BTA2024受賞商品発表

その絵本の中で子どもたちが主役になれる!「パーソナライズ絵本“BÜKI(ブーキー)”」

本サービスのポイント
  • 子どもに合わせてさまざまにカスタマイズした絵本をネット上で制作し、購入できる
  • 完成した絵本は子どもたちが主人公として活躍する、世界でたった一つのもの
  • 注文から配達まで全自動で行う体制を構築することにより、本サービスは実現した

今回ご紹介する「パーソナライズ絵本“BÜKI(ブーキー)”」は、子どもたちのために世界でたった一つのオリジナル絵本を作成するサービス。たとえば誕生日をお祝いする場合、子どもの誕生日を入力することで星座にまつわる動物たちや、生まれた日の夜空が描かれた素敵な絵本をオンラインで注文することができます。そんな同サービスは「BabyTech® Award Japan 2021記念と記録部門」で大賞を受賞しました。そこでBabyTech.jp編集部は「BÜKI(ブーキー)」を開発したSTUDIO BUKI株式会社
CEOのコズロブふくみさん(以下、敬称略)に取材を行い、同サービスの概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)

STUDIO BUKI株式会社 CEO
コズロブふくみ様

ネット上でリアルタイムに、その子のためにカスタマイズされた絵本が生まれる!

編集部:本日はお忙しいところ、大変ありがとうございます。さっそくですが、「BÜKI(ブーキー)」の概要と特徴について伺えますか?

コズロブ:「BÜKI(ブーキー)」は、子どもたちが物語の主人公になれるパーソナライズ絵本です。お子様の名前や誕生日を弊社のウェブサイトに入力すれば、お子様が物語の主人公になった絵本ができあがります。さらにウェブサイトで試し読みしながら、各ページにメッセージや写真を入れるなど、さまざまなカスタマイズも可能です。そのようにして世界に1冊の絵本を作り、ご購入いただけるサービスになっています。

BÜKI(ブーキー)は子どもたちが物語の主人公になれる絵本

編集部:作った絵本は、そのまま全ページ試し読みができるのですね!

コズロブ:メッセージを変えるなどのカスタマイズもその場で反映されますから、ご購入いただく前に、すべてのページの完成バージョンをご覧いただくことができます。既存のこういったオリジナル絵本を作成するサービスはいろいろあったと思いますが、その多くは子どもたちの名前が主人公の名前やタイトルなど、数カ所に入るレベルの絵本だったと思います。BÜKI(ブーキー)は誕生日や出生時間、出生地、家族構成など、お子様のさまざまなリアルな情報が反映されるので、絵本への没入感が大きく違います。

編集部:試しにBÜKI(ブーキー)を作ってみようとしたとき、いろいろな情報を入力する項目があったのは、その情報を絵本に反映するためだったのですね。

コズロブ:たとえば、お子様の誕生日が8月26日だったとします。誕生日をテーマにした絵本の場合、生まれた季節が夏なので背景が夏のイラストになります。そして誕生日の前日からお話が始まって、いろいろなキャラクターがケーキを焼いたり、誕生日パーティーの招待状を配ったりするのですが、このキャラクターもお子様の好みに合わせて「恐竜」「動物」などに変えることができます。他にもお誕生日から星座を割り出し、その星座のキャラクターに導かれて……という絵本もあります。特に好評なカスタマイズとして、ある絵本の最後に登場人物たちが星空を眺めるシーンがあります。その星空はお子様の誕生日と誕生時間、誕生場所から見えた実際の星空を、オープンソースデータから再現しています。ほかにも生まれた時間帯に合わせて、お子様が生まれた時の情景を描くイラストが夜に変わったり、朝の情景に変わる絵本もあります。

編集部:すごいですね! 自分のためだけに作られた絵本、というオリジナル感が段違いだと思います。

子どもたちの情報を入力することでそれが絵本に反映される

コズロブ:それから一般的に家族をテーマにした絵本では、だいたいの作品にパパとママが登場すると思います。しかし、BÜKI(ブーキー)では「シングルパパ」、「シングルママ」、「パパ&パパ」、「ママ&ママ」という家族構成も選べます。ですから、たとえばシングルマザーのご家庭で育つお子様は従来の絵本を読むと、自分の家とはちょっと違うな……という感覚になったかもしれませんが、BÜKI(ブーキー)ではそこまでカスタマイズできるようになっています。

編集部:社会的に多数派ではない家族構成も反映できるのですね。その発想はどこから生まれたのですか?

コズロブ:実際にシングルマザーの家庭で育った友人と絵本の話をしていたときに、「こういう家族をテーマにした絵本って、だいたいパパとママが両方そろってるよね」と言われたことがあります。その言葉がずっと心に引っかかっていました。そこから私たちが作る1冊ずつ印刷している絵本の価値、書店に並ぶ数千冊とか数万冊を一気に印刷する絵本ではできない価値は、そういうマイナーな思いに寄り添える力ではないか、と考えたのです。これまでマジョリティーのために作られていた絵本を1人1人のために作るのは、単にカスタマイズするためだけでなく、そういう主流派でない人たちに寄り添うためでもあるのではないか、と考えたのが発想の背景にあります。

国境を越えて繋がる開発チームが、まったく新しい絵本作りの仕組みを構築

編集部:BÜKI(ブーキー)を開発された経緯を伺えますか?

コズロブ:販売を開始したのは2020年の12月末になります。その前に1年間ぐらいの企画・開発期間がありました。私は子どもの頃、絵本を読むたびにストーリーに入り込んで主人公となり、ドラゴンを倒したり、大きな豆の木を登っていったり、そんな空想をするのがとても好きでした。しかし、成長するに従って現実の自分はそんなスーパーパワーを使えるわけでもなく、親が貴族なわけでもなく、動物と話せるわけでもない。そういう絵本の主人公になれる人は特別な存在であって、私は普通の人だからなれないんだ……と思った記憶がずっと心のどこかに残っていたのです。

その記憶を鮮明に思い出したのは、2018年に息子を出産してからでした。息子を見ていると、彼はまだ空想と現実の境目が全然なく、おそらくなんでもできると思っています。きっと自分は空だって飛べると思っているでしょう。そんな息子に、本当の自分は空を飛べない、そういう特別な存在じゃない、なんて思ってほしくない……と、昔の自分の記憶が蘇ってきたのです。そのとき「自分が主人公になれる絵本」というものを作れたらすごく素敵だな、と思いつきました。そのアイデアを夫に話し、さらに一緒に何かやろうよと言っていた夫の友人、海外に住む彼の幼馴染なども乗り気になってくれました。そこから1年ほどの期間を経て、2020年末に1冊目を発売したという経緯になります。

編集部:ありがとうございます。海外ということは、オンラインで開発を進めたという感じですか?

コズロブ:そうですね。弊社は9名のチームでやっているのですが、日本人は私ともう1人だけで、そのほかは外国籍になります。さらに9名のうち6名が海外在住です。

編集部:ウェブ上で全部注文してできるわけですから、それはもう国境は関係ないわけですね。

コズロブ:まったく問題ないですね。弊社の強みはこだわり抜いた絵本にテクノロジーを掛け合わせた点だと思っています。お客様が全部オンライン上で試し読みできるというのはもちろんですが、お客様が購入されたあとに実際に印刷・製本に入る際も、お客様それぞれで1冊1冊異なる内容の印刷ファイルが弊社のシステム上で自動的に作られます。それがまた自動的に印刷会社に転送され、印刷会社の工場で印刷・製本され、梱包されてお手元に届くというプラットフォームができています。ですから、すべてオーダーメイドであるけれども、製造工程はすべて自動化されているというのが大きな強みになっています。これは開発チームの力ですね。

編集部:まさにベビーテックという感じですね……!

コズロブ:本当にテックですね。日本で絵本はテックから遠いイメージがあると思いますが、弊社はテックならではの絵本を作っています。よく、テックは現代の魔法だな、と個人的に思っています。

BÜKI(ブーキー)で作ることができる絵本の一例

文字通り「世界でたった一つの本」を手に入れた人たちから寄せられる感動の声

編集部:BÜKI(ブーキー)を購入されたお子さんや、保護者の方の感想はいかがですか?

コズロブ:先日も次のような感想文をいただき、本当に感動しました。

「購入をさせていただきました。私も大昔にこういった本をいただいたことがあって、自分が主人公になれるという不思議さにワクワクし、35年ほど経った今でも大事に取っています。『BÜKI』さんの絵本のいいところは、あくまで子どもを主役に作られているところです。今回いとこに子どもが生まれたこともあり、『BÜKI』さんは私の探していたものがまさにこれだったと大変感動しました」

当初に思っていたよりも、いい感想をたくさんいただけているな……というのが正直なところです。本当にうれしいです。

編集部:ありがとうございます。他にはどんな感想がありますか?

コズロブ:Twitter上でシェアされていた感想ですが、ママ&ママのカップルの方が弊社の商品を購入してくださり、ママ&ママを出せる本ってこれまでなかったよね……とコメントされていました。ああ、私たちが届けたいと思っていた人たちにもちゃんと届いたのだな!という気持ちになりましたね。また、パパ・ママからのメッセージを絵本の最初のページに入力することができるのですが、その点を評価していただいて、「普段子どもに伝えられない言葉を絵本に残すことができて大変感動しました」という言葉もいただきました。

編集部:ちなみに、パパの感想というのは何かありますか?

コズロブ:おそらく、従来の絵本よりもパパが買ってくれている割合は高いと思います。正確な割合は分かりませんが、おそらく購入されているお客様の半分くらいは男性の方だと思います。このような割合になっている理由は、弊社の販売ツールがネットのみだからというところが一番大きいと思います。書店で絵本を選ぶのはまだまだママ、女性の方が多い印象ですが、ネット上で弊社の製品を知ってくださって、ご購入いただける……それが多くのパパに届いている理由だと考えています。

数々の名作の世界に入り込み、冒険するという夢が実現するかも……!

編集部:最後に今後の「BÜKI」の展開についてお伺いしてよろしいでしょうか。

コズロブ:今後はまず、いろいろな種類の絵本を増やしていきたいと思っています。たとえば学習系の絵本などですね。ひらがなを学ぶために、お子様の名前に使われているひらがながストーリーを展開していったりとか。

もちろん、「BÜKI」ならではのパーソラナイズ絵本の種類も増やしていきます。それと同時に注力しているのが、他社様とのコラボレーションです。具体的には、既存の出版社さんがお持ちの絵本の中で、子どもが主役になれる絵本を作りたいと考えています。たとえば『エルマーとりゅう』や『ぐりとぐら』のような名作とのコラボで『太郎くんとりゅう』とか『ぐりとぐらと花子ちゃん』というように、有名なキャラクターと一緒に子どもが絵本の中に登場する本ができたら、どんなに子どもたちが喜ぶだろうと想像しています。というわけで、いくつかの出版社様に弊社のプラットフォームを使って、読み手となる子どもが絵本の中に登場するプロジェクトを呼びかけているところです。

編集部:それは楽しみですね! 『ぐりとぐら』のカステラを一緒に食べられたら最高です!

コズロブ:私もいろいろな絵本の中に自分が入りたいな……と思っていたので、ぜひ実現させたいと思います。

取材を終えて

かなり昔から名前や誕生日の数字だけを入れて、「世界に一つしかないオリジナル絵本!」という商品はありました。しかし、そんな見かけだけのカスタマイズには魅力を感じないな……と思っていましたが、「BÜKI(ブーキー)」の作品には驚かされました。普通はこれほどカスタマイズすると、かなり印刷数を増やさなければ採算が取れません。その難題をインターネットとテクノロジーの力を使って解決し、リーズナブルな価格を実現させたところに「BÜKI(ブーキー)」の素晴らしさがあると思います。ぜひ、今度の子どもたちの誕生日にプレゼントしてみてはいかがでしょうか?

「BÜKI(ブーキー)」 公式ホームページ
https://hellobuki.com/

(取材・執筆:関和幸)