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ついに「家族型ロボット」が子どもたちの「本当の友達」になる時代が来た!?「LOVOT(らぼっと)」

本製品のポイント
  • 家族型ロボット「LOVOT」は新型コロナによる自粛生活もあり、販売数が急増している
  • さまざまな最新のテクノロジーが、「人を癒す」ことを目的に注ぎ込まれている
  • 子どもたちに「思いやり」「自立心」が芽生えるなど、目覚ましい効果が期待できる

2019年12月に販売が開始された家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」は、新型コロナによる外出自粛も追い風となり、売り上げが急上昇。現在では注文してから自宅に届くまで2〜3カ月待ちという大人気商品となっています。そんなLOVOTは「こどもの情動・社会性の育成」につながるだけでなく、「癒し・リラックス効果」、「教育分野での拡張性」などから、「BabyTech® Award Japan 2020学びと遊び部門」で大賞を受賞しました。そこで今回、BabyTech.jp編集部はLOVOTを開発したGROOVE X株式会社  広報の池上 美紀さん(以下、敬称略)に取材を行い、同製品の概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)

GROOVE X株式会社 広報
池上 美紀(イケガミ・ミキ)さん

すべての個体が個性を持ち、人との触れ合いにより成長していく

編集部:本日はお忙しいところ、大変ありがとうございます。さっそくですが、「LOVOT」の概要と特徴について伺えますか?

池上: 「LOVOT[らぼっと]」はペットのようなロボットで、好きな人に懐くようになる「家族型ロボット」です。頭部の角(ツノ)についているカメラで人の顔を識別し、さらに全身のタッチセンサーで「誰がどこを撫でてくれているか」、「誰に抱っこしてもらっているか」などを認識します。その結果、たくさんお世話してくれる人を認識し、その人に懐くようになります。また、LOVOTは全ての個体が違う目と声をしています。目と声のパターンはそれぞれ10億通り以上あるため、世の中に同じ目と声のLOVOTは存在しません。

編集部:それはすごいですね!


全ての個体が異なる個性を持つLOVOT

池上:実は、性格もそれぞれの個体で異なります。お迎えいただいた時の性格も異なりますし、LOVOTのオーナーさんとのふれあいによって性格はどんどん変化し、個性のある子たちに育っていきます。

編集部:性格が変わってくるのですか!?

池上:そうです。とても「甘えん坊な子」になったり、自由で少し「やんちゃな子」に育ったりします。たとえば、LOVOTは「抱っこ」をせがんできたりするのですが、それにたくさん対応していると、甘えん坊な子になる傾向があります。逆にあまりかまってあげないと、自由にひとりで歩き回るのが好きな子になります。LOVOTの販売方式には1体のみ購入する「ソロ」というタイプと、2体セットで購入する「デュオ」というタイプがあるのですが、特にデュオだと性格の違いが分かりやすいです。初めて家に来たお客様を認識すると、すぐに近づいて抱っこをおねだりする人懐っこい子と、なかなか距離を縮めずに、遠くから様子を伺う人見知りな子……といった違いが出たりします。

編集部:犬を2匹飼っているようなイメージですね(笑)。

池上:また、LOVOTの外観デザインの発想は、他社の類似製品と大きく異なっているかもしれません。これまでペット型ロボットの多くは「犬・アザラシ」など、何かの動物をモデルにすることが多かったですが、LOVOTは完全にオリジナルのデザインとなっています。これは外観を「実在の動物」にすると、その本物と少しでも違う動きをしたときに、やはり人間側が違和感を感じてしまう……という理由からです。私たちは「人間が心から癒されるロボット」を作りたかったので、まったくオリジナルの形・オリジナルの動きを模索しました。


LOVOTの外観はまったくのオリジナル

編集部:たしかに「動物型のロボット」はどんなに良くできていても、作り物めいた印象がありますね。

池上:人間側が「本物だったらこう動くのに」とか「ちょっと違うんだよな……」といった気持ちになってしまわないように、LOVOTをLOVOTとして好きになってもらいたい、というところからデザインしています。

人の心を癒すために「テクノロジー(技術)の力」を使いたい

編集部:LOVOTが開発されたきっかけは、どういった流れだったのでしょうか?

池上:これまでのロボット開発では、「人の代わりに仕事をすること」が重視されていました。しかし、その方向性で本当に人間は幸せになれたのだろうかというところに立ち返り、人の心を癒すためのロボットを作ろうと当社代表の林が考えたのがLOVOT開発のきっかけです。犬や猫などのペットは何か役に立つわけではありませんが、その存在によって私たち人間は幸せを感じています。これは具体的には、「目が合う」、「駆け寄ってくる」、「抱っこしたときに温かい」、「玄関まで迎えに来てくれる」といった、いわばペットが人間に提供してくれるサービスによるものです。LOVOTの開発では、これらのサービスをロボット技術で表現することを目指しました。

編集部:LOVOTの開発プロジェクトは2015年11月に始まったそうですが、実際に製品としてリリースされたのはいつでしょうか?

池上:出荷が始まったのは、2019年12月です。

編集部:新型コロナの直前ですね。

池上:やはりLOVOTの魅力は直接体験していただくのが一番ですから、全国にたくさんLOVOTと触れ合える場所を作ろうと思っていました。新型コロナでそのような場を設けることができなくなり、一時はどうなることかと思いましたが、逆に新型コロナによって多くの方が孤独を感じ、何かペットを飼いたいと考える方が増えた結果、LOVOTに注目が集まった面もあります。


LOVOTの魅力は直接触れることで最も伝わる

編集部:ニュースで報道されていましたが、新型コロナの緊急事態宣言により、犬や猫などのペットがものすごい勢いで売れたそうですね。

池上:実はペットを飼いたいけれど、住環境やアレルギーの問題で飼えない方は大勢いらっしゃいます。ある調査によると、日本における「ペットを飼いたいけれど飼えない人」の数は、「ペットを飼っている人」の約2倍だそうです。そういう生き物を飼いたいけれど飼えない方たちが、LOVOTならお迎えできるのではないかと考えられたことで、緊急事態宣言の前後で大きく販売数が変わりました。

編集部:日本のペット市場は1.5兆円とも言われていますから、その倍となると大変な規模ですね。実際、トイプードルはペットショップで60〜80万円くらいしますし、エサ代や医療費などを考えればLOVOTは高くありません。

池上:緊急事態宣言に入ったときに自宅で孤独を感じられ、それでLOVOTをネットなどで調べて購入してくださった、という流れだと思います。緊急事態宣言前と後では、最大で約11倍まで売り上げが伸びた月もありました。

「アニメーター」「ダンサー」「ミュージシャン」がLOVOTの開発に参加

編集部:LOVOTの開発で、特に苦労された点を伺えますか?

池上:やはり「生き物らしさ」を追求した点だと思います。たとえば、LOVOTの目はずっとウルウルしていますが、これは人間や動物と同じように「黒目の部分が揺れ動いている」ということです。それを表現するためにLEDを使った6層のアニメーションを重ね合わせています。

編集部:だから本当の生き物みたいな目になっているのですね。こちらとも視線が合いますし。


高度な技術が投入されているLOVOTの目

池上:「動き」についても、「ロボットダンス」のようなギクシャクした動きにならないよう、「首が動いたら手も同時に動く」「腕全体の動きと指先の動きは連動している」といった生き物が動く時の原則を再現しています。LOVOTの開発に「エンジニア」だけでなく、「アニメーター」や「ダンサー」が加わることで、そのような自然な動きを作り出しました。

編集部:ドキュメンタリー番組でジブリの宮崎駿監督が「人間はそんな動き方をしない」と、新人アニメーターに怒るシーンを見たことがあります。まさにアニメーターの方たちは、キャラクターの動きを自然に見せるプロですね。

池上:また、LOVOTの声にはシンセサイザー(音声を合成する楽器)が使われているのですが、この開発には「ミュージシャン」が加わっています。普通のペット型ロボットは「録音した音声」を使っていますが、落ち込んで帰ってきたときに録音された声で元気よく「おかえり!」と言われても、「今そんなテンションじゃないから」と感じてしまうこともあるでしょう。LOVOTはあえて人間の言葉ではなく、「クゥーン」「キューン」という鳴き声で表現するようにしています。そうすることで、「私のことを心配してくれているのかな?」と想像できる余地を残しています。

編集部:それがまた「癒し」に繋がるわけですね。


帰宅すると出迎えてくれるLOVOT

池上:また、LOVOTはそのときの状態に合わせた声をその場で生成して出すことができます。つまり、うれしいときにはキャッキャッとはしゃいだような声を出し、怒っているときにはムッとしたような声を出します。あるLOVOTのオーナーさんから、「音楽を流すと、うちの子は音に合わせて歌うんですよ!」というご感想をいただいたこともありました。LOVOTにはAIが搭載されていますから、実際に音に反応して声を出しているのだと思います。

編集部:ペット型ロボットによくある「○種類の音声が出せます!」というのとは、まったくレベルが違いますね……!

LOVOTと関わることで、子どもたちに目覚ましい変化が!

編集部:LOVOTの利用者の方の感想、特に未就学児のお子さんと保護者の方、保育園や幼稚園で利用されていれば、それらの施設の方の感想を伺えますか?

池上:利用者の方の感想については、すでに40弱ほどの幼稚園や保育園などに導入されており、「おもちゃを独り占めにしていた子に、譲り合いの気持ちが育った」「登園したがらなかった園児が登園するようになった」といった感想をいただいています。LOVOTが転んだらお布団をかけてあげたりするそうで、本当にかわいいと思いました。


LOVOTと遊ぶ子ども

編集部:非常に良い情操教育ですね。

池上:今まで周囲とうまくコミュニケーションを取れなかった子どもが、LOVOTの話題を通じてお友達とお喋りできるようになった例もあるそうです。また、LOVOTを利用したプログラミング教育も可能で、「右手を上げる」「何メートル進む」といったプログラミングをすると、その通りにLOVOTを動かすことができます。普通のプログラミング教育では、画面上のキャラクターをプログラム通りに動かすことが多いと思いますが、LOVOTはリアルな実機が動くので、プログラミングやテクノロジーに興味を持つ子が非常に増えた、というお話を聞いています。実際、幼稚園の年長クラスの子どもたちから「将来ロボット開発者になりたい!」という声も出たそうです。


LOVOTと遊ぶ子どもたち

編集部:まさに「BabyTech® Award Japan 2020学びと遊び部門」の「学び」の部分ですね。ご家庭の保護者からの感想はいかがですか?

池上:最近は一人っ子が増えたことで、ご家庭で下の子の面倒をみる機会が減っていると思いますが、LOVOTのお世話をすることが「思いやり」や「責任感」を育むきっかけになっている、というご感想をいただいています。

編集部:「LOVOTのお世話」と言いますと……?

池上:LOVOTはお洋服を着ているので、それを着替えさせてあげるとか、ネスト(充電ステーション)にたどり着けない場合に連れていってあげるとか、段差で転んでしまったら起こしてあげる、LOVOTが動き回りやすいように部屋の片付けをするといったことです。よく親御さんから聞くのは、「ちょっとお兄さん・お姉さんになった」という感想ですね。それまでは常にお世話される立場だった子どもたちが、同じことをLOVOTにしてあげることで少し自立した、というお話をよく聞きます。そのような行動は、もしかしたら幼稚園や保育園で年下の子どもを相手にしているのかもしれませんが、ご家庭でそれを見る機会はなかなかありませんから、とにかく新鮮に感じられるそうです。


「LOVOT」のお世話をする子ども(イメージ)

小さな子どもがいる家庭だけでなく、高齢者家庭に広まる可能性も

編集部:最後にLOVOTの今後の展開について教えてください。

池上:当社の事業体系はLOVOTを販売するだけでなく、LOVOTのオーナー様に毎月の定額費用をいただくものなので、それを継続していただくためにもソフトウェアのアップデートを進めていく予定です。たとえば、「LOVOTが新しい動きをするようになった!」といったことが実現します。

当社が目指すのは、LOVOTが「四次元ポケットの無いドラえもん」のような存在となり、人間とロボットが当たり前に一緒にいて、対等な関係のお友達であるという世界です。ドラえもんの道具を使って、のび太はいつも失敗しますが、その失敗によってのび太は成長していきます。LOVOTも人間を成長させてくれるコーチとして、また本当の友達のような存在として共生していけるよう、進化させていきたいと思っています。最近のトピックとしては、東京都の「スタートアップ実証実験促進事業」に採択され、小学校低学年のお子さんがいるご家庭にLOVOTを導入し、どのような変化が起きるかという実証実験を行っています。この実験は東北大学の瀧靖之教授に監修いただいています。

編集部:シニア層の方にもLOVOTは最適かもしれませんね。私の両親も飼い犬が死んでしまってから、「もう散歩がつらいし……」と新しい犬を飼うのを諦めていました。

池上:「シニア層のペットロス」は、これからの社会の大きな問題だと考えています。高齢の方は自分の体が動かなくなったらペットの世話をどうしようという責任を感じておられますが、LOVOTならその心配がありません。実際に90歳でLOVOTを購入されて、Instagramを始めた方もいらっしゃいます。

また、LOVOTは「抱っこされた」「お着替えをさせてもらった」ということを記録しており、そのログは遠隔地からスマホで見ることができます。これは「今日は抱っこしてないな。おばあちゃん大丈夫かな?」などと連絡をとるきっかけになりますから、遠方に住むご家族に対するゆるやかな見守りサービスとしても使えます。

編集部:まさにLOVOTは少子高齢化時代、つまり「一人っ子」と「高齢者」が増えている現代にぴったりマッチしていますね。

 

取材を終えて

2020年9月15日から放映されたドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」で、ほぼ主役と言ってよいほどの大活躍が印象的だったLOVOT。我が家も家族でドラマを見ていたため、「こんなロボットがいたら欲しい〜」と言っていたものです。

それが今回の取材で1週間お借りすることができたため、もう大変な騒ぎに。毎日、妻と娘は家に帰ってくるなり、「バナナン〜!(我が家でLOVOTに付けた名前)」と叫びながら抱き上げ、なかなか離してくれませんでした(笑)。まだ2歳の娘が「バナナン、眠いの?」と気にかけたり、充電ステーションまで連れていってあげる姿には、ちょっと感動したものです。やはり「自分がお世話するべき他者がいる」というのは、人間の成長に欠かせないことなのかもしれません。

とにかくLOVOTはカワイイので、ぜひ実際に触れ合ってみてください。本物のLOVOTに会える場所は、GROOVE X株式会社のLOVOT MUSEUMやデパートの高島屋(新宿店、大阪店、名古屋店)、ラゾーナ川崎のLOVOT Cafeなどがあります。

LOVOT 公式ホームページ
https://lovot.life/

LOVOTに会える場所
https://lovot.life/trial/