- 赤ちゃんの寝かせつけに悩む親は多く、それによる日常生活への負担は大きい
- 「ainenne」は、太陽光に近い光やホワイトノイズで赤ちゃんの睡眠環境を改善し、睡眠リズム形成をサポート
- 膨大な研究データに基づいた泣き声分析により、赤ちゃんが泣いている理由がわかるので安心
人にとって必要不可欠な「睡眠」。睡眠不足や、睡眠の質が悪化は、日常生活にも支障をきたしてしまいます。それは、赤ちゃんやママとパパにとっても同じこと。今回ご紹介する「ainenne(あいねんね)」は、太陽光に近い光やホワイトノイズで赤ちゃんの起床や睡眠をサポートし、赤ちゃんが泣いている理由についても知らせてくれる「あったらいいな」が詰まったアイテムです。「BabyTech® Award Japan 2021健康管理部門」において優秀賞を受賞した、ainenneの魅力や完成までの経緯について、開発を行っている株式会社ファーストアセントの代表である服部伴之さん(以下、敬称略)にお話をうかがいました。
(お話を伺ったのは)
株式会社ファーストアセント 代表取締役
服部伴之(はっとり・ともゆき)さん
寝かしつけにまつわる悩みを解決する「スマートベッドライト」
編集部:まずは、「ainenne」のコンセプトについて教えていただけますか?
服部:コンセプトは「赤ちゃんの睡眠リズム形成をサポートする、ベッドライト型スリープトレーナー」です。子育てにおいて、多くの人が直面しするのが、赤ちゃんの寝かしつけの問題。なかなか寝てくれなかったり、夜泣きをしたりと、赤ちゃんはもちろん、ママやパパも肉体的・精神的にきつくなってしまうことが多いのではないでしょうか?ainenneは、赤ちゃんの睡眠を妨害する要素を取り除くことで、赤ちゃんや家族の健康を守る事を目的としたアイテムです。
編集部:どういった仕組みになっているのか、教えていただけますか?
服部:朝日を浴びると体内時計がリセットされるという人間の仕組みを参考にし、朝決まった時間に、太陽光に近い光を赤ちゃんに照らして、赤ちゃんを目覚めさせるという事をやっています。人間にはおよそ24時間の周期の体内時計(サーカディアンリズム)というものが備わっていまして、その働きによって我々の生活は、朝起きて、昼間活動して、夜寝るという生活周期を刻んでいます。
しかしながら、その体内時計は一般的には24時間よりも少し長い周期となっているため、体内時計にしたがって生活をしていると、毎日少しずつ生活がずれてしまうんです。一方で体内時計は朝日を浴びるとリセットされる性質がありますので、それによって私達は毎朝同じ時間に起きて、朝日を浴びて体内時計がリセットされて、昼間活動して、夜寝るという生活周期を送っています。
赤ちゃんも、生後2ヶ月を過ぎたあたりから、サーカディアンリズムが出てくるようになるのですが、それを整えてあげると、寝かしつけをスムーズしやすくなるんです。
編集部:赤ちゃんの場合は、どうやってサーカディアンリズムを整えるのでしょうか?
服部:毎朝起きるときに、カーテンを開け、光を浴びといったシンプルなことが重要ですが、「まだ寝ているからそっとしておこう」となって、そのまま寝かせてしまうケースも多いようですね。お昼寝で調整と考えたくなるのですが、なかなか上手くいかなくて、悩まれている方も多いのではないでしょうか。
編集部:朝、光を浴びることが重要なのですね。
服部:そうです。よく「早く寝るようになってほしい」という話を聞きますが、起きるのが遅くて、お昼寝も夕方にずれがちだったりすると、そんなに早く寝てくれないですよね。なので、順番的には「早起き、早寝」の流れが重要で、朝体内時計をリセットするために光を浴びておくことが大切です。
編集部:ainenneだと、タイマーや明るさを設定しておけば、あとは自動的に起こしてくれるので、便利ですね!赤ちゃんの寝かしつけをサポートする機能についてもうかがえますか?
服部:1つ目は、「ホワイトノイズ」機能です。ホワイトノイズとは、まんべんなくいろんな周波数の音がミックスされたもので、「サー」といった感じの音のこと。なぜこれが睡眠に良いかと言うと、静かな中でドアが閉まる「ガチャ」といった音を、かき消してくれる役割があるからです。これをつけておけば、寝室のドアが閉まる音で赤ちゃんが起きてしまう、といったケースを減らすことができます。
2つ目は、赤ちゃんの泣き声から感情を分析する「泣き声解析アルゴリズム」。これは、世界150か国、30万人の赤ちゃんの声の分析データをもとに、AIが泣き声から、「お腹空いた」とか「眠い」といった赤ちゃんの状態を教えてくれるものです。
編集部:赤ちゃんが泣いている原因がわからなくて困る親は多いと思うので、それは便利な機能ですね!
服部:赤ちゃんの泣き声は難しく、「寝言泣き」と言われる大人で言う寝言のような泣きがあって、その時は赤ちゃんの睡眠が浅い状態なんですが、それがわからないと、わざわざ起こして授乳をしてしまうといったケースも多いようですね。
編集部:そういったこともあるのですね。確かに、泣いているのかどうかとか、泣いている原因がわかれば、赤ちゃんや親にとってもありがたいことですね。
服部:あとは、夜に浴びると睡眠に悪影響があると言われるブルーライトをカットした光の色の制御もできますので、それを使って絵本の読み聞かせをして頂いたり、明るさを調整して、夜中のおむつ替えの際にご利用頂いたりと、便利機能を満載しています。
編集部:痒いところに手が届く、アイテムになっているのですね!
育児のペインの解消するため、2年間かけて開発
編集部:ここからは、ainenneの開発の経緯について教えていただけますか?
服部:ainenneというコンセプトを立ち上げてから、販売に至るまでは、2年程掛かりました。 泣き声解析は以前からアプリでサービス提供していましたが、この開発も、同じくらいの期間をかけました。
編集部:ありがとうございます。どんな経緯でこれらのサービスを作ろうと思われたのでしょか?
服部:弊社では、育児にまつわる様々な研究を行っているのですが、育児中のママやパパに、どんな悩みがあるか聞いたところ「泣いている理由がわからない」というお声を多数いただいたんです。そこから、泣き声解析のプロジェクトは始まりました。
同じく、育児のペインとして寝かしつけにまつわる「子どもがなかなか寝てくれない」「自分の時間が取れない」といった悩みも多く、「ねんねのトレーニングのエッセンスをハードウェアに落とし込んだアイテムを作りたい」という経緯で始まったのが、ainenneの製作ですね。
編集部:ainenneを作る上で、工夫したことや大変だったことについても教えてください。
服部:工夫したのは、親しみやすいデザインづくりや、どれだけ明るい光で赤ちゃんの起床をサポート出来るかといったポイントです。製品化するときにはコロナ禍でしたので、半導体の調達に苦労しました。
編集部:2022年からainenneのレンタルを開始されていますが、こちらは何かきっかけのようなものがあったのでしょうか?
服部:ユーザーさんから「レンタルして欲しい!」というお声をたくさんいただいておりまして。オペレーションの面が整ったので、開始した流れになります。
編集部:ユーザーさんからは、どんな声が届いていますか?
服部:「赤ちゃんの寝付きがスムーズになった」という感想や「生活に余裕が持てるようになった」「無くてはならない存在」などといった、嬉しいお声をいただいていますね。
編集部:ainenneを導入することで、利用者の方の暮らしが良い方向に向かっているのがわかりますね。
服部:実際にainenneを利用すると、「赤ちゃんの睡眠リズムが整う」「育児ストレスの軽減する」「育児に対しての自己肯定感が上がる」といった結果が実証実験でも得られています。
包括的なサービスで、今後は更に便利に
編集部:ありがとうございます。ここからは、今後の目標や事業展開について教えていただけますでしょうか?
服部:大きく2つございます。1つ目は、育児に携わる人のペインを減らすサービスを作り、世の中に浸透させていくことです。もう一つは、弊社の既存のサービス間の連携をより良いものにして、包括的なサービスを提供していけたらと考えています。
編集部:既存のサービスというのは、BabyTech® Award Japan 2019で受賞した「パパっと育児」のことでしょうか?
服部:はい、そうです。「パパっと育児」は、育児記録を家族でシェアするアプリで、子どもが出来ることの変化や成長・発達記録もつけられたり、AIが過去のデータを分析して、「そろそろミルクの時間です」と教えてくれたりする他、写真で成長の思い出を残すこともできます。
他にも、子どもの生活サイクルがひと目で確認できたり、赤ちゃんの状態がひと目で分かるため、仕事に行っていたパパが「今日は大変だったんだね」とママに声をかけられるよう、家族のコミュニケーションを活発にしてくれるところも特徴ですね。
編集部:ありがとうございます。これまでお話いただいたサービスを通じて、服部さんが実現したい社会像がございましたら、教えていただけますか?
服部:もっと育児のハードルを下げたいと思いますし、自分ではしゃべれない赤ちゃんの事をより良くわかるようにして、子育てが楽しく、楽にできればと思っています。直近では男性の育休の話がよく上がっていますが、育休を取得する人が増えてきている中で、実際には育児をほとんどしない「取るだけ育休」というケースも多くみうけられるようです。テクノロジーを活用して、もっと楽しく、楽に育児参加できるようにすれば、こういった状況を変えられるのではと考えています。
編集部:なるほど。どうもありがとうございました!
「ainenne」 公式ホームページ
https://ainenne.com/
(終わり)
取材・執筆:立岡美佐子(たておか・みさこ)
IT企業から、編集・出版業界に転職。現在は、フリーランスの編集者兼ライターとして旅やグルメ、ソーシャル系など幅広い分野で編集や執筆活動を行っております。
大事にしているのは「価値のある情報を、読者に面白く、わかりやすく伝えること」。
これまで『TRANSIT』『FRaU』『メトロミニッツ』など多数の雑誌制作に携わってきました。
ベビーテックは、「子どもの頃にこんなサービスや商品があれば!」と思うものとの出会いばかりで、毎回刺激をもらっています。趣味は、旅行と料理と合気道。