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スマホアプリと連携。スマートさく乳器「母乳アシスト 電動Pro Personal」シリーズ

「国産ベビーテック」をプレスリリースに冠したスマートさく乳器「母乳アシスト 電動Pro Personal(プロパーソナル)」「母乳アシスト 電動Pro Personal+(プロパーソナルプラス)」が2018年8月20日、ピジョン株式会社より発売されました。
BabyTech編集部は商品リリース直前の8月2日に、同商品を開発・発売されたピジョン株式会社を訪問。同社関係者の皆さまと、連携アプリ「Pigeon Switch(ピジョン スイッチ)」を開発したNTTレゾナント株式会社の皆さまに、本商品の特長や狙いについて伺いました。

プレスリリース:【国産ベビーテック】国内初!NTTレゾナント、さく乳器対応のIoTアプリを開発

(お話を伺ったのは)
ピジョン株式会社
マーケティンググループ 久保田啓司様
哺乳授乳研究開発グループ 田中雄市郎様

NTTレゾナント株式会社
法人営業部門 課長 木元長憲様
法人営業部門 主査 小見寺聡様

写真左から田中様、小見寺様、木元様、久保田様(以下、敬称略)

「さく乳器」ラインアップのリニューアルから生まれた「国産ベビーテック」

編集部:「国産ベビーテック」として新しく発売されるピジョン様のさく乳器が開発された経緯を教えていただけますか?

久保田:このたび当社では「さく乳器」シリーズ全体のリニューアルを行いました。リニューアルではお客さまからの要望を受けてさまざまな改良を行いましたが、ベビーテックのポイントとなった「さく乳器とスマートフォンアプリとの連携」もその改良のひとつです。

編集部:そもそも「さく乳器」とは、どのように使われるのでしょう?

久保田:たとえば母乳の出がゆっくりなタイプのお母さまがこまめに「さく乳」し、ある程度の量が貯まったら授乳するという使い方があります。またお子さんの母乳を飲む量が少ないために、おっぱいに母乳が残って胸が張って痛いお母さまが余った母乳を「さく乳」するという場合もあります。そのようなさまざまな使われ方に応えるため、当社では4種類の「さく乳器」をご用意しています。大きく分けると「手動タイプ」と「電動タイプ」です。

編集部:それぞれどのような特長がありますか?

久保田:手動タイプの商品は「母乳アシスト 手動」の1種類で、お母さまが手でハンドルを握ることで吸引し「さく乳」します。電動タイプは3種類で、電動ポンプにより吸引し「さく乳」が行われます。商品ラインアップは「さく乳」を行うさく乳口部分と電動ポンプが一体化した「母乳アシスト 電動Handy Fit(ハンディフィット)」、電動ポンプがさく乳口部分とチューブで接続されている「母乳アシスト 電動Pro Personal」と「母乳アシスト 電動Pro Personal+」となります。

編集部:この中で「ベビーテック」と呼ばれる商品は?

久保田:スマートフォンアプリ「Pigeon Switch」と連携する「母乳アシスト 電動Pro Personal」と「母乳アシスト 電動Pro Personal+」です。

電動Pro Personal

電動Pro Personal+

 

編集部:その二つの商品の違いは何でしょうか?

久保田:基本的な内容は同じですが、ご覧のとおり片胸用の「電動Pro Personal」の「さく乳口」は一つです。一方、両胸用の「電動Pro Personal+」には二つのさく乳口からボトル部分があり、両胸を同時に「さく乳」することができます。そのため単純にさく乳にかかる時間が半分になり、効率よくさく乳が出来ます。

 

「さく乳器」と連携するスマートフォンアプリ、「Pigeon Switch」とは?

編集部:さく乳器と連携するスマートフォンアプリ「Pigeon Switch」では、どんなことができるのでしょうか?

久保田:実際にアプリを使ってご説明しましょう。「さく乳器連携アプリ」として開発した「Pigeon Switch」は「電動Pro Personal」「電動Pro Personal+」とBluetoothで接続できます。起動すると下記のようなトップ画面が表示されます。

久保田:トップ画面は上から「お子様の成長を表示するエリア(画面の白い部分)」「ほ乳・授乳・さく乳の記録エリア(画面の薄いピンク部分)」「操作エリア(画面の濃いピンク部分)」の3つのエリアに分かれています。たとえば「操作エリア」の「さく乳」というアイコンを押すと下記のような画面が表示され、さく乳器本体をスマートフォンで操作できるようになります。

久保田:いわばスマートフォンが「さく乳器のリモコン」になるわけです。「さく乳」のモード(さく乳をするリズムや速度の設定や強さ)などが変更できます。さく乳器本体に搭載された「さく乳」ステップは「シンプルモード」「ナチュラルモード」「カスタムモード」の3種の吸引リズムがあります。「カスタムモード」はアプリの「Pigeon Switch」と連携させることで、カスタムモードに「快速シンプル」「リラックスシンプル」「スピードミックス」の3種の吸引リズムを追加できます。

編集部:アプリで「さく乳」する際の吸引リズムが追加されるのですね。そうすると、それぞれお母さま方の好みに合わせて選ぶことが可能でしょうか?

久保田:可能です。現時点で6つの吸引リズムを、それぞれ6段階に強さの調節ができますから、36通りのさく乳の吸引のバリエーションをご用意していることになります。また「さく乳」が終わりましたら、下記のような「記録」のページを使います。

久保田:ここでは自動的に使用した「吸引リズム」や「さく乳時間」が記録され、ほ乳瓶のアイコンをタッチして上下にスワイプすると「さく乳量」を記録できます。さらに「すぐ使う・保存する・不使用」といった使用目的や、「冷蔵保存か冷凍保存か」、「さく乳場所」、「さく乳時の体調」、「その他メモ」なども記録できます。

編集部:さく乳に関するデータがすべて、このアプリで管理できるのですね。

久保田:はい。記録したデータはアプリ内で履歴が一覧でき、冷蔵庫や冷凍庫に保存されている母乳の使用期限が過ぎれば通知(リマインダー)が自動的に表示されます。

田中:使用期限は冷蔵で24時間、冷凍で3ヶ月(推奨)に設定しています。

久保田:このほか「授乳」についても「授乳量」や「授乳時間」、「授乳内容(母乳か粉ミルクか混合か)」などを記録できます。一日に何度も行う「さく乳」や「授乳」のデータを紙などに書き残すのは大変ですが、スマートフォンを使えば簡単に記録できます。また、このアプリはデータを「日」「週」「月」単位で集計し、折れ線グラフにして表示することもできるので、母乳の出具合や授乳量の変化などをわかりやすく振り返ることができます。

編集部:そのような記録はどのように活用されるのでしょうか?

久保田:たとえば特にお子様が体調を崩されたときなど、医師はどれくらい母乳や粉ミルクを飲んでいるかを問診して症状を把握しますが、その際に正確な状態を答えることができます。また、子育てをしているお母様にとっては、どれだけ「さく乳」「授乳」してきたのかを数字やグラフで見ることにより、母乳育児をしていく上でモチベーションの向上やこれまでがんばってきたご自分への励みにつながるでしょう。その他のアプリの機能としては、お子様の身長・体重の記録や母乳・育児に関する当社の情報サイトへのリンク、撮影したお子様の写真をランダムに表示する機能、さく乳や授乳のタイミングをお知らせする通知(リマインダー)機能などもございます。

 

ヘルスケア系アプリの開発経験を活かした「Pigeon Switch」の開発

編集部:本商品の開発におけるNTTレゾナント様の役割を教えていただけますか?

木元:当社は数年前のヘルスケア機器がブームになった時期から、Bluetoothを使ってスマートフォンと計測機器を連携させるアプリの開発に取り組んで参りました。そこからご縁があって今回の商品開発に関わらせていただいた、というのが経緯です。また自社サービスであるポータルサイト「goo」を通じて一般の消費者向けのスマートフォン用ニュースアプリ、Q&Aサービスアプリなども多数リリースしてきましたので、そのあたりも認めていただいたと考えております。

編集部:「Pigeon Switch」の開発で大きな役割を果たされたということですね。とても見やすくて使いやすい画面だと思いました。

木元:お母さま方が見て違和感が無いように、企画の段階からアプリのUIについてはかなり議論させていただきました。

編集部:企画と言えば、最初のベビーテック商品として「さく乳器」を選ばれた理由はなんでしょうか?

久保田:「さく乳」は一日に何度も行うので、新しい技術を使用すればお母さま方の負担を減らせるのではないか、というのが企画の発端ですね。当社の商品に電動のものは少ないのですが、さく乳器はもともと商品ラインアップに電動のものがありましたから、そのこともさく乳器を選んだ理由のひとつです。また一般にスマートフォンやアプリを使うことが普及し、受け入れやすい土壌になっていたことも背景にあります。

編集部:本商品の発売において「ベビーテック」という表現を使われたきっかけをおしえていただけますか?

木元:ここ数ヶ月で急激に盛り上がってきた「ベビーテック」というキーワードが今回の商品コンセプトにぴったり合うことから、ニュースリリースの際にご提案させていただきました。アプリの開発がスタートした時期にはまだ「ベビーテック」という言葉はほとんど知られていませんでしたから、その頃からピジョン様はとても先進的な取り組みをされていると感じていました。

田中:スマートフォンとの連動が企画に盛り込まれたのは2年前くらいです。

小見寺:このタイミングで日本の育児用品メーカーとしてトップブランドであるピジョン様と私達NTTグループのテクノロジーを掛け合わせた「国産ベビーテック」、と表現することで、今回のピジョン様の商品を広く知ってもらえたらと思っています。

「Pigeon Switch」は育児に関するトータル・データベースとなり、新商品開発のヒントの宝庫になる可能性も

編集部:今後は「Pigeon Switch」というアプリをどのように展開していかれるのでしょうか?

久保田:まずは商品発売後の「お客様の声」をしっかりと受け止めたいと考えています。その上で不満な点を改善し、よい部分はさらに伸ばしていきたいです。

田中:アプリのメニューからピジョンホームページの「お問い合わせフォーム」に飛べますので、そちらからもお客様からの声や改善要望などをいただけると思います。

編集部:NTTレゾナント様はヘルスケア機器と連携するアプリ開発のご経験から、「Pigeon Switch」の今後の展開について何かお考えはありますか?

木元: 現在の「Pigeon Switch」は主に「さく乳」と「授乳」に関するデータを記録していますが、次第に他の領域にも広がっていくだろうと思います。「育児」におけるさまざまなシーンの記録をひとつのアプリの中で完結できる「母子手帳」のようなイメージですね。紙の母子手帳ではいろいろなデータを取りづらいので、育児用品と連携したアプリでスムーズに記録ができるような方向に進むのではないでしょうか。ピジョン様には「さく乳器」以外にもさまざまな育児用品がありますから。

久保田:海外他社ではすでに実現している「非接触型の体温計」、「チャイルドシート」などがありますね。

木元:当社が過去に開発したヘルスケア商品と連携するアプリも、単純に「歩数を記録する」だけのところから次第に「睡眠状態」「心拍・体温」などさまざまなデータを取り込み、最終的には「トータルヘルスケア・アプリ」という形になっていきました。ですから「Pigeon Switch」も育児に関わるトータルな情報を記録するアプリとして進化するのではないでしょうか。私達もそのためにより使いやすいようにUIや操作性をご提案していきたいと考えております。また、このアプリを通じてお客様からの多くの声が集まると、さまざまな発見があるでしょう。それは新たな育児用品の開発・改良につながると思います。

編集部:現時点で新たにスマートフォンと連動する商品を開発する計画はあるのでしょうか?

久保田:新しい技術でお客さまの育児がより快適になるのであれば、ぜひ積極的に取り組んでいきたいと思っています。

 

<取材を終えて>

さく乳器と連携する「Pigeon Switch」は今後さまざまな育児用品と連携し、「母子手帳・お薬手帳・予防接種手帳」などを統合した「トータル育児アプリ」となる可能性を秘めていると感じました。子どもの健康上のトラブルが起きた際には、それまでの状態に関するデータが欠かせません。いざというときに「母子手帳・お薬手帳・予防接種手帳」が見つからず、探しまわった経験をされた方は多いと思います。それが常に手元にあるスマートフォンで一元管理されていれば、そのメリットは計り知れないでしょう。「国産ベビーテック」として、ますますの発展を期待したい商品でした。

またモニターとして本商品(母乳アシスト 電動Pro PersonalとPigeon Switch)を2週間、実際に生後3ヶ月の子どもを育児中の記者の妻が使わせていただいたところ、次のような感想が出ました(以前から、ピジョン株式会社の手動式さく乳器を使っています)。

  • 電動のさく乳器の方が、手動のさく乳器よりも胸が痛くならない。
  • 電動さく乳器だと首を下に向けなくても「さく乳」ができるため、手動の「さく乳」よりも首がラク。
  • 電動さく乳器ならば「さく乳」中にPC操作くらいの作業ができる(手動での「さく乳」では手が離せない)。
  • 以前は「さく乳」のしすぎで腱鞘炎になったが、電動だと本当にラク。
  • さく乳中にリラックスできるので、心に余裕ができた。
  • 赤ちゃんは手動で「さく乳」した母乳でも、電動で「さく乳」した母乳でも、変わらず飲んでくれる。
  • 両胸同時に「さく乳」できた方が時間の短縮になるので良い。また「さく乳」は交互にさく乳する胸を交換して行うので、アプリに正確かつ簡単にさく乳量を記録するためにも両胸同時に「さく乳」ができる「電動Pro Personal+」の方が欲しい。
  • 自分のさく乳量がアプリで標準設定されている量よりもかなり少なかったので、スライド式だと記録しにくかった。

 

国産ベビーテック商品は今後も様々なメーカー様からどんどん登場してくると予想されます。楽しみですね!

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