BTA2024受賞商品発表

失敗を恐れない子どもの心を育てる「ハクシノレシピ」

本サービスのポイント
  • レシピ通りに料理を教えるのではなく、子どものチャレンジ精神を育てる料理教室
  • 「料理」という「五感を刺激する経験」が、子どもたちの「脳」を鍛えてくれる
  • 「自宅でレッスン」「お迎えオプション」など、共働き家庭にとってありがたいサービス
最近は英語・体操・音楽・水泳といった昔ながらの習いごとのほかに、ユニークな「教室」が増えています。今回ご紹介する「レシピを使わない料理教室」という、「ハクシノレシピ」もその一つ。今回、BabyTech.jp編集部はそんな「ハクシノレシピ」を運営する株式会社Hacksii代表取締役の高橋未来さん(以下、敬称略)に取材を行い、サービスの概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)
株式会社Hacksii 代表取締役
高橋未来 さん

子どもたちの「自主性」と「自由な発想」を育む、ユニークな「料理教室」

編集部: さっそくですが、「ハクシノレシピ」の概要を伺えますか?

高橋: 「ハクシノレシピ」とは、「3歳から自宅で学べるレシピのない料理教室」です。これからの時代はテクノロジーがどんどん進歩し、知識を詰め込むだけの教育では太刀打ちできなくなります。ですから私たちは、子どもたちに自信を持って生きていくための「バイタリティー」を身につけてもらい、イキイキとした社会を作りたいと考えています。そこで大切になってくるのは、「好奇心を阻害しない」「個性を尊重する」「正解を教えない」「失敗を学びに変える」ということです。これが当社の「教育4原則」であり、「エプロン先生(料理教室「ハクシノレシピ」の講師)」がレッスンを行うときの行動指針となっています。

「ハクシノレシピ」のレッスンは、自宅の冷蔵庫で食材を選ぶところから始まります。そして子どもと一緒にどんな料理ができるかメニューを考え、最終的にできあがった料理に作品名をつけ、プレゼンテーションまで行います。このレッスンには、エプロン先生による「子どもの意見をたくさん引き出す語りかけ」「保護者には困難な根気強い関わり」「子どものアイデアをすべて受け止める」といった特徴があります。

たとえば、どうしても保護者の方はお忙しいので、子どもと一緒に料理をしていても、途中で「もう、ママがやるね!」とイライラしてしまうことがあるかもしれません。しかし、エプロン先生は、根気よく最後まで子どもに全部やらせてあげます。また、子どもたちは本当にオリジナリティがあり、「スープに生ハムを入れてみたい」というような、大人では考えつかないようなアイデアを言ってくれることがよくあります。これも保護者の場合、「それは違うでしょ!」と、つい失敗させないように口を出してしまいたくなりますが、エプロン先生は「いいね、やってみよう!」と、できる限り受け止めるようにしています。他にも「家庭の教育・マナー」の一環として、「エプロンの結び方」「配膳の仕方」などを伝えられる点も、当社のサービスの強みです。

たとえば通常の料理教室ですと、「今日は『イチョウ切り』を学びましょう」という風に教えると思いますが、当社のレッスンでは、「この食材はどういう風に切ろうか?」というところから、子どもたちと一緒に考えます。そして、その切り方も正解は教えず、一緒に考えながら切ってもらいます。そして、それが「イチョウ切り」であれば、「これは『イチョウ切り』っていうんだよ。イチョウの形に似てるよね!」と教えます。また、料理における「音」の表現も重視しているのですが、これは食材を調理するときの「ジュウジュウ」「ジュワジュワ」「パチパチ」「シャー」といった色々な音を言葉にできれば、子どもたちの「表現の幅」が飛躍的に広がるからです。

私たちはこのようなレッスン内容全体を「キッチン学」と名付けており、子どもたちの成長に合わせてオリジナルの指導要領も作成しています。ちなみに、「映画鑑賞」のような「受動的な活動」と比較して、「キッチン学」を受講している最中の子どもたちの脳の活動は2倍以上になっている、という計測結果も得られました。

編集部: 子どもたちが主役になり、自分の頭をたくさん使うことができるわけですね。

高橋: その通りです。現在のサービス内容は月1回〜4回の受講回数をお選びいただき、WEBから好きな日にちを予約していただきます。レッスン当日は、エプロン先生がご自宅に訪問してレッスンを行います。この中には「保育園などに子どもを迎えにいく」「エプロン先生の指名」「作った料理についてのプレゼンテーション動画の送付」といったオプションの利用も含まれています。保護者の方が保育園などにお迎えに行く場合、だいたい会社を16時頃に出なければならないかと思いますが、「エプロン先生」が子どもたちを保育園や学童施設に迎えにいくオプションを使っていただくと、料理のレッスンが終わる頃に帰宅すれば夕飯まで完成している……ということで、保護者の方に余裕が生まれる点なども喜ばれています。

編集部: 「エプロン先生」は何人くらいいらっしゃるのですか?

高橋: およそ15名弱です。現在、「エプロン先生」として活躍しているのは主に管理栄養士や食育の資格を持った方たちですが、研修プログラムがありますので、特に必要な資格は設けていません。私たちが重視しているのは資格ではなく、子どもと良い関係性を築くことができるコミュニケーション力などです。まず面接を行い、先輩の「エプロン先生」のレッスンに同行し、最終的に「実践テスト」に合格して初めて、レッスンを提供できる仕組みで、レッスンのクオリティを担保しています。

「脳の開発」を重視する幼児教育からアイデアが生まれた「料理教室」

編集部: 「ハクシノレシピ」を始められた経緯を伺えますか?

高橋: 株式会社Hacksiiの設立が2018年10月で、「ハクシノレシピ」をスタートさせたのは翌月の11月からです。2019年6月からは、「ハクシノレシピ」についてお伝えするオウンドメディア「ハクレピPLUS+」をリリースしました。

この事業を始める以前、私はある「子どもたちの脳を鍛えること」に重点を置く幼児教室で講師をしていました。そのときに、子どもたちが大きくなるにつれ、「正解を出さなければならない」「間違えちゃいけない」と、どんどん画一的になってしまうのを目の当たりにしたのです。それがとても残念で、この価値観を変えなければ日本に未来はないと思ったのが、「ハクシノレシピ」を始めるきっかけになりました。

これから世界はどんどん変わっていくなかで、子どもたちにどんな教育をしてあげれば良いのかわからない、と多くの保護者の方が感じられています。また、正解を与えてはいけない……そう思いつつ、つい手や口を出してしまうことに悩まれています。だから私たちは、料理体験を通じて、子どもたちが色々なことにチャレンジし、間違いや失敗を恐れずに自分の意見をイキイキと言えるようにしたいと考えています。

ここで、なぜ「料理」なのかと言いますと、理由は2つあります。1つ目は私が働いていた幼児教室で学んだ「子どもの脳の発達」に不可欠な要素が、料理を通じてすべて体験できることです。料理をしている最中は、「視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚」の5感をフルに使うので、頭に非常に良い刺激を与えられます。2つ目は、「正解しなければならない」という価値観を変えるためには、「失敗しても大丈夫」「失敗は学びに変えられる」といった体験をしなければなりません。その点、料理は「正解」や「失敗」というものがなく、アイデア次第で新しいものを生み出すことができます。この2つの軸から、これからの子どもたちに必要な能力を身につけてもらう上で、「料理」が最適だろうと考えたのです。

編集部: たしかに通常の幼児教室では、五感すべてを使うのは難しいですね。

 

まったく新しい「料理体験」がもたらす子どもたちの大きな変化

編集部: 「ハクシノレシピ」の利用者からは、どのような感想がありますか?

高橋: 「子どもを『自分で食っていける大人』にするために何をすればいいかわからなかったが、ハクシノレシピの料理レッスンで子どもの『地頭』や『チャレンジ精神』が鍛えられた」「子どものクリエイティブな思考が養われた」などの感想をいただいています。それから、とても「完璧主義」で「白紙にはお絵かきできない(上手に描けないかもしれないから)」というお子さんがおられたのですが、その子も半年ほどレッスンを受けた結果、「白紙に絵が描けるようになった!」と言っていました。また、どんどん「自信」が持てるようになったそうで、先ほどの「スープに生ハム」というメニューを考えたのも、実はこのお子さんです。最初は「『みそ汁』には、どんな具材が入っているの? その通りに作りたい」というような子だったのですが、今ではすっかり逆の発想ができるようになりました。

他にも「知人に紹介したいかどうか」という指標を用いた満足度調査では、一般的な習い事の満足度に比べて、数倍高い評価もいただきました。利用されているご家庭は圧倒的に「共働き」が多く、「学校の成績を上げること」よりも、「子どもの可能性を広げたい」というお考えのご家庭がほとんどです。また、「子どもたちが親には見せないような表情を『エプロン先生』には見せることが多く、私自身、親としての関わり方を学んでいます」と、言っていただくこともありました。

編集部: 素晴らしいですね。他に子どもたちが考えた面白いメニューはありますか?

高橋: 「ところてんのスープ」は面白かったですね。これは私たちもやってみて初めてわかったのですが、実は「ところてん」は温めると溶けて無くなってしまうのです。他にも当社のオウンドメディアである「ハクレピPLUS+」には、「エプロンキッズの発明レシピ」というタイトルで、子どもたちが考えたユニークなメニューを連載しています。ぜひ、ご覧ください。

「ハクシノレシピ」を全国に届けるために

編集部: 「ハクシノレシピ」の今後の展開について伺えますか?

高橋: 現在のサービス提供範囲は「東京近郊」のみですが、中・長期的にはプラットフォーム化し、全国でレッスンを提供できるようにしたいと考えています。また直近では、「エプロン先生」を学童施設や学校に派遣する「出張レッスン」の実施も開始しており、これによりグループレッスンも可能になります。

<取材を終えて>

レッスンにおける子どもたちの楽しそうな様子や、できあがった料理のユニークさに、自分の子どもが包丁を持てるようになったら体験させてあげたいなあ……と思いました。その一方、子どもにとってはとにかく楽しそうなレッスンの、その背後にあるカリキュラムや指導要領は、非常にきめ細かく考え抜かれており、まさに「幼児教育こそが世の中を変える」という同社の信念を感じさせました。子どもたちが自分の頭で考え、イキイキと発言できるようにサポートしてくれるハクシノレシピのレッスンが、ぜひ全国の多くの子どもたちに受けられるようなってほしいです。

ハクシノレシピ 公式ホームページ
https://hakushi-no-recipe.com/

ハクレピPLUS+ ホームページ
https://hakurepi-plus.com/