- 「保育士バンク!コネクト」は、保育士さんの煩雑な書類作業をICTの力で効率化するサービス
- 類似サービスとの大きな違いは、園長先生や主任の先生など管理職が行う「シフト・勤怠管理」がカバーされている点
- 園管理に余裕が生まれることで、現場の保育士さんや管理職・園長先生の負担が減り、好循環が生まれる
ニュースでも取り上げられることが多い、保育士さんの仕事の大変さ。その負担を大きくしている大きな要因は、煩雑な書類業務です。書類作成に追われ、お昼を食べる時間もなく、家に帰っても溜まった仕事をこなす保育士さんも多いのだとか。それは、現場で子どもたちと接する職員だけでなく、管理職にあたる園長先生や主任先生も同じです。今回ご紹介する「保育士バンク!コネクト」は、そんな保育業界の大変さをテクノロジーの力で解決するサービス。「BabyTech® Award Japan 2021保育ICT部門」で見事、優秀賞を受賞した保育士バンク!コネクトの特徴や目指す未来について、開発を行っている株式会社ネクストビートの担当者の方にお話を伺いました。
(お話を伺ったのは)
株式会社ネクストビート
保育士バンク!コネクト マネージャー/佐藤 裕大(さとう・ゆうた)さん
保育士バンク!コネクト 開発責任者/森川 慎也(もりかわ・しんや)さん
(以下、敬称略)
複雑なシフト・勤怠管理をサポートし、管理職の負担を軽減!
編集部:本日は、よろしくお願い致します。さっそくですが「保育士バンク!コネクト」のコンセプトについて教えていただけますか?
佐藤:保育園や幼稚園の事務作業をテクノロジーによって効率化し、保育士さんの負担を軽減するサービスです。具体的には、複雑な職員のシフト管理や勤怠管理、登降園管理など、これまで紙ベースで行っていた作業を効率化することができます。
編集部:ありがとうございます。紙ベースでの事務作業は、やはり時間がかかるものなのでしょうか?
佐藤:そうですね。私も様々な園に訪問することがありますが、現場の保育士さんからは、「紙が多くて作成そのものに時間がかかる」とか「監査の際、以前に作成した書類をたくさんあるバインダーの中から探すのに時間が掛かってしまった」といったお話をよくうかがいます。
朝からおやつ、お散歩、給食、午睡、自由時間、降園と常にお子どもたちにつきっきりで面倒を見る保育士さん。仕事の傍ら、連絡帳や園児台帳など書類作成の仕事に追われているので、お昼を食べる時間がないという方も多いのではないでしょうか?園児たちが帰った後も、残って事務作業をしている方が多いと聞きます。
編集部:ただでさえ忙しいのに、見えていない部分で、膨大な書類作成業務があるのですね。
佐藤:現場で働く保育士さんも大変ですが、園全体やそれぞれのクラスを管理している、園長先生や主任の先生の負担も大きなものだと感じております。
編集部:具体的にはどのような部分が大変なのでしょうか?
佐藤:一番大変なのが、職員の「シフト管理」です。保育園や幼稚園では、毎日のように先生の配置が変わります。変形労働時間制といって、月の中で働ける時間が決まっていますし、子育てをしながら働いている、女性の職員さんが多いので、子どもの体調不良などで細かな調整が入ることがよくあるのです。ここ数年は、コロナの影響で更にシフト管理が複雑化しており、園長先生や主任の先生がシフトづくりにかかる時間は膨大なものになっているケースが多いんです。
編集部:そんなに大変なのですね!実際のシフトの組み方について、簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか?
佐藤:前提となるのは、職員さんの働く条件です。常勤の方であれば月間での働く条件を法律・就業規則で決められた労働時間内に納めないといけないですし、パートの方ですと扶養の範囲で働きたい方・働ける時間帯が限られている方など様々な雇用形態があります。人によって条件が異なる、そのあたりを主任先生や園長先生・シフト作成の担当が気遣って「パズル」を組んでいるのが現状ですね。
そこにプラスして関連してくるのが「配置基準」。規定で園児数に応じた有資格者数が決まっているので、その条件を満たすことを前提に、クラスが回るような配置をする必要があるのです。最低限のルールだけだと「しっかりと保育が回る」状態にならないので、この微妙なバランスを考えながら、日毎・週毎・月毎を組んでいます。職員思いの園さまが多いので、これらに公平性担保や他の細かいルールが組み合わさって、ようやくシフトが出来る形です。
編集部:本当にいろいろな要素が複雑に絡みあっているのですね。
佐藤:「保育士バンク!コネクト」の類似サービスとの大きな違いは、保育士さんの業務だけでなく、こういった管理職の方の「シフト勤怠管理」、有休・残業委管理をカバーしている点です。
編集部:そちらの機能についても詳しく教えていただけますか?
佐藤:シフトに関しては、管理職や経営者の方の負担を減らし、配置状況が一目で分かるようにしています。過去のシフトを参考にして、1クリックでシフト作成してくれる「シフト自動作成」機能や、「ローテーションシフト」と呼ばれる機能で規則性のあるシフトが作成できるので、イチからシフトを作る必要がありません。
月毎のシフトと日次の配置表が連動出来ている点や、公正な配置、働き方に基づいたグループ分けなど保育業界で見るべきポイントを盛り込んでいるので、今の運用と大きく変えずに省力化できます。
編集部:シフト一つをとっても、さまざまな配慮がされているのですね!
佐藤:シフト作成だけだとまだ「歯抜け」状態です。
特に保育業界は変形労働時間制を採用している園がほとんどなので、集計にあたってはシフトと勤怠打刻(出勤簿・タイムカード)や申請書類(有休申請・残業申請)の確認など作業が膨大になってしまいます。
保育士バンク!コネクトでは、単なるシフト作成効率化システムとならないよう、シフト作成だけでなく、勤怠管理・有休管理・残業管理の相互確認作業を効率化する機能を設けております。給与に直接影響を与えるミスが許されない領域だからこそ、業務の効率化を推進していくべき領域だと私たちは考えます。
園児の出欠確認や連絡帳や書類作業のICT化がこの5年で大幅に進んだからこそ、保育業界の働き方改革や働く環境の整備も含めて、勤怠管理や給与に関する領域のシステム化を合わせて進めていかないといけない。そんな強い思いで日毎の業務に向き合い続けています。
編集部:管理職や経営の方の作業をサポートするシステムというのはあまりない気もするのですが、現場の保育士さんだけでなく、経営層の負担も軽減しようと考えられている理由についても教えていただけますか?
佐藤:保育士さんの行っている業務も重要ですが、保育園の在り方を方向づけるのは、経営陣・園長先生・主任先生。そういった経営に携わる方々の負担を減らすことで、より良い園の在り方について考える時間を確保することができると考えております。
また、余裕が生まれることで、職員さんのフォローや、事務作業を最適な分配ができるといった好循環が生まれるのではないでしょうか?保育士バンク!コネクトは、少子化が進み、保育業界に関する悩みが増えていく中でそういった園経営に関わる方の最高パートナーであり続けたいと考えています。
2クリックで欲しい機能に簡単アクセス!
編集部:ここからは「保育士バンク!コネクト」の開発についてお話を伺えたらと思います。まずは、サービスを開発するに至った経緯についてうかがえますか?
森川:開発については、私の方からお話致します。弊社は2013年の創業時から「保育士バンク!」という、保育士・幼稚園教諭向けの転職支援サービスを展開しておりました。その中で、わかってきたのが先程、佐藤からお話があった事務業務の煩雑さでした。保育士さんや園長先生の負担を減らし、保育業界をより良いものに変えるため、2017年に生まれたのが「保育士バンク!コネクト」です。
編集部:「保育士バンク!コネクト」を開発する上で、大切にされたポイントがあれば教えていただけますか?
森川:一番重きを置いた点は「本当に現場で使えるサービス」という点です。先行の類似サービスを導入した園のなかには、導入がゴールとなってしまい使われていない保育施設があることなどヒアリングを通じて知ることができました。また、目的の画面を開くまでのステップが煩雑で、ストレスになってしまっているケースや、現場の方の負担は軽減しても園長先生や主任の先生といった管理職の方のケアができていないものもあります。「保育士バンク!コネクト」では、しっかりと保育の現場を見た上で、そういった問題を解決できるようなサービスにしております。
編集部:詳しくうかがえますか?
森川:はい、まずは「2段階認証機能」です。現場では、複数の保育士さんが1つの端末で様々な機能にアクセスします。この時に、セキュリティ観点からユーザー切り替えの度にログアウトと再ログインの作業が必要となります。しかし、保育業務が忙しいことや、IT機器の利用に慣れていない職員の方がいらっしゃることから、切り替えの度に再ログインすることは実運用的に難しいことがわかりました。そのような状況でセキュリティと可用性を確保するため、まずIT機器の利用に慣れた方が一段階目認証を行った後に操作が容易な二段階目認証を行うことで、この課題をクリアしています。
編集部:他にもありますか?
森川:あとは、システム全体として2クリックで使いたい機能にアクセスできるような設計にしています。こういったルールを決めることで、操作にかかるストレスを軽減することができます。また、画面を作る際、デザイナーも一緒に保育園にお伺いし、保育士の方や園長先生にフィードバックをいただき、使いやすい画面を目指しました。
編集部:素晴らしいですね! 開発において大変だったことについても伺えますか?
森川:保育園経営において重要なシフト・勤怠・労務管理に関する機能面の開発に苦心しました。労働基準法や配置基準という基本ルールをシステムとして反映し、また法定改正にも準拠していくのはもちろん、そのサービスを「事務作業に余裕をもって触る時間が物理的に少ない」園長先生や主任先生でもすぐに操作に慣れて頂け、簡単に操作出来るように、プロダクト開発・運営していくバランスにずっと悩んでいます。もう一度やり直すとなると「やりたい!」とは言えない領域です(笑)
この苦心の日々があったからこそ、導入園からの声はもちろん、保育園に入られる社労士さん・コンサルの方から「保育業界のシフト・勤怠管理だったら、保育士バンク!コネクト」だとお話し頂けるのはやりがいを感じています。
まだ発展途上の部分もあります。これからも大変なことが多いですが、未知なる壁に立ち向かっていきたいです。
編集部:現場の「あったらいいな!」を形にしたサービスだということがわかりました。ありがとうございます。
転職、定着、業務効率化…。今後は包括的なサービスを提供したい
編集部:実際に「保育士バンク!コネクト」を利用された方の感想について教えていただけますか?
佐藤:「作業時間がこれまでの3分の1になった!」や「半日かかる監査業務が1時間で終わった」といったご意見や、「もっとはやくこのサービスを知りたかった」「在宅ワークとの相性も良い」といった嬉しいお声をいただいています。
編集部:ありがとうございます。最後に、今後の目標について教えていただけますか?
森川:弊社では、「保育士バンク!コネクト」の他にも、創業時から提供している、保育士専門の転職支援「保育士バンク!」や、職員さんのエンゲージメントを可視化しコンディションを管理する「保育士バンク!パレット」などがございます。そういった採用・定着支援サービスと、働き方改革を推進していく「保育士バンク!コネクト」を連携し、「保育士バンク!プラットフォーム」として、保育業界における課題を解決する包括的なサービスを提供していきたいと考えています。
編集部:本日は、どうもありがとうございました!
取材を終えて
保育士さんの書類作成業務の煩雑さをサポートするサービスはたくさんありますが、そのなかでも、管理職の更に煩雑な業務を軽減して、より現場を見る時間を増やし、園のサービスについて考えられる時間を作れるようにするといった、保育士バンク!コネクトのサービスは、問題の本質を深掘りした保育業界のためになるものだと感じました。時代に合わせて園の方針を変えられる人たちの負担を減らし、園全体の改善をしてもらうことは、他の園との差別化や、保育士さんの労働環境の改善になるのはもちろん、子どもを預けて働くママやパパにも還元されると思います。他のサービスと連携させた、今後の保育士バンク!コネクトが生まれるのが楽しみですね!
「保育士バンク!コネクト」 公式ホームページ
https://kidsna-connect.com/site/
(終わり)
取材・執筆:立岡美佐子(たておか・みさこ)
IT企業から、編集・出版業界に転職。現在は、フリーランスの編集者兼ライターとして旅やグルメ、ソーシャル系など幅広い分野で編集や執筆活動を行っております。
大事にしているのは「価値のある情報を、読者に面白く、わかりやすく伝えること」。
これまで『TRANSIT』『FRaU』『メトロミニッツ』など多数の雑誌制作に携わってきました。
ベビーテックは、「子どもの頃にこんなサービスや商品があれば!」と思うものとの出会いばかりで、毎回刺激をもらっています。趣味は、旅行と料理と合気道。