- 赤ちゃんの睡眠サイクルを記録・分析し、適切な起床時間を提案してくれる
- 「体内時計」をリセットし睡眠サイクルを整える「太陽光に近いLEDライト」を活用
- 世界最大級の電子機器展示会CESにて「Innovation Awards」を受賞!
毎年、アメリカ・ラスベガスで開催される世界最大級の電子機器展示会CES(Consumer Electronics Show)では、ここ数年さまざまな「ベビーテック」関連製品が発表され、注目を集めてきました(今年は新型コロナの影響を受け、2021年1月11日〜1月14日にかけてオンラインで開催)。同展示会では開催に先駆けて、特に目覚ましいイノベーションと認められた製品が「Innovation Awards」として表彰され、公式サイトに掲載されます。そして今回、株式会社ファーストアセントが開発したベッドライト型スリープトレーナー「ainenne(あいねんね)」が「CES 2021 Innovation Awards」を受賞しました。babytech.jp編集部は株式会社ファーストアセント代表取締役CEOの服部伴之さんと執行役員CMOの千葉祐大さん(以下、敬称略)に取材を行い、「ainenne(あいねんね)」の概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。
(お話を伺ったのは)
株式会社ファーストアセント
代表取締役CEO 服部伴之さん
株式会社ファーストアセント
執行役員 CMO千葉祐大さん
子育て世代最大の悩みのひとつ、「寝かしつけ」を科学的に解決する
編集部:このたびは「CES2021 Innovation Awards」の受賞、おめでとうございます。早速ですが、受賞された「ainenne(あいねんね)」の概要について伺えますか?
服部: ちょっとまだメディアに掲載するための撮影に耐えられるクオリティのモノが出来ておらず……商品レベルのモノは1月末から2月半ばにならないと出来上がらないかなという感じでして、突貫で開発を進めています。
「ainenne(あいねんね)」のCG画像による外観
「ainenne(あいねんね)」のコンセプトは、赤ちゃんの寝かしつけを助けるデバイスというものです。人間にはおおよそ1日周期でリズムを刻む「体内時計」という仕組みが備わっています。この周期が一般的に24時間より少し長くなっていまして、放っておくと起床・就寝の時間が少しずつズレていってしまいます。こういった事が起こらないように、朝日を浴びることで体内時計がリセットされるという仕組みを人間は持っています。この「朝日による体内時計のリセット」にヒントを得て、太陽光を模したLED光で赤ちゃんを目覚めさせる機能を搭載することを思いつき、「ainenne(あいねんね)」を開発しました。
編集部:毎朝、体内時計をリセットして睡眠リズムを整えてくれるわけですね。
服部:「ainenne(あいねんね)」には「寝かしつけ開始時間」「眠りについた時間」「起きた時間」を登録できるボタンがありまして、それらを使うことで簡単に睡眠に関する記録を集められます。当社は、育児記録アプリ「パパっと育児」を通じて蓄積・分析した膨大な「育児ビッグデータ」を研究していますから、それらのデータを元に「推奨起床時間」を算出してお知らせすることができます。さらに就寝後の赤ちゃんの泣き声を検知・分析することで「夜泣き」具合もわかりますので、そういったデータを参考に「推奨起床時間」を導き出すことができるのです。
「ainenne(あいねんね)」の操作部。各機能はボタンひとつで操作可能
これは「子育てあるある」ですが、朝、親が赤ちゃんよりも先に起きていて、本来だったら赤ちゃんを起こす時間なんだけれども、まだ赤ちゃんはぐっすりと寝ているとなった時に、もうちょっと寝かしておこうか……と判断しているご家庭は多いと思います。先程、人間の体内時計は24時間より少し長いというお話をしましたが、これをしていると赤ちゃんの起床・就寝のタイミングはどんどん後ろにズレていってしまいます。最終的に赤ちゃんの体内時計的には昼夜が逆転した状態になってしまい、親が夜中に一生懸命寝かしつけをしようとしても、赤ちゃんにとっては昼間の状態なので、なかなか寝てくれないという状態に陥ります。こういった現象は「フリーラン」と呼ばれるのですが、当社ではこのフリーランを起こさないために起床時間を推奨し、その時間にLED光を当てて目覚めさせてあげる事を狙っています。
編集部:子どもが夜なかなか寝ついてくれない原因は「体内時計」にあり、それを「ainenne(あいねんね)」は各種のデータを記録・分析して、ズレが起きないように促してくれるということですね。また、最近は「光を使った目覚まし時計」は快眠効果が非常に高いと人気があると聞いています。
「ainenne(あいねんね)」と眠る赤ちゃん
服部:「ainenne(あいねんね)」のコンセプトは「赤ちゃん用スリープトレーナー」というものですが、赤ちゃんが大きくなってからも通常の目覚まし時計としてご利用いただけます。朝に光を浴びることで体内時計がリセットされるため、光療法として睡眠障害などの睡眠に不安がある大人が用いるケースも多いようです。実際に医療機器メーカーのフィリップスなども、大人向けのLED目覚ましを販売しています。
「泣き声診断」だけでなく、より「育児の現場」に溶け込むための新機能
編集部:昨年のCES2020のときに発表された「CryAnalyzer Auto」は、単純に泣き声を分析して赤ちゃんが訴えたいことを判定するというものでしたが、そこからはるかに高度な機能が追加されたのですね。
服部:「CryAnalyzer Auto」の機能は「ainenne(あいねんね)」が推奨起床時間を算出する上で必要な「夜泣き」の自動記録に使われていますし、「ainenne(あいねんね)」にも泣いているときにボタンを押せばすぐに赤ちゃんが訴えたいことを判定する機能は搭載されています。「泣き声分析」のより役に立つ利用方法を考えた結果が、「ainenne(あいねんね)」だったわけです。それから、「ainenne(あいねんね)」に搭載されているライトは起床用だけでなく、入眠前のベッドライトとして使うこともできます。そのときは起床用の太陽光を模した光ではなく、ブルーライトをカットした光が点灯します。ブルーライトは入眠を妨げると言われていますから。光の周波数成分や明るさを設定できるため、作業用にとにかく明るい白い光にすることも可能です。
泣き声から感情を分析する機能のイメージ図
編集部:たしかに子どもを寝かしつけるときに絵本を読むなど、ベッドライトが必要な場面はよくありますね。
千葉: ここまで服部が説明してきた機能に付け加えて、「ainenne(あいねんね)」には赤ちゃんを寝かしつけるときに効果があると言われる「ホワイトノイズ」を流す機能もあります。
服部:いずれの機能も、ボタンひとつで操作できるようにしています。また、各記録は当社の育児アプリと連携し、スマホ上でも確認できます。
「オンライン開催」では「Innovation Awards」を取ることが必須だった
編集部: 「ainenne(あいねんね)」のCES出展にまつわるご苦労を伺えますか?
服部:CES2021は初のオンラインのみの開催ということで、主催者側もドタバタしているようで、なかなか準備が思うようにすすみません。資料登録用のアカウント登録で一度ハマってしまいまして、事務局窓口に問い合わせをして問題解決しました。
編集部:「CES2021 Innovation Awards」は、展示会の開催に先駆けて公式ホームページで発表されたのですね。
服部:はい。というのも、日本でもいくつかのオンライン展示会を見て回ったのですが、やはり対面開催のような「セレンディピティ的な出会い(偶然の出会い)」は、ほとんど期待できないな……と感じました。だから「Innovation Awards」を取るか・取らないかで、製品を見にきてくれる人の数は段違いになると思い、かなり力を入れて賞を取りにいきました。ですから、狙い通りこの賞を取れたのは本当に良かったです。
編集部:たしかにオンライン展示会では、対面開催のように会場をブラブラして偶然、製品が目に止まる……ということはなさそうですね。ブースに人だかりができて、それを見て人がどんどん集まるということもありませんし。
服部:CES2020に「CryAnalyzer Auto」を出展したときは、場内を見て回っている人たちの間で噂になったり、「日本の出展エリア」を見にきた人がたまたま注目してくれるという流れがありました。そのようなことは今回のオンライン開催では期待できないだろうということは予想できましたし、海外のオンライン展示会に出展した知人から「ほとんど問い合わせがこない」という話も聞いていました。ですから、まずは「Innovation Awards」を受賞して、公式ホームページの「受賞製品一覧」に掲載されなければどうにもならないだろう、と思っていたのです。
編集部:今回、「ainenne(あいねんね)」が「Innovation Awards」を受賞した「スマートホーム部門」は、他にどのような製品があるのでしょうか。
服部:去年の例で言うと、「スリープテック」系の製品などがありました。CESの公式ホームページに「Innovation Awards」を受賞した製品一覧が掲載(編集部注:記事下部のリンク参照)されていますが、黒い製品が多いなかで白い「ainenne(あいねんね)」はなかなか目立っていると思います。
編集部:そこに載らなければ、そもそも出展していることすら認知してもらえないわけですね……。
服部:はい。おかげさまで、「Innovation Awards」を受賞して公式ホームページで発表されたことで、展示会の開催前にお問い合わせを何件かいただいています。既に海外でも記事として「ainenne(あいねんね)」が取り上げられているようです(記事下部のリンク参照)。
編集部:「Innovation Awards」を狙うにあたっては、なにか特別な提案をされたのでしょうか?
服部:過去にどのような製品が「Innovation Awards」を受賞しているのかは、提案する上で意識しました。また、応募カテゴリーも「ヘルス&ウェルネス」部門がいいか、「スマートホーム」部門がいいかを考えました。ただ、昨年のCES2020に「CryAnalyzer Auto」を出展したとき、複数の参加者の方々から「ちゃんとデザインすれば『Innovation Awards』がとれるから、自分にデザインをやらせてほしい」という話を頂いていたので、きちんと製品の魅力を伝えれば受賞できるだろう、というなんとなくの自信はありました。
「クラウドファンディング」と「小売店舗」という2通りの流通経路
編集部: 最後に、今後の「ainenne(あいねんね)」の展開について伺えますか?
服部:まずは国内で「クラウドファンティング」による発売を予定しています。これは2021年3月頃にスタートしたいという気持ちで進めています。
編集部:このクラウドファンディングの参加者が、「ainenne(あいねんね)」の最初の顧客になるわけですね。ちなみに価格はどれくらいを想定されていますか?
服部:前述の通り、まだ最終のコストを算出しているところですので、販売価格決定まで、もう少し時間がかかってしまいそうです。クラウドファンディング後に、実店舗での販売も視野に入れていますので、そのあたりの配慮も必要と考えています。
編集部:「アカチャンホンポ」や「西松屋」、「ベビザラス」といった育児用品店で「ainenne(あいねんね)」が発売され、店舗で実機を見て、購入できればすばらしいですね!
服部:そうですね。その他にもデパートや家電量販店、雑貨屋なども親和性があると思いますので、そういった方々からのお声がけをお待ちしております(笑)。
取材を終えて
以前の取材では「新CryAnalyzer Auto」という名称だった本製品は、記者が予想もしない外観と機能を搭載して、CESでお披露目されることになりました。最近は睡眠に関する研究が進み、「光を使った目覚まし時計」は今年の流行商品にもなっていますから、赤ちゃん時代以降も末長く使い続けられるのではないでしょうか? 2021年3月にスタートするクラウドファンディングで同製品を買える日が待ち遠しいです!
「ainenne(あいねんね)」公式サイト
https://ainenne.com/
「CES2021 Innovation Awards」検索ページ
(「ainenne(あいねんね)」が受賞した「Smart Home」部門は「Category」から選択可能)
https://www.ces.tech/Innovation-Awards/Honorees.aspx
「CES2021」公式サイトで紹介されている「ainenne(あいねんね)」
https://www.ces.tech/Innovation-Awards/Honorees/2021/Honorees/A/ainenne-Sleep-Trainer.aspx
スペインで掲載された「ainenne(あいねんね)」の記事https://gamamarron.blogspot.com/2020/12/ainenne-el-primer-entrenador-de-suenos.html