BTA2024受賞商品発表

独自の「生体信号感知技術」お昼寝見守りロボット「スマイルベイビー」

本製品のポイント
  • 同社が長年取り組んできた、「介護における見守りシステム」の知見を活用
  • 「非接触・コードレス」など、保育現場での使い勝手に徹底したこだわり
  • 製品作りの根底にある、「子供たちの命を守りたい」という想い
日本国内で発売されているベビーテック製品は、海外に比べてそれほど出揃っていない状況ですが、ここ最近は爆発的な人気を呼んでいる商品が登場しています。その一つが、株式会社バイオシルバーのお昼寝見守りロボット「スマイルベイビー」。同製品は高性能センサーでお昼寝中の子供たちの呼吸や心拍などをモニタリングし、自動的にデータを記録。異常を感知すれば、ただちにアラート(警報)で知らせてくれます。2017年の年末に発売したところ、2ヶ月弱で予定台数を完売したという同製品について、BabyTech編集部は株式会社バイオシルバーを訪問し、製品概要や今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)
株式会社バイオシルバー
代表取締役  原田敬三様
営業部主任  黒川普子様
営業部    今井茉希様


写真左から原田様、黒川様、今井様(以下、敬称略)

「子供の安全」と「現場での使い勝手」に徹底してこだわった製品

編集部:本日は大変お忙しいところ、誠にありがとうございます。さっそくですが、「スマイルベイビー」の製品概要について伺えますでしょうか?

今井:まず、こちらが「スマイルベイビー」の「マットとセンサーユニット」になります。そして、こちらが専用の「データ管理サーバー」です。このサーバーをテレビなどのディスプレイに接続することで、画面にデータが表示されます。「マットとセンサーユニット」で検知したデータは、リアルタイムに無線でサーバーに飛んでいます。

編集部:マットとセンサーは電源コードもなく、完全にコードレス化されているのですね。

原田:その通りです。この製品の開発に関わった黒川は元・保育士なのですが、現場を良く知る人間として、「完全なコードレス化」には徹底してこだわりました。またマットについては、お漏らしなどで汚れた時に拭き取れるよう、素材も吟味しています。

黒川:お昼寝している子供たちの足元にコード類があると、指に巻きついて血流が止まったり、足を引っかけて転倒するなど、非常に危険です。本製品の試作機には電源コードがあったので、その点を指摘しました。

今井:その結果、電源はセンサーユニットのケースカバーに、バッテリーを内蔵する方式に改良されました。続いて使用方法ですが、子供たちが眠るマットレスやベビー布団の下に、マットとセンサーを設置します。最大で厚さ25センチまでのマットレスに対応しています。

 

編集部:こんな分厚いマットレス越しでも非常にクリアに、しかもリアルタイムに呼吸や心拍が表示されるのですね!

今井:はい。こちらのマット部に表示された測定エリアの上に子供の体があれば、データを記録することができます。

原田:実はこのマットの大きさ(=測定エリアの大きさ)にも、保育の現場を知る黒川の経験が生かされています。

黒川:お昼寝をしている子供は寝返りを打つなど、かなり身体を動かします。ですからデータを検知するマット部分を、かなり大きくしてもらいました。このマット部分が小さいと、子供たちがすぐにセンサーの検知範囲から出てしまいます。そうするとアラート(警報)が鳴り、保育士の皆さんがいちいち確認しなければなりません。保育の現場に負担がかからないよう、マットの大きさにこだわりました。

今井:さて、平常時は呼吸と心拍、体動(=安静状態か身体を微妙に動かしている状態か)がグラフとして表示されます。他にもベッドの上に子供がいるかいないか、ということもわかります。また子供の呼吸や心拍が止まるなどの異常を検知した場合は、すぐにこちらの画面上の表示と音声でアラート(警報)が出ます。また各種データの履歴は、表やグラフとして印刷することも可能です。

原田:この装置がマット・センサー部と、データサーバー(+ディスプレイ)部に分かれているのも、保育現場の負担を減らすためです。実は類似商品の中には子供たちのすぐそば、マット・センサー部でアラートがなってしまうものがあります。そうすると異常を知らせるたびに周囲の子供たちが起きてしまい、保育士の皆さんが大変苦労します。一方、スマイルベイビーは保育士さんたちの手元や事務室などでアラートが出るので、他の子供たちを起こすことなく、適切に対応することができます。もちろん音量は調整が可能です。

 

お昼寝の見守りをサポートする機器として、同社が大切にしていること

編集部:この製品の仕組みについて教えていただけますか?

今井:マット部分の内部はウレタンと空気のチューブからできており、非常に柔らかい構造になっています。電気配線やセンサー類などは入っていませんが、この部分で呼吸や心拍、体動などの微細な振動を検知しています。たとえるなら、いわばマット部分が大きな聴診器のようになっているイメージです。

編集部:データはスマートフォンやタブレットで見ることも可能なのでしょうか?

今井:もちろん可能ですが、基本的には本製品のデータサーバーとディスプレイの使用を推奨しています。スマートフォンやタブレットの場合、OSのバージョンアップなどにより、どうしても不具合が生じる可能性が否めません。その点、データサーバーとお手持ちのテレビやパソコン等のディスプレイをケーブルで接続する方式であれば、確実に動作するので安心だと思います。サーバーには操作用のマウスが付いており、いわばパソコンの本体のような役割を果たしています。

編集部:この製品を開発するにあたって、こだわられた点はどの辺りでしょうか?

黒川:まず、「非接触方式」ということです。センサーを体に取り付けるタイプの見守り装置では身体にかぶれが出た、子供が気にして触ってしまう、という保育園さんもありましたから。

原田:もう一つはタイムラグがなく、リアルタイムにグラフでデータを表示する、という点です。私たちが突き詰めたのは保育園が何を一番、気にされているかということです。結局、一番恐ろしいのは「子供の呼吸が止まること」です。スマイルベイビーは医療機器ではないので厳密な数値を測定したり、センサーを体に取り付けるタイプの見守り装置のように子供の体の向きは記録できません。しかし子供たちの命を守るために一番大切なのは、「子供たちがしっかりと呼吸できているかどうか」を見守ることです。そのような考え方から、私たちは徹底して、子供の呼吸や心拍、体動をリアルタイムかつクリアにモニタリングすることにこだわりました。

黒川:基本的にスマイルベイビーは人(=保育士さん)に取って代わるものではなく、「同じ立ち位置でお昼寝を見守る」というスタンスの機械です。ですから当社では保育士さんが5分おきにお昼寝の見守りをすることを大前提として、その5分の間のすき間について保育士さんをサポートする装置だと考えています。

編集部:業務の負担を減らすことが目的ではなく、あくまで事故を減らし、子供たちの安全性を高めることが目的なのですね。

原田:まさにその通りです。それが何よりも保育園の安心につながり、保育士さんを助けることになります。また、この装置が自分たちの背後で見守ってくれているということは、保育園の職員の方たちの精神的ストレスの軽減にもつながります。

 

同社の背景にある、「子供の命を守りたい」という想いが生まれた理由

編集部:本製品の開発の経緯を教えていただけますか?

原田:実は本製品の開発者のご友人が、0歳のお子さんをSIDS(乳幼児突然死症候群)で亡くされ、「このような悲劇が無い世の中にできないだろうか」という相談を持ちかけてこられたことが、本製品の開発のきっかけでした。

編集部:そのような開発者の方の想いがあったのですね・・・

原田:10年ほどの開発期間が過ぎたとき、介護業界が深刻な人手不足となっており、このような見守り装置のニーズが高まっていたので、まず介護の分野で同様の製品を開発・販売しました。そして満を持した形で、2017年の年末から「スマイルベイビー」を発売したというのが経緯になります。結果として、介護分野で当社のこの技術・製品については数千台以上の実績が生まれました。それが「スマイルベイビー」の導入を検討している保育園の方々の安心感につながっていると思います。

 

保育園からの感謝の声、そして今後の同社の展望

編集部:こちらの製品は現在、保育園のみで使われているとのことですが、どれくらいの数が出ているのでしょう?

原田:2017年の年末から発売を開始して、2ヶ月弱で完売しました。50園におよそ300台が納入されています。また2018年の秋〜冬にかけて、バージョンアップした製品の販売を再開する予定です。

編集部:導入費用について伺えますか?

原田:昨年の実績ですが、東京都向けのパッケージとして6台セットを税込100万円で販売しました。これに東京都から保育園一つあたり100万円の補助が付いたので、保育園は持ち出し無しで導入できています。

編集部:使用している保育園の感想で、なにか特別なものはありますか?

黒川:この製品を使うことで子供の微妙な体調不良に気がつくことができた、という声がありました。目視ではわからないような体調不良を、体動グラフの変化で見つけることができたそうです。

編集部:それを保護者にお伝えすれば、早めに病院にかかることもできますね。

黒川:そうですね。目視でわかる状態になったときには、重症化していることもありますから。

編集部:今後の本製品や、御社の取り組みについて伺えますか?

原田:将来的には、スマイルベイビーを一般家庭向けにも発売したいと考えています。これは確実に取り組む予定です。それから、このスマイルベイビーに使われているセンサー技術を使った「睡眠モニタリング装置」を来春頃に発売する予定です。これは「眠りの深さ」を測定する装置で、たとえば介護の現場では「眠りの浅くなったタイミングで起きてもらい、食事の時間にする」「今は眠りが深いタイミングなので、オムツ交換は後にする」といった利用方法が考えられます。また薬剤やベッドを変えたときに睡眠の質がどう変わったかがわかるので、その効果を把握することもできるでしょう。スポーツ選手や高級ホテルなどでも、睡眠状態とパフォーマンスの関係を測定するニーズがあると思います。目標としては2020年のオリンピックで、選手村宿舎などに導入したいですね。

 

<取材を終えて>

子供をその上に寝かせるだけで見守りをしてくれる同製品。わかりやすい使用方法や、また何歳の子供でも確実に対応できる汎用性から、非常に保育の現場として受け入れやすい機器だと感じました。一般家庭での発売も待ち遠しく、ますますの発展を期待したい商品です。

 

国産ベビーテック商品は今後も様々なメーカー様からどんどん登場してくると予想されます。楽しみですね!

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