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子どもたちの創造力を伸ばし、世界を広げる「窓」になる!?「popIn Aladdin」

本製品のポイント
  • 「popIn Aladdin」はシーリングライト、プロジェクター、スピーカーの1台3役をこなす
  • さまざまなオリジナルの「子ども用コンテンツ」を提供し、独自の価値を提供している
  • 家庭や保育園・幼稚園において、テレビやタブレットの枠を超えた活用方法が期待されている

2020年4月27日、初代モデルから大幅に性能アップした「popIn Aladdin 2」の販売が開始されました。同製品シリーズは2018年の発売当初から国内のガジェット好きの注目を集めていましたが、本来は「子どもを持つ家族」のために作られたものとのこと。実際、同社のホームページでは子どもを持つ家庭のさまざまなシーンで、「popIn Aladdin」が活躍するPVを見ることができます。そこで今回、babytech.jp編集部は「popIn Aladdin」を開発したpopIn株式会社 代表取締役の程涛さん(以下、敬称略)に取材を行い、同製品の概要や開発の経緯、今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)

popIn株式会社 代表取締役
程涛(テイ・トウ)さん

テレビや従来のプロジェクターの枠を超える「popIn Aladdin」のコンセプト

編集部:本日はお忙しいところ、ありがとうございます。さっそくですが、「popIn Aladdin」の概要と特徴について伺えますか?

程:「popIn Aladdin」は日本の家屋の天井に取り付けられている一般的な照明器具の「シーリングライト」に、「高性能プロジェクター」と「高音質スピーカー」を搭載した「3in1シーリングライト」です。特徴的なのは、私が大学院の修士時代に起業したpopIn株式会社はもともと「ソフトウェア開発メーカー」のため、初めてハードウェアを開発しましたが、「popIn Aladdin」に内蔵されているインテリアや子ども向けデジタルコンテンツのほとんどが、当社のオリジナルコンテンツであるということです。


「popIn Aladdin 2」の外観

編集部:「テレビ」や「YouTube」、「Netflix」を映写するだけの「プロジェクター」ではないわけですね。

程:その通りです。もちろんそれらの用途にも使えますが、家族の写真や美しい風景、絵本の読み聞かせなど、子ども向けコンテンツの提供に最も注力しています。「どうして植物の葉は緑色なの?」といった子どもの質問に答えるアプリ『なんでなの?』や、文字や数字を学べる「学習ポスター」を壁に映し出すこともできます。これは「popIn Aladdin」のメインターゲットを、「乳幼児期からのお子さんを持つご家庭」と発売当初は考えていたためです。


子どもたちの疑問に答えるコンテンツも

さらに「popIn Aladdin」のコンセプトは、「大画面のある暮らしを実現する」ということです。現在、多くの家庭にテレビがありますが、それでも60インチ以上のテレビがある家庭はほとんどありません。それは価格だけの問題ではなく、住環境的に大画面テレビを設置するスペースがないためでしょう。シーリングライトを兼ねて天井に設置できる「popIn Aladdin」ならば、この問題を解決できます。

さらに、私たちは「popIn Aladdin」を単なるプロジェクターではなく、「未来の壁」と考えています。たとえば、朝は雲の上を飛ぶ飛行機からの爽快な眺めを、昼間は温かい家族写真を、夜は心を癒すヒーリング映像と音楽を流すといった生活シーンに合わせたコンテンツを提供していくということです。これらが「popIn Aladdin」の特徴です。


壁の向こうは「雲の上」という体験も!

 

「プロジェクター」と「ソフトウェア」の融合から生まれる、独自の「世界観」

編集部:「popIn Aladdin」のテレビや通常のプロジェクターとは異なるメリットを、もう少し詳しく伺えますか?

程:ソフトウェアとハードウェアの双方におけるメリットがあります。まず、ソフトウェアにおけるメリットとしては、当社オリジナルコンテンツの存在です。どんな大画面テレビにも絶対に画面の端には「枠」があります。一方、プロジェクターの場合はその「枠」がなく、壁に溶け込むような映像表現ができるので、当社はその特徴を生かしたさまざまなオリジナルコンテンツを提供しています。そして、そのようなオリジナルコンテンツは通常のプロジェクターメーカーの製品には搭載されていません。これは「ソフトウェア開発メーカー」の当社だからできることだと思います。

また、ハードウェアの特徴としては、「Aladdin Remoless(アラジン リモレス)」があります。これは「照明のオン・オフ」「プロジェクターの操作」「コンテンツの検索」などを音声入力で実行できるデバイスで、未来のライフスタイルを実現するとともに、リモコンをうまく操作できない子どもたちでも音声入力なら簡単に「popIn Aladdin」を使うことができるのではないか、と考えて導入しました。実際、私の子どもたちは音声入力を使って、さまざまなコンテンツにアクセスしています。なお、当社はソフトウェア会社なので、ハードウェアの設計・製造は外部に委託しています。

編集部:御社がソフトウェア会社だからこそ、プロジェクターの特性を最大限に引き出した「オリジナルコンテンツ」、特に「子ども向けのコンテンツ」を提供できるということですね。

程:その通りです。実際、ハードウェア部分はすぐにマネができるでしょう。しかし、当社が「popIn Aladdin」とソフトウェアの組み合わせで作りだす「カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)」や「世界観」は、簡単にマネできないものだと考えています。当社はこれからも無限に広がるソフトウェアの可能性を追求し、いずれは「popIn Aladdin」を毎日使ってもらえる、生活に欠かせない「家電(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジなど)」のような存在にすることを目指しています。

 

開発者の家庭で繰り広げられた、「popIn Aladdin」誕生までの奮闘

編集部:「popIn Aladdin」が、想像以上にユニークな製品だということがよくわかりました。こちらを開発された経緯について伺えますか?

程:「popIn Aladdin」を開発したきっかけは、私の3人の子どもたちの存在でした。当時5歳・3歳・1歳だった彼らが自宅でタブレットやスマホに触れるとき、親の知らないところで望ましくないコンテンツに出くわしてしまうのではないか……という不安をいつも感じていたのです。そこで、どんなデバイスならば家で安全にデジタルコンテンツに触れ、子どもたちの世界を広げてあげられるだろうか、と考え始めました。最初にヒントになったのが、多くの家庭で壁に貼られている「文字や数字を覚えるための教材ポスター」です。それらは毎日の生活の中で自然に接触することで大切なことを学べますし、ときには家族の会話のきっかけにもなります。だからデジタルデバイスを使って、日替わりでいろいろなものを壁に映し出すようにすれば、子どもたちの世界を広げてあげられる、と考えました。

すぐに思いついたのが、「壁にコンテンツを投影できるプロジェクターを買ってくればいいじゃないか!」ということです。私はさっそく家庭用プロジェクターを買ってきて、試してみました。当時市販されていた家庭用製品のほぼ全部と言えるくらいの製品を家のあちこちに設置したのです。しかし、結果として妻に大変怒られました(笑)。「邪魔でしょうがない!」というのです。テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの「家電」にはそれ専用の場所があり、邪魔だと思う人はいないでしょう。しかし、プロジェクターは「家電」ではなく、趣味的な「ガジェット」という位置づけで、置き場所が決まっておらず、出しっぱなしだと邪魔に感じてしまうのです。かといって、毎日出し入れするのは面倒ですし、常にデジタルコンテンツを壁に映し出しておく、という目的も実現できません。

そこで、いったいどこにプロジェクターを設置すれば邪魔にならないだろう……と考えていたとき、ふと天井のシーリングライトを外してみたのです。するとそこには「ガチャッ」と回転させるだけで照明器具を取り付けられる、「引掛けシーリング」が設置されていました。これは日本の住宅設備における大発明だと思います(中国やヨーロッパ、アメリカにはこのような設備はありません。照明を取り付けるには専用の工事が必要です)。しかも調べてみると、この引掛けシーリングは5キロまでの重量に耐えられることがわかりました。そこで、まずは自宅で照明器具用のレールと組み合わせ、「ライト」と「プロジェクター」を吊り下げてみたのです。結果は大成功でした。プロジェクターをつけっぱなしにしても邪魔にならず、さらにプロジェクターならではの大画面で見るデジタルコンテンツの迫力に、私も妻も子ども達も非常に満足したのです。それから半年ほど試行錯誤して、「これは商品化できるのではないか?」と考えて生まれたのが、「popIn Aladdin」でした。


家族みんなで楽しめる「popIn Aladdin」

編集部:ありがとうございます。「popIn Aladdin」という名前の由来を伺えますか?

程:部屋に入ったとき、どこから画面が映し出され、どこから音が聞こえるのかわからない……そんな魔法のような体験を提供していきたいという想いを込め、「アラジンの魔法のランプ」にちなんで命名しました。

 

子どもを持つ家庭における「popIn Aladdin」の評判は……?

編集部:まさに「popIn Aladdin」は、子どもたちのために生まれた製品なのですね。

程:「popIn Aladdin」には「チャイルドモード」も設定されています。これは安心して利用できるコンテンツのみにアクセスを許可するモードです。そもそも「popIn Aladdin」は大画面なので、子どもたちがどんなコンテンツを見ているか親はすぐにチェックできますが、それでもこのチャイルドモードは非常に好評で、私たちの調査では購入された方の95%が使用しています。

編集部:購入されているのはどのような方たちでしょうか?

程:購入者のほぼ半数は30代です。これに20代と40代を合わせると、およそ94%となります。購入者の半数は既婚者で、さらにその半数の方にお子さんがいらっしゃいます。またバルミューダ、ダイソン、ルンバといったハイスペック家電をお持ちの方が多いため、年収が比較的高く、生活のクオリティを向上させたいニーズを持つご家庭が多いのではないかと推測しています。「popIn Aladdin」は2018年11月の発売から今までに8万台以上を販売し、家庭用プロジェクターとしては日本国内で50%程度のシェアを占めていると思われます。

編集部:乳幼児からのお子さんを持つご家庭で利用されている方たちからは、どんな感想が寄せられていますか?

程:大きく2つの声が寄せられています。ひとつ目が寝室に設置した「popIn Aladdin」のおかげで、夜になると子どもたちが速やかにベッドに入ってくれるようになった、という声です。「popIn Aladdin」はこの点に力を入れていて、「おやすみロジャー」という子どもの入眠時に読み聞かせる専用の絵本コンテンツがあります。さらに「popIn Aladdin」は壁に映し出された映像を見るため、目に入るのは反射光になります。つまり、テレビやスマホ、タブレットのように機器からの光が目に直接入りません。さらに「popIn Aladdin」は寝る前に見ることを想定し、通常のプロジェクターより明るさを低く調整しています。結果として、睡眠を妨げるブルーライトの量は非常に少なくなっています。


就寝時に配慮した光量を設定

ふたつ目の声は、お父さんやお母さんが家事をするときに子どもたちが「popIn Aladdin」を見てくれて、邪魔されないのがとても助かるというものです。他にも、家族旅行や公園に遊びに行ったときの写真を家族一緒に大画面で見たら、子どもがとても喜びました、という感想もありました。やはり写真を小さなスマホやタブレットで一人で見るのと大画面で家族一緒に見るのとでは、感じる迫力も生まれるコミュニケーションもずいぶん違うのだと思います。


家族の思い出の写真を大画面で

 

これからも「子どもの創造性を刺激するコンテンツ」の開発に注力

編集部:「popIn Aladdin」が保育園などで利用された実績はありますか?

程:現在、東京大学大学院教育学研究科附属「発達保育実践政策学センター(Cedep)」との共同研究を進めています。テーマは「デジタルメディアを活用した保育・幼児教育の可能性」というもので、都内の幼稚園と保育園において実験をしています。幼稚園や保育園でのICTの導入はまだまだ進んでおらず、今でもタブレットを子どもたちに持たせても良いのかどうか、という議論が行われていたりします。その点、「popIn Aladdin」であれば大画面で映像が映し出されるため、安心かつ保育の場にとても役立つというコメントをいただいており、これからどんなふうに活用できるのか、いろいろと試しているところです。たとえば七夕の時期に「popIn Aladdin」を使って壁一面に「天の川(銀河)」を投影したり、子どもたちの日々の様子を撮影して写真を映し出したり、顕微鏡で何かを観察するときに、「popIn Aladdin」で大画面にして壁に表示するといった使い方もされています。このように今までの保育園や幼稚園では出来なかったことに取り組むことで、子どもたちが非常に喜んでくれたり、それまであまり喋らなかった子どもとのコミュニケーションのきっかけになった……というお話がありました。これらの研究成果は、論文として「日本子ども学会 第15回子ども学会議」で発表され、優秀発表賞を頂いています。デジタルメディアは子どもに悪いものではなく、どのように最適化していくかが、私たちの課題だと考えています。

編集部:子どもに最適化したICT技術が求められているのですね。

程:「popIn Aladdin」で提供する「コンテンツ」にしても「使い方」にしても、さまざまな可能性がありそうです。共同研究の当初は「学習コンテンツ」の提供を目的にしていたこともあったのですが、現在はデジタルメディアを使って、子どもたちの「クリエイティビティ(創造力)」を刺激・育成していくことが最大の目的だと考えています。そのために、たとえば「等身大で表示される動物図鑑」を製作したのですが、これは本やテレビではなかなか実現できないコンテンツであり、子どもたちの反応が全然違いました。動物の真似をして動物になりきる遊びにも広がるなど、まさに創造性を引き出しています。さらにそこで終わりではなく、そのような体験を通じて、「今週末は本物のゾウを見にいこう!」といった行動を起こすきっかけになっています。私たちはデジタルメディアというものを、そのなかに子どもを閉じ込めるものではなく、どんどん外の世界に飛び出していく後押しをするものにしたいと考えています。


等身大の動物たちを映し出すこともできる

編集部:最後に、今後の「popIn Aladdin」の展開として考えておられることはどのようなことでしょうか?

程:やはり「大画面のある暮らしを世の中に普及させる」ということに尽きると思います。そのために「popIn Aladdin SE」という低価格モデルも開発しました。他にも先ほど例にあげた「等身大の動物図鑑」だけでなく、「等身大の衣服カタログ」「等身大の昆虫図鑑」さらには「実在する場所を再現した写真集」なども面白いでしょう。そのような大画面だからこそ可能になる新たなコンテンツの提供を、これからも追求していきたいと考えています。

 

取材を終えて

ときどきホームページを見ていると、「popIn Aladdin」の動画を見かけることがあり、以前から気になっていました。しかし、きっと「独身貴族」か「子どものいない夫婦」向けの高価なガジェットだよなあ……と、子どものいる家庭には縁のないものだと考えていたのです。しかし、今回の取材を通じて、むしろ子どものいる家庭こそ導入した方が良いのでは?と思うようになりました。テレビやタブレット、スマホばかりを見せるのはやはり心配ですし、「popIn Aladdin」のように子どものことを考えて作られたデジタルデバイスの方が安心です。クリスマスを迎えるこの機会に、ぜひ購入を検討されてみてはいかがでしょうか?

「popIn Aladdin」公式ホームページ
https://aladdin.popin.cc/