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懐かしい紙芝居がデジタルで生まれ変わり、親子のコミュニケーションを促進する! 「かみなしばい」

本サービスのポイント
  • オリジナルの紙芝居を2つのデジタル端末で読み手と聞き手に分かれて楽しめる
  • デジタルならではのコミュニケーションを促進するさまざまな仕掛けが満載
  • 今後はandroid版や英語版、オリジナル絵本の作成機能なども検討されている

今回ご紹介する「かみなしばい」は、デジタル化されたオリジナルの紙芝居を楽しめるアプリ。絵を自由に動かしたり、新しいキャラクターを登場させたりするなど、紙媒体ではできないさまざまな楽しみ方が可能です。そんな同サービスは「BabyTech® Award Japan 2021学びと遊び部門」で大賞を受賞しました。そこでBabyTech.jp編集部は「かみなしばい」を開発した株式会社unouplus代表の戸田芳裕さん(以下、敬称略)に取材を行い、同サービスの概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)

株式会社unouplus代表
戸田 芳裕(とだ・よしひろ)さん

unouplusinc. のプロフィールアイコン

2つの端末を使うデジタル作品だからこそできる、驚きの表現やストーリー展開!

編集部:本日はお忙しいところ、大変ありがとうございます。さっそくですが、「かみなしばい」の概要と特徴について伺えますか?

戸田:かみなしばいは、いわゆる昔ながらの「紙芝居」をアプリにしたものです。当社では以前から子供向けアプリを作っていましたが、多くの子供向けアプリはひとりでも遊べるものばかりだな……と思っていました。そこで、親子でコミュニケーションを取れるようなアプリを作りたいと考えたのです。ちょうどその頃、子どもとよく図書館に行っていたのですが、そこで紙芝居をたくさん借りることができました。そのとき、「この紙芝居をアプリにできないかな……」という考えが浮かんだのです。紙芝居は必ず2人以上が必要であり、1人では遊べません。また絵本とは違い、読み手と聞き手の読む紙が違っている形式も面白いと思いました。そんな発想からでき上がったのが、スマホ1台では完結せず、タブレットやスマートフォンなどが2台以上必要になるかみなしばいでした。

かみなしばいのホーム画面

編集部:かみなしばいは必ず2台のスマホやタブレットが必要なのは、そんな紙芝居の特徴からきているのですね。

戸田:その通りです。2台の端末をBluetooth通信で連携させることにより、読み手のほうが画面上で何かを動かすと、同じように聞き手の端末でもそれが動きます。たとえば、「ももたろう」であれば川から流れてくる桃を左右に動かすことができます。

紙芝居のように2台の端末を繋いで楽しむ

ただ、それだけだと普通の紙芝居とそれほど変わりませんから、アプリだからできることをいろいろ詰め込みました。「おおきなカブ」という作品では、通常の紙芝居であれば決められたキャラクターしか出てきません。かみなしばいではおじいさん・おばあさん・犬などだけでなく、オニやお相撲さんなどのいろいろなキャラクターを選択し、登場させることができます。また、ももたろうでは読み手がオニに、聞き手が桃太郎たちになって、最後はゲームのような戦いが始まる仕掛けになっています。

オニとの戦いをゲームにすることもできる

編集部:それは紙芝居や絵本ではできないことですね。

戸田:ほかにもかみなしばいには「パパのせなか」、「ママのおなか」というお話があります。「パパのせなか」は聞き手の子どもが読み手のパパの背中にタブレットを乗せて見るのですが、これも対面せずに読み聞かせることができるアプリだからできた作品です。

編集部:それはどういったお話ですか?

戸田:「パパはいつもお仕事をしているけど、ちょっと疲れて故障しているかもしれないから、背中から故障している原因を探してくれる?」というストーリーで、子どもがいろいろ探ったり、なおしていく……という内容です。

編集部:だからお父さんの背中にタブレットを乗せるわけですね!

デジタルならではの作品「パパのせなか」
かみなしばい「パパのせなか」を楽しむ時のイメージ

戸田:「ママのおなか」の方は、タブレットをママのおなかに当てながら読む作品です。子どもが生まれるまでの十月十日を子どもと一緒に体験し、「こんなふうにあなたはママのおなかにいたんだよ……」というストーリーです。このような紙ではできない表現の作品を、これからも作っていきたいと考えています。お話のなかでいろいろな道を選択できるとか、お話を変えていけるなど、デジタルだからできる表現は無限にあると思っています。

子どもとのふれ合いをきっかけに、コツコツと制作を続けて生まれたアプリ

編集部:かみなしばいを開発されたきっかけは、お子さんと図書館に行かれたこと……と伺いましたが、実際にアプリがリリースされたのはいつ頃ですか?

戸田:2018年4月10日にバージョン1.00をリリースしています。開発期間はだいたい1年ほどだったと思います。そもそもはウェブデザインやアプリ制作という本業の合間に取り組んだプライベートワークでした。

編集部:やはりお子さんの反応は、アプリ開発に取り入れられたのですか?

戸田:かみなしばいの前にも子ども向けアプリを2本作っており、その時から一緒に遊んでどういう反応をするかを見て、アプリ開発に反映させてきました。

編集部:かみなしばいの開発は、すべて戸田様がお一人でされたのですか?

戸田:そうですね。イラストからアプリ実装まで全部やっています。

現代に蘇った紙芝居は新鮮な驚きを与え、一対多数のコミュニケーションも可能

編集部:かみなしばいの対象年齢は何歳くらいでしょうか?

戸田:おおよそ幼稚園の年長さん〜小学校低学年くらいです。

編集部:利用者の感想としてはどういったものがありますか?

戸田:保護者の方や今回のBabyTech® Awardの審査員の皆さんなど、いろいろな方面から伺うのは「とにかく驚いた」という感想です。昔からあった紙芝居がこんなふうに新しく生まれ変わったことに驚かれていたり、2台の端末を使うという発想は今までになかったといった驚きの感想ですね。子どもたちからの声は直接聞けてはいませんが、喜んでもらえているのは伝わってきています。

編集部:戸田様のお子さんの感想はいかがですか?

戸田:もう小学校の上級生なので、対象年齢からは外れてしまいました……。あとはアプリのレビューや私のFacebookを通じて、子どものいる友人たちから「驚いた!」「子どもとのコミュニケーションが面白い!」などの感想をもらっています。また、障害を持つ子どもたちの学校の方から「授業で使いました」というコメントもいただきました。

編集部:最近の学校は1人に1台タブレットを配ろうとしていますし、紙芝居では遠くて見えない場合もタブレットは目の前で見られますから、先生が操作して、それを子どもたちが一緒に見るという使い方は素晴らしいですね! 最大接続数はどれくらいでしょうか?

戸田:5台までは検証していますが、接続数に制限はないと思います。

紙芝居という日本オリジナルの文化を海外に発信することも視野に

編集部:かみなしばいの今後の展開としては、どういったものをお考えですか?

戸田:まず、現在はiOS版しかないので、Android版を開発したいと考えています。また、英語版など海外向けの対応にも取り組むつもりです。さらにお話をもっと増やしたいということ、それからユーザーがお話を作れるようにすることも視野に入れています。

編集部:オリジナルの紙芝居を作れるということですか?

戸田:ユーザーが登場人物や家、木などのオブジェを配置して、オリジナルのお話を作って読み聞かせができるようなイメージです。ユーザーのパパやママのなかには絵を描くのが得意な方もいらっしゃるので、そういう方たちの描いた絵を取り込んで、オリジナルの作品を作ることができたらいいな、とも思っています。技術的なハードルは高いですが、私が一人で作品を増やすのは時間的にも厳しいので、こういった方法でカバーできたら……と考えています。

編集部:英語版の構想は、何か海外からの要望があったのでしょうか。

戸田:紙芝居は昭和初期の戦後に流行し、「紙を引いて見せる」という構成は日本オリジナルなようです。そんな日本独自の文化を海外に広げていけたら面白いのではないか、という発想から英語版を構想しています。

取材を終えて

筆者も子どもの頃、幼稚園の先生に読んでもらった紙芝居にとてもドキドキした記憶があります。しかし、最近ではほとんど紙芝居を見かけることがなく、図書館で借りたこともありませんでした。しかし、スマホやタブレットなら手軽に試してみることができます。さらに、そこにデジタルならではの驚きがたくさんつまっているとしたら……。親子のコミュニケーションが深まる最高のきっかけになるでしょう!

「かみなしばい」 公式ホームページ
https://kaminashibai.unouplus.com/