせて頂きありがとうございました。今後の新店などでの展開、お客さまの反応も楽しみにしております。
<記事に関連するリンク>
アカチャンホンポららぽーと福岡店 公式ホームページ
https://stores.akachan.jp/282