- 有名出版社の絵本など約100冊を選べ、そのすべてで読み聞かせ音声を聴ける
- 絵本に登場するセリフの一部を、自分たちで吹き替えて楽しむことができる
- 「寝かしつけ」のためのさまざまな工夫がされており、パパ・ママをサポートしてくれる
今回ご紹介する「みいみ」は、プロのナレーターが朗読してくれる絵本の読み聞かせアプリ。有名出版社の絵本などが約100冊選び放題なだけでなく、セリフを自分で吹き替えることもできます。そんな同アプリは「BabyTech® Award Japan 2021」でアカチャンホンポ賞を受賞しました。そこでBabyTech.jp編集部は「みいみ」を開発した東京ガス株式会社の榎本奈津子さんと株式会社オトバンクの加藤良太さん(文中敬称略)に取材を行い、同アプリの概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。
(お話を伺ったのは)
東京ガス株式会社 暮らしソリューション技術部
榎本奈津子(えのもと・なつこ)さん
株式会社オトバンク オーディオブック事業部
加藤良太(かとう・りょうた)さん
出版社の良質な絵本がアプリとなり、さまざまな可能性が生まれた
編集部:本日はお忙しいところ、大変ありがとうございます。さっそくですが、「みいみ」の概要と特徴について伺えますか?
榎本:「みいみ」は耳と声で絵本の世界が楽しめる読み聞かせアプリです。2019年にアプリをリリースして今年で3年目に入りました。絵本適齢期のお子様がターゲットであり、特に未就学児のお子様がボリュームゾーンになっています。利用料金は月額500円のサブスクモデルになっていますが、登録後1か月は全機能を無料で楽しめます。ダウンロード数は2022年1月時点で累計10万件を突破しました。特徴は大きく分けて3つあります。1点目が書店で販売されている有名出版社の絵本作品を数多く配信していること。これはみいみを共同開発したオトバンク様が出版社と強いつながりを持っておられるため、それを最大限に生かした結果です。2点目がそれらの収録作品すべてで読み聞かせ音声を楽しめること。こちらもオトバンク様に所属するプロのナレーターによる良質な読み聞かせ音声を活かしております。3点目が読み聞かせ音声を聞くだけではなく、カラオケのようにセリフの一部を吹き替えて遊べる機能があることです。
編集部:オリジナル絵本だけではなく、書店で実際に売られている作品がスマホで楽しめるというのはすごいですね!
榎本:「絵本の読み聞かせアプリ」や「YouTubeの絵本読み聞かせチャンネル」などはいくつかありますが、有名出版社の絵本作品があることは、やはりみいみの大きな特徴だと思います。子育てにおいて大切な未就学時期に良質な作品になるべく触れさせてあげたいという思いから、そういった作品を取り揃えました。また、絵本の吹き替え機能についても、お子様が受身な形で聞くだけではなく、主体的に物語に入り込めるようになることを考えて開発した機能になります。
また、みいみは「寝かしつけ」のシーンで多くの方に使っていただいており、この寝かしつけに関してもこだわっているポイントがあります。まず、読み聞かせアプリであることから、保護者の方がお子様と一緒に絵本を楽しむことができます。通常の絵本であれば保護者の方が読み手、お子様は聞き手……ということになります。しかし、みいみでは保護者の方もお子様と同じ目線で絵本を楽しめますから、より濃密なコミュニケーションが取れるわけです。さらにみいみには画面を暗くできる機能を搭載し、暗い寝室でも読み聞かせを楽しみやすくしています。さらに、「寝かしつけに適した作品」を配信することにも取り組んでおります。
編集部:どれくらいの方がみいみを寝かしつけに使われているのですか?
榎本:みいみの利用状況のデータを見ると、かなり多くの方が20時〜22時という寝かしつけの時間帯に使われています。ちなみにみいみの利用者属性は女性が7割・男性3割です。アプリという形にしたことで、今まで紙の絵本の読み聞かせには参加していなかったパパの参加を促した可能性もあると思います。
2022年1月から新しい取り組みとして、寝かしつけのための読み聞かせを徹底研究して制作した音源を配信しています。いわゆる1/fゆらぎの音声やお子様の胎動をバックグラウンドに流すといった工夫を凝らした絵本の配信を始めました。
加藤:榎本様が言われた1/fゆらぎの音声や胎内音のほかに、ホワイトノイズ・ピンクノイズと言われる生活音も取り入れています。掃除機の音を聞かせると子どもが泣き止んで寝てくれる……といった事例がありますが、そういった効果の見込める音の要素を入れた絵本を配信しているわけです。ちなみに、うちの子どもにも実際に使っています。
編集部:効果はいかがですか?
加藤:ゼロ歳児なのですが、寝かしつけで使うと泣き止んでくれたり、時には寝てしまうことがあったりします。なかなか効果があるのではないかな、と思っています。
榎本:現在配信しているのは、アプリ内で「おやすみモード」と書かれている「おおきなかぶ」や「じゅげむじゅげむ」などの作品ですね。
「デジタル」ならではの機能が利用者のメリットにつながる
編集部:それにしても、子どもが自分の声で絵本のセリフの吹き替えができるのは面白そうですね……!
榎本:アプリならではの読み聞かせ体験を提供したいということで、それらのデジタルな仕組みも取り入れました。紙の絵本を否定するわけではありませんが、スマホで読み聞かせするとこういった体験もできますよ……という提案になります。
小さいお子様の声はパパ・ママにとって、とてもかわいらしいものだと思います。みいみがそういうものを取っておいていただくきっかけになるかもしれませんし、またパパ・ママの声を吹き込み、それを親子で一緒に聞くという新しい楽しみ方もできるのではないかと考えております。さらに保護者の方も子どもたちと絵本の読み聞かせを聞くことで、「こうだったね」「ああだったね」「次どうなると思う?」と一緒に驚いたり笑ったりするような新しい絵本の楽しみ方が生まれる可能性もあると思っています。
編集部:アプリの中に約100冊もの絵本が入っているという点について、たくさんの絵本を買わなくて済む・絵本の保管場所が不要になる……といった電子書籍に似たメリットもあるような印象も受けますね。
榎本:ユーザーの方からそういった感想をいただいたことがあります。都心のマンションでは収納面の問題もありますし、お子様が増えればそれだけ物も増えていきますから。
大人向けのオーディオブックをヒントに、絵本というコンテンツの可能性を開拓
編集部:開発の経緯について伺えますか?
榎本:東京ガスでは、生活に関連するさまざまなサービスをご提案しています。そのなかで最近はAmazon EchoやGoogle Homeが上陸するなど、音声市場が日本にも広がり始めてきました。そこでオーディオブック事業をやられていたオトバンク様と、子育てをされているご家庭向けに新しいサービスが提供できないか……というお話をさせていただくなかで「絵本」に注目したのです。というのも、書籍や雑誌など出版物の売上が軒並み下がっているなか、絵本は子どもの数が減っているにも関わらず一定の売上を維持しています。つまり、絵本はお客様から非常に人気のある良質なコンテンツだという点に注目し、これを音声で配信すればお客様の生活の困りごとの解決に貢献できるのではないかという話になりました。最終的に絵本のオーディオブックという発想が生まれ、どのような機能がお客様に喜んでいただけるのかという議論を経て、リリースに至りました。
編集部:社会を支えるエネルギー会社・インフラ会社である御社が生活全体をサポートする事業に乗り出されたわけですね。
榎本:絵本というアイテムと音声を使い、寝かしつけのサポートやちょっとした家事のための時間を確保するなど、ご家庭の家事・育児の負担を少しでも軽減することにつながれば……ということで開発させていただきました。
編集部:みいみの開発でなにか苦労された点はありますか?
榎本:絵本の吹き替え機能についてはどの部分を吹き替えできるようにするか、また字の読めないお子様にも楽しんでいただくにはどうするかなど技術的に難しいところもありましたし、どうすればよりコンテンツの魅力が上がるのかというところは開発メンバーでかなり議論しました。また、小さなお子さまの吹き替えが次のナレーション部分に追いつくのかどうかなど、何度も実際にテストしました。
編集部:そのテストというのは子どもたちに参加してもらったのですか?
榎本:子どものいる社員に協力してもらい、どのくらいの年齢ならどのくらいの速さが良いのか、どういうふうに使ってくれるのかなどを調査しました。それから本の選定にも苦労しました。不朽の名作だからといって、必ずしもお子さまのお気に入りの一冊になるかどうかは分かりません。お客さまの声を集めさせていただきながら、現在も常に議論を続けています。
寝かしつけシーンでの利便性を高め、さらに利用シーンを広げていく
編集部:利用者からの感想を教えてください。
榎本:「コンテンツが子ども向けに厳選されており、安心して見せられる」「出版社が出している絵本なので信頼感がある」「プロのナレーターの読み聞かせと自分の声を聴き比べて楽しんでいる」などの声が寄せられています。また、識字障害のあるお子さま向けに「みいみ」を利用しています、というコメントをいただいたことがあります。
編集部:吹き込んだ声を「ロボット風」「宇宙人風」などに変換できる機能がありますが、利用者の反応はいかがですか?
榎本:お子さまウケはすごくいいです。ずっとそこだけ連打して遊んでいます、というご意見もよくいただきますね。
編集部:最後に、みいみの今後の展開について教えてください。
榎本:お客さまの声をさらに集め、いろいろな利用シーンを増やしていけたらと思っています。まずは多くの方にとって大きな負担になっている寝かしつけに重点的に取り組み、パパ・ママのお手伝いをしたいと考えています。私自身の子育て経験でも、寝かしつけは1日の育児における最後の大勝負でした。そこで子どもを泣かせてしまったり、「早く寝なさい」と叱ったりするのではなく、「みいみ」を聞いて1日の最後を笑顔で締めくくってほしいと思っています。そのために必要なコンテンツの追加や改良、使い方の提案を充実させていきたいと考えています。
ただ、寝かしつけ以外にも「みいみ」の価値には伸びしろがあると思っています。寝かしつけ以外のシーンにあったコンテンツを増やしていったり、改良を重ねていくことも考えています。これからも親子のコミュニケーションを深め、お子様の想像力を高めていくなどさまざまな価値を提供していきたいと思います。
取材を終えて
寝かしつけで何冊も絵本を読まされるつらさは、多くのパパ・ママが味わっているのではないでしょうか? そんなつらい時間を親子の楽しいコミュニケーションの時間に変えてくれる「みいみ」は、さすが多くのパパ・ママの悩みを知るアカチャンホンポの社員の皆さんが選んだだけのことはあると感じました。夜はスマホの光が気になりますが、その部分も画面を自動的に暗くしてくれるなどの配慮があり、安心して使うことができます。ぜひ、お守りがわりにダウンロードしてみてくださいね!
「みいみ」公式ホームページ
https://miimi-app.jp/