- 保育園や幼稚園、小学校などで配布される「プリント」を一括管理するスマホアプリ
- インスタグラムのように、「撮影してタグ付けするだけ」のわかりやすい操作性
- かさばるプリントを会社や通勤中に確認でき、パパとママのスマホで情報共有も可能
これは配布されたプリントをスマホで撮影し、そこに自由にタグ付けして整理が可能というアプリ。プリントを持ち歩かなくても外出先で内容をチェックでき、パパとママで撮影したプリントの情報も共有できます。さらに利用者の声によれば、配られたプリントの整理だけでなく、育児に関するさまざまな情報を撮影し、整理・共有に活用されているとのこと。BabyTech.jp編集部は「ポスリー」を開発した株式会社cosoral代表取締役の齋藤明日香さん(以下、敬称略)に取材を行い、アプリの概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。
(お話を伺ったのは)
株式会社cosoral 代表取締役
齋藤明日香 さん
「アナログな情報」を、ITの力でスムーズに整理・共有してくれる
編集部:さっそくですが、「ポスリー」がどのようなアプリなのか教えていただけますか?
齋藤:保育園や学校、習い事などでもらうさまざまなプリント類を、スマホカメラで撮影し、整理・共有できるアプリです。単にプリントの画像をファイル名で整理するのではなく、それぞれのプリントのタイトル部分をカットして、ビジュアルな「見出し」にできるので、直感的に目的のプリントを見つけられます。
また、プリントに関する「キーワード」を、保存した画像ファイルに「タグ」としてつけ、そのタグで検索することもできます。「パパ・ママ・子どもたち」ごとに色の変更・顔写真添付も可能な「フォルダ」に分けて整理することも可能です。さらにパパとママの間で、ポスリー内の情報共有もできます。
編集部:かさばるプリントを保管する手間や紛失する心配がなくなり、いちいち紙を持ち歩かなくても、すぐにスマホで見られるということですね。かつ、パパとママでそのプリント(の情報)を共有できる、と。
齋藤:その通りです。ポスリーと同じプリントを管理するアプリはいくつかありますが、それらは使い勝手が良くても「有料」だったり、「無料」でもビジネス向けアプリを「育児用」に流用したために、どうも使い勝手が悪いなどの欠点がありました。そこで「ポスリー」は「無料」かつ「育児用」に特化し、子育て中のパパ・ママが使いやすいアプリ、ということをコンセプトにしています。2018年3月末のリリースから、2019年4月の段階で、累計10万ダウンロードを達成しました。
働くパパ・ママにとって「プリント」は、とても扱いにくい「メディア」
編集部:ポスリーを使っている方たちが感じる、メリットを教えていただけますか?
齋藤:利用者の方からいただく感想として、「外出先でプリントを見られるのが、とても助かる」という声は多いですね。働いているママは忙しく、家ではゆっくりプリントを読む時間がありません。そこで、プリントをポスリーで撮影だけして、通勤電車や会社の昼休みに内容をチェックする……という使い方をしていただいています。それから、外で働いている・いないに関わらずいただく感想は、保育園や学校の献立表のプリントをポスリーに入れておき、それをスーパーで買い物をするときにチェックしています、というものです。今日の給食と夕飯が同じものだったらかわいそうというだけでなく、給食の献立を夕飯のメニューの参考にする、という方もいらっしゃいます。
編集部: スマホは常に持ち歩くものだから、そのようなことができるわけですね。プリントだと、こうはいきません。
齋藤: プリントをパパとママが共有できる点も、評価をいただいています。保育園で見かけたのですが、ある子どもが提出物を忘れて、その子のパパが、「その連絡が書かれたプリントは、妻が見るようにリビングのテーブルに置いておきました」と先生に言っておられたのですが、ポスリーを使えば、そういう連絡ミスも起きにくくなります。
「プッシュ通知」という機能もよく使われています。保育園や学校は提出物が多く、子どもが2人、3人と増えるとまったく覚えきれません。そこでポスリーに各種の「提出日」を設定しておくと、前日や当日にスマホで通知してくれます。これは情報共有をしている、パパとママの両方に伝えられます。
これまでのパパ・ママは「手帳」や「カレンダー」を使って、このような情報を管理していたと思いますが、普通の手帳やカレンダーに、プリントの内容すべてを書き込めるスペースはありません。すると結局、「プリントを見ないと詳細がわからない」という問題が生じます。そういう問題を解決する面からも、ポスリーは「プリントの画像」を情報管理の軸にしました。
編集部: 最近、一部の保育園では「おたより・連絡」の一部を電子化するようになりましたが、それらには対応できるのでしょうか?
齋藤: 私の子どもが通っている保育園でも、一部の連絡がメールになりました。そこで必要なメールは、スマホでスクリーンショットを撮影し、ポスリーに入れています。自治体のホームページの育児関連の情報もスクリーンショットで撮影し、ポスリーで保存しています。またウェブ上にあるレジャー施設の営業日などの細かい情報も、スクリーンショットで撮影し、ポスリーで整理しています。「覚えておきたいことで画像になるもの」は、ほとんどポスリーに集約できますね。
キャリア(仕事)とプライベート(育児)の組み合わせから生まれたアイデア
編集部: 「ポスリー」というアプリを開発されたきっかけは、なんだったのでしょうか?
齋藤: もともと私は、「ポスリー」を開発した株式会社cosoralの親会社である株式会社VOYAGE GROUPで、ウェブディレクター・アプリディレクターというキャリアを10年ほど積んでいました。また、その間に子どもが3人生まれ、3回育休を取っています。
編集部:アプリ開発のご経験が、すでにあったわけですね。
齋藤:はい。そんな風に仕事をやってきて、転職を考えたり、他の仕事にもチャレンジしてみたいという気持ちになったのが、ちょうど3回目の育休から復帰した2017年の4月でした。この時期は、一番上の子どもが小学1年生になったタイミングでもあるのですが、小学校に入ったとたん、学校から配布されるプリントの量が激増したのです。
それらのプリント類には、「いついつまでに新聞紙を持ってきなさい」「検尿があります」「写真の集金を行います」といった連絡事項が書かれており、かつ、その下にいる2人の子どもにも保育園からプリントで連絡が来ますから、把握しなければならない情報は膨大な量になってしまいました。これはもう、働くママ、パパにとって処理しきれないぞ……と思ったわけです。
そこで、私のこれまでのキャリアと、「新しいことに挑戦したい」という気持ち、また3人の子どもの育児経験が、「子育て×IT」という発想に繋がり、「ポスリー」というアプリ開発のきっかけになりました。実は、ちょうどこのタイミングで株式会社VOYAGE GROUPが新規事業プランのアイデアコンテストを行い、「ポスリー」のアイデアを応募したところ事業化されることが決まり、子会社「cosoral」を設立したのが2018年2月になります。
「ポスリー」をリリースしたのは、2018年3月26日です。4月の入園・入学・進級時期を狙いたかったので、アプリの開発は私を含めた5人で、2ヶ月という短期間で行いました。4月までのリリースにこだわったのは、このタイミングで多くのママたちが「大量のプリント管理」という問題を意識すると考えたからです。
編集部: 短期間での開発は大変だったのではありませんか?
齋藤: そうですね……だから最初のリリースでは、アプリをなるべくシンプルに、必要最小限の機能に絞りました。また、私は時短勤務中だったので、リリース直前は夫に子どもたちのお迎えを代わってもらったりしました。夫も同じグループ会社に勤務しているので、そのあたりは助けられましたね。
「家族の情報共有」が、現代の子育て家庭における最大のニーズだった
編集部: 最初はシンプルな機能のみだった、ということでしたが、その後に追加された機能はどのようなものですか?
齋藤: 2018年4月にリリースしたあと、利用者の皆さまから、さまざまなご要望をいただきました。一番多かったのが、「アプリの情報を家族共有できる機能が欲しい」というものでした。もともとはママ向けのアプリとして作ったのですが、やはりパパとも育児に関する情報を共有するのが、最近のご家庭では必須だったのです。
たとえば、サッカーなど習い事の送迎をパパに任せているご家庭だと、その関係の連絡プリントをもらってくるのはパパになるわけです。すると、大切な連絡事項について、「プリントはリビングに置いたけど」「えっ、見てないよ!」というように、パパとママの間で「行き違い」が発生してしまいかねません。また、保育園や小学校のイベントに参加するため、夫婦で有給休暇を合わせて取りたいというときも、常に持ち歩いているスマホにプリントの情報が登録されていれば、それぞれが会社ですぐに調整できるでしょう。そんなわけで非常に要望の声は強かったのですが、なかなか実装が難しく、バージョンアップできたのは2018年9月でした。また、利用者の皆さまだけでなく、関係会社内の子育てパパ・ママたちにもアプリを使ってもらい、細かくアプリの使いやすさの改善に取り組んでいます。
編集部: 改良点の例を教えていただけますか?
齋藤: たとえば、トップページに「使い方」「家族共有」のボタンを追加したことです。最初は「ホーム」「撮影」「その他」の3つしかなかったのですが、「使い方がわからない」「家族共有の方法がわからない」という声が多かったので。
利用者のアイデアで、どんどん広がる「ポスリー」の使い方
編集部: 利用者の方々は、実際どのように使われているのでしょう?
齋藤:これは私の場合ですが、子どもたち関連のプリントは、それぞれの顔写真と色で分けたフォルダに整理してあります。また、「PTAの連絡プリント」など、子どもに関係があるともないとも言えないような情報は、「ママ」というフォルダを作って管理しています。それから「ショッピング」というフォルダを作って、「ポイントを貯められるバーコード」の画像データを保存しています。通常であれば、そのショップのウェブページをその都度開く必要があるのですが、その手間がなくなり少し楽になりました。「パパ」というフォルダには、夫が送迎を担当している子どものサッカー教室関係の情報が入っています。
それから、これはアプリ利用者の方から教えていただいた使い方ですが、ポスリーの中に「病院の診察券」の画像データを入れています。最近の病院は、事前にネットで「診察券番号」を使って予約しなければならないところが増えているのですが、こうして診察券の画像を保存しておけば、会社の昼休みや通勤時間を使って予約ができます。「あっ、家に診察券を忘れてきちゃった……」ということがなくなるわけです。そもそも病院の診察券は内科、耳鼻科、皮膚科、眼科……と大量にあり、それをいつも持ち歩くのは大変ですから、写真に撮ってポスリーに入れておくのは非常に便利です。ポスリーのデータは家族共有できますから、パパに病院の予約をお願いすることもできるでしょう。
編集部:普通に診察券をスマホで撮影しただけでは、目的の画像を探すのも、家族で共有するのも大変ですから、これはポスリーならではの使い方ですね。
齋藤:また、町内会や近所の神社などで行われるイベントのポスターを、街中の掲示板で見かけることがあると思うのですが、このような情報は紙ベースだけで告知され、ウェブに載っていないことがあります。そんな「ここにしか掲示されていない情報」も、スマホで撮影してポスリーに入れておけば、「今度の週末、ここに行ってみない?」と家族で話し合うことが簡単にできます。私の家では、ポスリーに「地域のイベント」というフォルダーを作って、このような情報を保管しています。
もう一つ、利用者の方から伺って面白かった使い方としては、子どもの描いた絵や工作などをスマホで撮影して、ポスリーに保存しておくというものです。そういった絵や工作を残しておくと、どんどん家が散らかってしまいますから、現物は申し訳ないですが捨てさせてもらって、その代わりにきちんとポスリーで保存しておく。コンクールなどに出したような大作は別として、「今日のお絵かき」のようなものは、ポスリーに入れておく、ということです。親としては、ちょっとした絵であっても、「初めて○○を描いた絵」というものは残しておきたいものですし、後になってポスリーに残った絵をスクロールしていくと、とても子どもの成長を感じることができるそうです。「あ、最初は線だけだったのに、この頃から『顔』をかけるようになった!」といった新鮮な驚きがあった、と利用者の方に教えていただきました。
「ポスリー」は、「ママのための秘書」を目指す
編集部: ポスリーの今後の展開について、伺えますか?
齋藤: まずは利用者の方たちの声を聞きながら、さらにポスリーというアプリを改良していこうと考えています。今後、保育園における「アプリ」や「メール利用」といったIT化は、ますます進むと思います。すると「さまざまなアプリ」と「アナログなプリント」が混在していく状況になりますから、他アプリともデータ連携をしていきたいと考えています。保育園や小学校、習い事で使われるさまざまなアプリからの情報を、ポスリーで集約して見ることができる、というようなイメージです。
そもそも「ポスリー」というアプリの名前は、「郵便ポスト」と「セクレタリー(秘書)」の組み合わせです。ママのところに送られる連絡を受け取る「ポスト」であり、ママの秘書である、ということです。つまりポスリーは、さまざまなところから情報を受け取り、整理し、必要なときに教えてくれる秘書を目指しているわけです。それこそ、文字を自動解析して「タイトル」や「タグ」をつけてくれたり、適切なタイミングで「通知」を送ってくれたり、スマートスピーカーと連携して、「今日は○○の提出日です」と音声で教えてくれるような未来もありえるでしょう。私は昔から、忙しくて、考えるべきことがたくさんある「ママ」にこそ、「秘書」が付くべきだと考えています。
<取材を終えて>
「画像をフォルダ別に整理できる」「画像にタグをつけられる」という2つのポイントにより、ポスリーを活用すれば、子育てに関連する情報をどんどんスマホに集約できそうな可能性を感じました。ちなみに齋藤さんによれば、開発前の聞き取り調査により、最近のママにはインスタグラムやツイッターなどの「写真を撮る+タグを付ける」タイプのスマホアプリが、使用頻度の高いアプリだったことから、ポスリーのデザインや操作性については、かなりインスタグラムを意識されたそうです。ポスリーは「ママの優秀な秘書を目指して進化する」という今後の構想も合わせて、ますます普及しそうなアプリだと感じました。
ポスリー 公式ホームページ
https://info.posly.jp/