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ファーストアセント、国立成育医療研究センターとの共同研究の成果が、米国医学雑誌『The Journal of Pediatrics』でオンライン公開。16,627人分の育児ビッグデータから子どもの発達を可視化

編集部より

日本のベビーテックサービス、デバイスをリードしているファーストアセントさんが、同社のパパっと育児@赤ちゃん手帳アプリを通じて縦断的に記録された赤ちゃんの発達マイルスト―ンを厚労省やWHOのデータとも照らし合わせ概ね一致していることを確認。また別のスポットライトの当て方をして、発達の達成時期の特性等も調査し新たな知見を得ています。
また、現在広く行われている節目月齢での乳幼児健診を組み合わせることで、発達を促すためのサポートが必要なお子さんを、より早期に、より確実に専門家につなげられるようになる可能性があります。
リアルタイムに日々の赤ちゃんの発達を記録したデータが用いられた世界初の研究ということで、非常に注目されます。

それでは、詳細をプレスリリースから見ていきましょう。

— 下記はプレスリリースからの内容です —

冬生まれの子は「おすわり」「ひとり歩き」などの運動発達が早い。16,627人分の育児ビッグデータから子どもの発達を見える化

【概要】

株式会社ファーストアセント(東京都中央区、代表取締役社長:服部 伴之)は国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆)の分子内分泌研究部 松原 圭子 上級研究員、鳴海 覚志 室長と共同で子どもの発達に着目したビッグデータ研究を行いました。延べ16,627人分のデータを調べたところ、養育者が日々の育児の中で記録した発達データの分布が現在広く用いられている基準データとおおむね一致することが確認されました。また、詳しい統計解析で、一部の項目において達成時期の分布が性別や季節で異なることを示しました。これらの研究成果は、米国医学雑誌『The Journal of Pediatrics』でオンライン公開されました。

【プレスリリースのポイント】
  • 子どもが「歩く」「話す」といった様々な能力を獲得する過程を発達と呼びます。発達に関してこれまで多くの研究が行われてきましたが、いずれも「生後4か月」などの決まったタイミングでデータが集められていました。本研究は、養育者が日々の育児の中でリアルタイムに記録した発達データを用いた世界初の研究です。
  • 延べ16,627人分の発達データが、現在知られる基準データ(厚労省調査、米国での研究など)とおおむね一致することが確認されました。また、詳しい統計解析の結果、「冬生まれの子の方は『おすわり』『ひとり歩き』など運動発達が早い」「ゆっくりと言語発達する子は男の子で多い」などの知見が得られました。
  • 発達データのリアルタイムな「見える化」と、現在広く行われている節目月齢での乳幼児健診を組み合わせることで、発達を促すためのサポートが必要なお子さんを、より早期に、より確実に専門家につなげられるようになる可能性があります。
【背景・目的】

ヒトは様々な生物の中でも最も未熟な状態で生まれてくるとされ、実際、新生児は思考、感情表現、二足歩行、器用な手先動作などヒト特有の能力が未発達な状態で生まれてきます。しかし、出生後には驚異的スピードで次々と新しい能力を獲得し、1歳半頃までには言語でのコミュニケーション、二足歩行、簡単な道具の使用などヒト特有の能力が備わるようになります。小児科学ではこのような能力獲得過程を「発達」と呼び、身長や体重など数値で表現可能な変化を意味する「成長」と区別しています。

発達の順調さを判断する目安として「発達マイルストーン」と呼ばれる指標が使われており「4か月までにあやすと笑うようになる」「8か月までに一人で座れるようになる」といった項目があります。現在、発達マイルストーンの基準データとして世界保健機構(WHO)の調査や厚労省の定期調査(乳幼児身体発育調査、直近では2010年に実施)のデータが使われています。これらは訪問員調査もしくは養育者へのアンケートにもとづいており、調査者が事前に定めた一定のタイミングでデータが集められていました。

近年、スマートフォンやタブレットが普及し、育児をサポートする機能を持つアプリが開発されてきました。株式会社ファーストアセントが運営する『パパっと育児@赤ちゃん手帳』もそのようなアプリのひとつです。国立成育医療研究センターと株式会社ファーストアセントは、2017年から延べ70万人、5億件の育児ビッグデータを解析してきました。今回、発達をテーマとした研究成果をとりまとめました。

図1 本研究と厚労省調査(乳幼児身体発育調査、2010年)のデータ収集方法の違い
【方法と結果】

『パパっと育児@赤ちゃん手帳』には「はじめて」という入力項目があり「人見知り」「寝返り」などの発達マイルストーンが初めて達成された日付を記録できます(図1)。2014~2019年の期間に『パパっと育児@赤ちゃん手帳』で記録された発達記録のうち、2歳頃までに達成される20項目*について延べ16,627人分のデータを分析し、現在広く用いられている基準データ(厚労省「乳幼児身体発育調査」)と比較しました。その結果、あやし笑いを除く19項目については、基準データとおおむね一致した分布をとることがわかりました(図2)。

*20項目の内容:あやし笑い、人見知り、「バイバイ」をまねする、動くものを目で追う、ガラガラを握る、おもちゃに手を伸ばす、ものを逆の手に持ちかえる、小さなものを指でつまむ、「あー」「うー」などの声を出す、声を出して笑う、反復喃語、ママと呼ぶ、ママ以外の言葉をしゃべる、寝返り、おすわり、はいはい、つかまり立ち、つたい歩き、ひとり立ち、ひとり歩き。

図2 本研究と厚労省調査(乳幼児身体発育調査、2010年)のデータの比較。「寝返り」「つかまり立ち」それぞれにつき達成した子どもの割合を生後週数別に集計したヒストグラム(黄色)。2つの研究を比較するため25、50、90パーセンタイル値を並べて表示した。

次に、発達マイルストーンの達成時期に関連する子どもの特性を分析しました。具体的には性別、生まれた時の季節(春、夏、秋、冬)、栄養方法(母乳中心、混合栄養、粉ミルク中心)の3つの特性に着目し、統計手法を用いた詳しい解析を行いました。その結果、身体的な基本動作の粗大運動発達に分類される7項目(「寝返り」「おすわり」「はいはい」「つかまり立ち」「つたい歩き」「ひとり立ち」「ひとり歩き」)のデータ分布が生まれた時の季節により違っており、どの項目も夏生まれの子よりも冬生まれの子の方が早く達成することが分かりました(図3、左側)。また、男女差に関する解析では、言語発達に関連したマイルストーンでデータの分布に違いがあり、言語発達がゆっくりとした子は男の子により多いことが分かりました(図3、右側)。

図3 発達マイルストーン達成時期と子どもの特性の分析。(左)「はいはい」の達成時期の冬生まれの子と夏生まれの子での比較。冬生まれの子は全体的に達成が早かった。(右)「『ママ』と呼ぶ」の達成時期の男女での比較。達成がゆっくりな子は男の子により多く見られた。
【今後の展望】
  • 本研究は、毎日の子育ての場で目の当たりにする子どもたちの発達を「見える化」した初めての研究です。多くの発達マイルストーンにおいて養育者がつけた記録は現行の基準データとおおむね一致していたことは、ビッグデータを活用した発達研究を推進してゆく上で重要な基礎的知見です。
  • 現在、発達の遅れを検出する唯一のスクリーニング機会は節目月齢(4か月、10か月、1歳半など)での乳幼児健診です。発達の「見える化」は、発達の遅れのリスクのあるお子さんをより早期に、より確実にみつけることで、乳幼児健診を補助できる可能性があります。
  • 近日中に『パパっと育児@赤ちゃん手帳』において、養育者が子どもの発達状態をリアルタイムに把握できる「見える化」を実装する予定です。日々ダイナミックに起きる発達の過程をより把握しやすくなることが、子どもたちへの愛着をより一層深める機会になればと考えています。
【発表論文情報】

英文タイトル:『Achievement of Developmental Milestones Recorded in Real Time: A Mobile App-Based Study』
和文タイトル:『発達マイルストーン達成のリアルタイム記録:スマートフォンアプリを用いた研究』

著者名:松原 圭子1)、服部 伴之2)、鳴海 覚志1)
1) 国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部
2) 株式会社ファーストアセント

掲載誌:The Journal of Pediatrics
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jpeds.2022.02.018

【特記事項】

本研究は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトの支援を受けて行われました。

【本リリースに関する問い合わせ先】
株式会社ファーストアセント
E-mail: info@first-ascent.jp