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祖父母世代へ孫の様子を伝えるなら……「スマホ」より「テレビ」!?「まごチャンネル」

本サービスのポイント
  • 徹底して高齢者の使いやすさにこだわり、「コミュニケーションの質」を大幅に向上
  • 「祖父母」だけでなく、「兄弟姉妹世帯」や「いとこ世帯」など一族で情報共有が可能
  • 親世帯の「見守りサービス」としての機能が、セコムとの提携でさらにグレードアップ

新型コロナウイルスの感染拡大により、今年のお盆は帰省できなかったという方も多いのではないでしょうか? ゴールデンウィークに引き続き、お盆にもお孫さんの顔が見られなかったご親族は相当さびしい思いをされていることでしょう。そんな状況の解決に少しでも役立ちそうなのが、今回ご紹介する「まごチャンネル」です。パソコンやスマホを使う画像共有サービスは多数存在しますが、本サービスの特徴はなんと言っても自宅の「テレビ」を使って、動画や写真を共有できること。そのメリットや効果、利用者の感想はどのようなものなのか……BabyTech.jp編集部は同サービスを提供している株式会社チカク広報部長の石井唯宏さん(以下、敬称略)に取材し、サービスの概要や開発の経緯、利用者の反応などについて伺いました。

 

(お話を伺ったのは)

株式会社チカク 広報部長
石井唯宏さん

 

その臨場感(=コミュニケーションの質)は圧倒的にスマホを上回る

編集部:さっそくですが、「まごチャンネル」の概要について伺わせてください。

石井:「まごチャンネル」はスマホアプリから送られた動画や写真を、ご自宅のテレビで見ることができるサービスです。こちらの本体に電源を繋ぎ、あとはテレビと繋ぐだけで使い始めることができます。内部にスマホと同じ通信機能が組み込まれているので、Wi-Fiなどと接続する必要はなく、インターネット環境がないご家庭でも使用できます。ちなみにデータ通信料金は、月1480円(税別)の定額となっています。

編集部:他にセッティングすることはないのですか?

石井:ありません。あとはテレビのリモコンで操作できます。

編集部:これは簡単ですね!

石井:動画や写真が届くと本体の窓の部分が点灯するので、すぐにわかります。たとえばテレビを見ているときに動画や写真が届けば、そのままリモコンでチャンネルを変えるように、送られてきた動画や写真を見ることができます。「1チャンネル見ようかな、4チャンネル見ようかな、まごチャンネル見ようかな」、そんな感覚でお楽しみいただけます。実際に見ていただきましょう。


「まごチャンネル」の外観


「まごチャンネル」により、動画や写真が自宅のテレビに映し出される

編集部:……これは想像していたのとはまったく違う体験ですね! 正直、こうして実際に見せていただくまで、スマホで動画や写真を共有するサービスとの違いがイメージできなかったのですが、テレビの大画面で見ると子どものイキイキした表情や動きがスマホの小さな画面よりもはるかにストレートに伝わってきます。

石井:ありがとうございます。そういう感覚を持っていただけるのは、リビングなどのテレビで「まごチャンネル」を見たときに、ちょうど等身大のお孫さんが居間にいるような臨場感があるためだと思います。ユーザー様のご自宅に伺うと、「思わずテレビに映っている孫に返事したり、話しかけちゃうのよね」と言われることがよくあります(笑)。

編集部:「スマホを使った画像共有サービス」や「LINEで動画や写真を送ること」、それから以前流行した「専用フォトフレームに画像を送るサービス」とは、まったく別ものだということがよくわかりました。全然インパクトが違いますね。

石井:はい。実際、それまでスマホで動画や写真をやり取りされていた祖父母世代の方でも、「まごチャンネル」を使っていただくと非常に喜ばれるケースが多いです。なお、「まごチャンネル」には1分程度の動画なら約2000本、写真は5万枚ほど保存できます。さらにご実家で動画や写真を見始めると、送った側のアプリに「見始めました」という通知が届く仕組みになっています。

編集部:そうすると、「今日も『まごチャンネル』を見ているから元気そうだな」という安否確認的な使い方もできますね。さらに送った側も「ちゃんと見てくれている」という実感が持てるので、また新しい動画や写真を送りたくなりそうです。


「まごチャンネル」を見ると、その通知がアプリに送られる

 

開発者自身の「親世帯とのコミュニケーション・ギャップ」から生まれた製品

編集部:「まごチャンネル」が開発された経緯を伺えますか?

石井: 発売は2016年です。弊社代表の梶原は兵庫県の淡路島出身でして、東京でアップルジャパンに就職したのですが、子供が生まれてもあまり帰省できなかったことから、実家にパソコンを送って動画や写真を共有しようとしていました。しかし、「ネットがつながらない」とか「写真が見つからない」といった連絡が毎日のように来て、それで高齢者でも簡単に使えるサービスはないだろうか……と考えたのが、「まごチャンネル」開発の原点です。それからアップルを退職後、友人のご実家を回ってデモをしたところ、本当の「孫の写真」が映った途端に「これはいくらで買えますか!?」と大変な好感触だったために、自信を持って事業を立ち上げたという経緯です。

編集部:やはり、代表の個人的な経験が原点にあるのですね。

石井:立ち上げ前にデモを行った経緯からも分かるとおり、弊社はユーザー様の声をとても重視しています。たとえば付属の説明書ですが、とにかく高齢者の方にも分かりやすくするため、できる限り専門用語を使わないようにしています。これは梶原が高齢者の方が集まる喫茶店におじゃまして、実際に説明書を読んでいただき、わからないところがあれば修正する……といった作業をくり返して作ったものです。その結果、「世界一わかりやすいマニュアル」として、メディアにもご紹介いただきました。他にもユーザー様世代の方の声を聞いて試作を繰り返し、現在の形になるまでに70ほどのプロトタイプを作りました。


高齢者に分かりやすいよう配慮した「まごチャンネル」のマニュアル

 

「リビングのテレビ」を活用したからこそ生まれた、新しいコミュニケーション

編集部:「まごチャンネル」の利用者はどれくらいなのでしょうか?

石井:利用者は全国47都道府県におられ、これまでに1万台以上出荷しています。2020年2月くらいから新型コロナの影響で帰省できないため購入したいという声が寄せられ、ゴールデンウィークに安倍首相が「オンライン帰省」という話をされた頃から、一気に注目度が高まり、出荷台数も好調に推移しています。2020年1月〜3月出荷台数は前年比2倍以上、4月〜6月は前年比3倍以上になっています。

編集部:やはり新型コロナによるニーズの高まりがあったのですね。利用者からはどんな声が寄せられていますか?

石井:新型コロナでなかなかお孫さんに会えなかったけれども、「まごチャンネル」で毎日の成長を見ていたから全然さびしくなかった、というお声を多数いただきました。また、「まごチャンネル」ではリビングのテレビでお孫さんの動画や写真が見られるため、それが共通の話題になって夫婦間の会話が増えた、夫婦仲が良くなったというお声もいただいています。

編集部:たしかにスマホの画面では、夫婦で一緒に見られませんからね。


「まごチャンネル」を一緒に見ることで、会話が生まれる

石井:それから「まごチャンネル」を利用するためのアプリですが、これは無料で複数の方を招待し、利用することができます。たとえば大阪にお住まいの祖父母のご家庭に「まごチャンネル」があれば、東京と福岡に長男夫婦と次男夫婦がいた場合、それぞれのご家庭から動画や写真を送ることができ、アプリ上でお互いにそれらを見ることもできるわけです。曽祖母の家にある「まごチャンネル」を、ご親族が総勢10人で利用されているケースもあります。そしてアプリを通じて各家庭の近況が共有されるので、それが孫世代同士(=いとこ)の交流につながっているそうです。大人になると、久しぶり過ぎて親戚と何を話していいかわからない……ということになりがちですが、お互いの近況を知っていれば自然と話題も見つかります。「まごチャンネル」は、そういう横のつながりが生まれるきっかけにもなっているようです。また、大きくなったお孫さんやひ孫さんには、自分で簡単なメッセージを添えて日常の動画や写真をアップする「おじいちゃん・おばあちゃんとのSNS」のような感覚で使っていただいています。

編集部:それは素晴らしいですね! お盆やお正月に親戚が集まったときにみんなで動画や写真を見たら、とても盛り上がりそうです(笑)。


「まごチャンネル」に送られた動画や写真は専用アプリで共有できる

 

より高度な「見守りサービス」と「コミュニケーションツール」を目指して

編集部:最後に、「まごチャンネル」の今後の展開について伺わせてください。

石井:「まごチャンネル」には当初から拡張性を持たせるためにUSBポートを用意していたのですが、これを利用した「まごチャンネル with SECOM」というサービスを大手警備会社のセコム様と共に、2020年1月からスタートしています。小型の環境センサーを「まごチャンネル」に取り付けることで「温度・湿度・照度・生活音」等を感知し、実家の起床や就寝、熱中症のリスクが高まっていることなどを通知するサービスです。「見守り」は気になるものの、従来のセコム様が提供されている警備員が駆けつけるサービスは「年齢的にまだ早い」とか、監視カメラをつけるのは「抵抗がある」という声もあることから、セコム様はもう少しライトな見守り方法を探されていました。弊社も「まごチャンネル」が安否確認に使われていることをユーザー様から聞いていたため、それをより発展させる方法を模索していました。そんな中、東京都が主催するプログラムでご縁ができ、セコム様から弊社にお声掛けいただき、実現したという経緯になります。

編集部:たしかに、このサービスで「今日はなかなか起きないな」とか「熱中症に気をつけたほうが良さそうだな」ということがわかれば、ちょっと実家に電話してみようと思いますね。


「まごチャンネル」について語る石井さん

石井:それから、現在は写真を送れるのはアプリ側からの一方通行ですが、「まごチャンネル」の本体にカメラを取りつけて、双方向でやりとりができるようにすることも検討しています。海外展開としては、すでに海外赴任されているご家庭が日本のご実家で使用されている例は多数ありますし、タイで本体を販売した実積もあります。また、ドイツのiFデザイン賞という世界的なデザイン賞もいただきました。最近では自治体との連携も増えており、7月には大阪府泉大津市と実証実験を開始し、また9月から宮城県七ヶ宿町で「まごチャンネル」を購入した世帯に補助金を交付する事業も始まります。

編集部:ありがとうございました。「まごチャンネル」は国、地域や人種を問わずニーズがあると思いますので、将来の海外展開も期待しています!

 

取材を終えて

新型コロナの猛威により、県をまたいだ移動のほとんどが制限され、帰省も難しい状況が続いています。しかも、この状況はまだまだ続くと思われるため、オンラインでの情報共有の必要性がますます高まっているわけですが、やはり高齢の方にとってスマホは操作しにくく、画面も小さすぎて見にくいことは否めません。そんな中でテレビの「リモコン」と「大画面」を使うという発想は、高齢者とのコミュニケーションを円滑にする最高の武器かもしれないと実際にサービスを体感して思いました。次回の敬老の日のプレゼントとして、ぜひ検討されてみてはいかがでしょうか?

「まごチャンネル」ホームページ
https://www.mago-ch.com/

「まごチャンネル with SECOM」ホームページ
https://www.secom.co.jp/mimamori/mago-ch/